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ジャッキング・フォース  作者: まるマル太
第3章 迫り来る地球外生命体”ブルート”
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18/53

#第15話 忍び寄る悪夢

#第15話 「忍び寄る悪夢」





木々が生い茂る草原で、今、

2人のフォーサーが戦闘体勢に入った。


一方は、俺たち第11小隊の元隊長であった

西園寺(さいおんじ) 藍木(あいき)こと

“透過”能力を持つ『ジェネシス』。


もう一方は、東京パーマネント・ガーディアンスの作戦指揮官、

上戸鎖(かみとくさり) 祐樹(ゆうき)こと

実力未知数な『トランセンデンタル・オーガナイザー』。




「西園寺(さいおんじ)さん、あなたの研究成果とやらを

 この目で見せてもらいましょう。」

オーガナイザーはそう言い終わるが早く、

その場から瞬時に姿を消した。


「噂には聞いていたが・・・」

ジェネシスは呟くと周囲を見渡し、防御の体勢に移る。

だが、次の瞬間、

ジェネシスの腹部を背中側から突き破る様に

一本の腕が貫通したのだった。




そのあまりのスピードに、

この俺、萩間(はぎま) 拓(たく)と

チャラい新人、中久喜(なかくき) 麗央(れお)は

思わず3歩ほど後退して観戦を続ける。




「通常のフォーサーであればこれで十分仕留められますが、

 さすがは凝った技術をお持ちのようですね?」

オーガナイザーは腕を引き抜くと

短い跳躍を繰り返しながら20mほどの距離を取る。


・・・オーガナイザーの右腕が貫通したはずのジェネシスは、

3秒足らずしてその傷跡を跡形もなく塞いだ。

塞いだ、と言うよりかは

皮膚が勝手に構築され、再生したと表現した方が適する。




「上戸鎖(かみとくさり)作戦指揮官、

 貴様が上位フォーサーである事は知っている。

 だが、攻撃を加えられないのであれば、

 この私を殺す事は絶対に不可能だ。」

ジェネシスは伸ばした爪を開閉させ、

乾いた笑いを漏らした。


「・・・なるほど。

 しかし、私の観察力があれば攻略法は見えない事もありません。」

そう言うと、オーガナイザーは

右手をまっすぐ前に突き出す。

すると彼の背後には

まるで”面”を構成するかの如く、

100本は越えるであろう多量のブレードが生成された。

そのブレードらは宙で静止しながら、

刃先を一律に目の前の獲物へと向けている。


「お得意のプロパンブレード射出攻撃か。

 数撃ちゃ当たるのは雑魚ブルートの討伐だけだ。」

ジェネシスは特に回避を試みる様子はなく、

その場に素立ちしている。


「果たして、そうでしょうか?」

次の瞬間、漆黒のブレードらは

一斉にジェネシスに向けて放たれる。


ジェネシスの身体を射貫いたかと思われたブレードも、

彼をすり抜け、背後の木々に次々と突き刺さっていく。


・・・だが、そこから5秒ほどでジェネシスの様子が変化したのだった。




「何・・・!?」

既に50本以上のブレードを透過により防いでいたはずの彼は、

新たに命中した1本のブレードを透過できていなかった。

すなわち、オーガナイザーのブレードが

腹部へともろに刺さったのである。


「やはり、そういう事ですか。」

オーガナイザーは手加減せず、

残りのブレードも次々と射出していく。

余裕綽綽(よゆうしゃくしゃく)であったはずのジェネシスは、

両手の爪で迫り来るブレードを弾き始めた。


「・・・一体、私に何をしたあッ!!」

ジェネシスが叫ぶ。


「あなたは自身を構成する細胞の移動によって

 物理的な攻撃を透過し続けていました。

 しかし、移動は”移動”でしかありません。」

「・・・どういう事だ?」

「あなたの体細胞が攻撃を受ける直前に

 移動する位置には、ある規則性があります。

 50本も撃ち込めばその規則はある程度把握が可能。

 そうなれば、後は”移動後の細胞”を撃ち抜くだけです。

 しかも、それはおそらく身体の防衛本能であり、

 あなた自身では操作する事ができません。」




オーガナイザーこと上戸鎖(かみとくさり)の説明が終わると同時に、

ジェネシスは射出されたブレードを弾き切った。




「貴様・・・一体どんな観察力をしている?

 攻撃を避けた細胞がどこに移動しているかなんて

 20mも離れた位置から見える訳がないだろう?」

「残念ですが、それが私のフォーサーとしての能力です。

 私の体内には5体分のフォーサーから摘出した

 HR細胞が取り込まれています。

 五感から得られる情報量が通常のフォーサーとは桁違い、

 とでも説明すれば分かりやすいでしょうか?」

「・・・この・・・化け物がッッッ!!」

ジェネシスは完全に取り乱し、叫びたてる。




・・・無理もない。

自分の秘密兵器を開始3分ほどであっさりと攻略されたのだ。

しかも、オーガナイザーは

未だに挨拶代わりの技しか発動させておらず、

話す様子からも、余力は有り余っているように見える。




「私くらいの実力が無ければ、

 約5年前に巨大テロ組織に喧嘩を売った時点で

 とっくに死んでいますよ。

 ・・・ジェネレイト!!」

オーガナイザーの頭上に、

計10機のビームランチャーのような武器が生成された。




「私が生成する武器の中で最高の威力を誇る

 デカンファイナルキャノンです。

 あなたの身体の表面積を越える攻撃も

 “透過”の攻略には有効でしょう。

 その能力は・・・穴だらけなんですよ!」

「私は・・・私は間違っていたのか・・・?」

ジェネシスは完全に戦意を喪失し、

その場に膝から崩れ落ちる。


「私は・・・皆が早くこの恐怖から解放されるようにと、

 正義感で突き進んできた。

 それでも・・・私は自身の誤りを突き付けられるのか?」

「正義・・・ですか。」

オーガナイザーは腕組みをして感慨深そうに呟いた。


「”正義”は人それぞれに存在するものです。

 何が正しくて、何が間違っているのか・・・。

 それを客観的に決定する事など無意味なのですよ。」




・・・オーガナイザーの喋り方は、どこか

経験者なりの風格のようなものがある。

少なくとも、傍観している俺にすら

そう聞こえた。




「私にはあなたを支配できるだけの能力がある。

 ただ、その事実があるのみです。

 さぁ・・・西園寺(さいおんじ)さん、今からでも遅くないですよ?

 私の権限で、東京パーマネント・ガーディアンスの

 開発部門に無条件で招待しましょう。」

「・・・断る。」

ジェネシスは立て膝の状態できっぱりとそう言い放った。


「私には、研究者なりのプライドというものがある。

 貴様ら司令部の犬になるというのならば、

 この場でいっそ命を絶たれた方がマシだ!」

「そうですか・・・。」

オーガナイザーはそう言うと組んでいた腕を解き、

右手を開きまっすぐにジェネシスへと向ける。


おそらく、宙に生成したデカンファイナルキャノンを

一斉発射する構えであったはずだが、

彼はその手を瞬時に下ろし、

次の瞬間には、俺と中久喜(なかくき)が観戦している

木々の間にまで高速で後退してきたのだった。


宙に用意されていた武器は

一斉に効力を失ったように落下し、地へと転がった。




「おぉ!!ビックリしたあッ!」

マンティスのアーマーを纏う

中久喜(なかくき)が慌てて近くの木にしがみ付く。


「・・・作戦指揮官、どうした?」

俺は背後から尋ねたが、

オーガナイザーこと上戸鎖(かみとくさり)作戦指揮官は

ジェネシスの方を見据えたまま微動だにしない。


「あなたたちは逃げた方が良いですよ?」

突然の忠告に、俺も中久喜(なかくき)も言葉に詰まる。


「えっ、てか、もうジェネシスは瀕死直前ってとこだろ!

 なんで俺らが逃げる必要があるんだ??」

中久喜(なかくき)は相変わらずのチャラい様子で問う。


「今現在の脅威はジェネシスではありません。

 あなたがたも感じませんか?地面の揺れを。」

・・・地面の揺れ?

言われても、何も感じられない。


オーガナイザーは五感が敏感だと言っていた。

だから俺たちよりもそういった刺激を感じ取るのが早いのだろう。




「これはおそらく・・・」

オーガナイザーが呟いたその瞬間だった。


突然、前方にて

オーロラが瞬くかの如く

無限の金色の光がうねり出したかと思うと、

膝立状態のジェネシスの頭上で

だんだんとその光の束が結束していき、

巨大な物質を構成した。


その時、完全に逃げ遅れたジェネシスは

黄金の光を放つ塊に押し潰され、

地面との境界に姿を消した。

・・・その瞬間、肉が潰れるような醜い音が聞こえ、

赤い鮮血が周囲に弾けた。




その塊というのは

高さは軽く30mを越えるであろうサイズで、

大型のパイプオルガンを連想させる形状。

正面の中央部には黄金の聖母像のような

安らかに目を閉じた女性の上半身が

前方に向かって伸びたデザインとなっている。




「な、何だああああッ!?」

中久喜(なかくき)が悲鳴を上げる。


「この構築物質を何も感じ取れない独特な感覚・・・。

 まさに”ブルート”ですよ。」

オーガナイザーは俺たちに背を向けたまま、

落ち着いた口調でそう説明した。

だが、さっきまでよりも

明らかに早口になっている。


「そう言えば、京都・大阪パーマネント・ガーディアンスから

 警告が来ていたな?

 何やら、大型の”Sランク”ブルートが出現したと・・・。」

「なるほど、萩間(はぎま)さん。

 確かに、その報告のあったブルートと特徴が一致しています。

 となると目の前にいるのは・・・」

オーガナイザーはそう言いながら右腕を振るうと、

先ほど不発に終わったデカンファイナルキャノンを

20機に倍増して自身の周囲に生成した。




「Sランクブルート、

 ”スペクタキュラー・ヴァルゴ”に違いないでしょう。」




・・・初めて目撃したSランクブルートは

その威圧感だけでも圧倒的だった。


俺らはまだパイプオルガンの正面しか目の当たりにしていない訳だが、

それでも、もう壁の中に帰れないような、

そんな絶望を与えてくる。




「デカンファイナルキャノン、発射!!」

オーガナイザーは右手を前に突き出し、

トリガーを引くかのように人差し指をクイッと曲げる。


《ケミカル・・・ブレイク・・・アップ!》

宙に浮いている20機のキャノンから、

まるでボイスチェンジで聞き取りにくくしたような

男声の電子ガイダンス音が一斉に鳴り響き、

同時に漆黒の大型銃のボディに黄緑色のラインが点灯し始める。

そして次の瞬間、キャノンの銃口が光ったかと思うと、

瞬時にして周囲は眩い光に包まれた。










#第15話 「忍び寄る悪夢」 完結




ご覧いただきありがとうございます。


上戸鎖(かみとくさり)こと

トランセンデンタル・オーガナイザーが生成する武器は、

前作の「強化前形態」で使用していた武器です。

"デカンファイナルキャノン"は

通常のフォーサー程度であれば一撃で消滅させる威力を誇ります。



そして、主人公の萩間(はぎま)が初めて遭遇した

Sランクブルートは乙女座モチーフの大型種です。

通常ブルートはワイズブルートとは違い"地球外生命体"なので、

コミュニケーションが取れず、より人類の脅威となります。




今回の戦いで何人の犠牲者が出るのか?

果たしてSランクのヴァルゴを討伐できるのか?


次回をお楽しみに!

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