#第13話 明かされる1つの謎
#第13話 「明かされる1つの謎」
―――――萩間たちが
新たなワイズブルートとの戦闘を繰り広げていた頃―――――
東京パーマネント・ガーディアンスの司令本部棟・司令官室では、
司令官の明電 峰隆と
ワイズブルートであるドンナー・ケツァルコアトルスによる
戦いが展開されていた。
「はあッ!!」
明電は、黄色いラインが
サイドに入った黒いロングコートを纏っているが、
彼の動きに鈍さは感じられない。
刃渡り2mほどの
白いブレードを自在に振り回し、斬撃を繰り返す。
それに対し、ケツァルコアトルスはそれを擦れ擦れで回避し、
一撃もまともに受けていない。
しかし、獲物を逃した切っ先は、
壁や机などを刻む事無く、非常に丁寧にコントロールされている。
「明電 峰隆よ。
生身で戦う人間は初めて見たが、
なかなか攻めに隙がないな。」
「フン、見た目は生身だが、私の体内には
私自身が研究を重ねたテクノロジーが詰め込まれている。
悪いが、お前に負ける気はない。」
「面白い!」
そう言うと、ケツァルコアトルスは室内で宙に舞い、
加速しながら明電へと一直線に接近する。
「面白いのは結構だが・・・」
明電はあろう事かその場で棒立ちの状態になり、
まっすぐに翼竜を見据えている。
翼竜はあっさりと標的の獲物を捕らえた・・・かと思いきや、
ある程度まで接近した地点で突如、弾き飛ばされた。
「命の心配は大丈夫か?」
「くッ・・・どんな技を・・・?」
何もないはずの空中で、
翼竜は身体中が痺れたような様子で弾かれたのだった。
「私は、自身の周囲50cm領域に
秒速100m以上で近付く物体にのみ働く電磁バリアを張っている。
これはデフォルト設定であり、
バリア発動条件を操作する事も可能だ。」
「なるほどな・・・通りで、生身で戦闘に臨める訳だ。
そうなると、もしやその身体は機械仕掛けか?」
明電は答えず、
ケツァルコアトルスへずんずんと歩み寄っていく。
彼は思わず後退し続け、遂には背中を壁に触れた。
「さて、この切れ味抜群な”高周波ブレード”の餌食となれ。
もう脱走を図れない体にしてやろう。」
明電は更に距離を縮めるが、
思いの外ケツァルコアトルスが逃げ出すような様子はない。
「・・・さて、この辺で良いか。」
翼竜は迫り来る明電にも聞こえるようにそう呟いた。
「何の事だ?すっ呆けても無駄だぞ?」
「情報を吐く、と言ったのだ。」
ケツァルコアトルスの発言に、思わず明電は進行を止める。
「先に言っておく。
ワタシは”レインボーウイング”という特異武器を所持している。
これにより、周囲10m以内の任意の対象を
自身と共に座標移動させる事が可能。」
「なるほど、その技で脱走したと。
・・・尚且つ、壁を壊さずに壁の中に侵入できたのはその為か。」
「ここでワタシを殺そうとすれば
自身の座標を転移し、この場から消えよう。」
「・・・現状で吐かせた証言に価値があるとは思えないが、
良いだろう。乗ってやる。」
明電はそう言うと、翼竜に背中を見せてデスクへと歩み寄る。
そしてそのままブレードを壁に立てかけ、
自身のデスクへと着席した。
どうやら、明電にも何かしらの策はあるようだ。
「感謝する。」
そう言うと、ケツァルコアトルスは
デスクから5mほどの地点まで近付き、
その場で軽く頭を下げた。
「さて、では最初に
貴様がなぜ人間の言葉を話すのか教えてもらおう。」
明電は余裕を持った表情で質問を繰り出した。
「単刀直入に言おう。
それは貴様らがワイズブルートと名付けたワタシのような存在が、
元は”人間”であったからだ。」
「何・・・!?」
明電は思わずデスクから立ち上がり、
勢いで両手をデスクに叩き付けた。
「どこまで鵜呑みにするのかは貴様ら次第だが、
知性の低い通常のブルートと、我々ワイズブルートは敵対関係にある。
最も、通常のブルートは地球外生命体であり、
ワタシたちは人間と同種だ。」
「という事は・・・貴様らは何かの計画で創られた、と?
首謀者は一体何者だ?」
「明電 峰隆よ。
この現状は・・・その創造主の望んだ状況に限りなく近いのだ。
そしてワタシ自身は、現状をあまり好ましく思わない。」
「つまりは、他のワイズブルートたち、及びその首謀者を
貴様は裏切る事を厭わないのか?」
明電の問いに対し、
ケツァルコアトルスはやや俯く様に顔を落とした。
「・・・ワタシが首謀者を裏切る理由は3つある。
1つ目は、先ほど述べた通りに
首謀者の計画に賛同し切れない部分があるという事。
2つ目は、ワタシの計算では
現在の東京パーマネント・ガーディアンスの人員のみで
十分に首謀者たちの勢力に対抗できるという事。
3つ目は、壁の外でのブルートたちとの戦闘が思った以上に
苦しくなってきた事だ。」
「通常のブルートとの戦闘はそれほど厳しいのか?
貴様は通常のブルートにはない”座標転移”という
技を持っていると言っていたが。」
「単体の所有能力だけで考えれば
ワイズブルートの方が上だろう。
そうした前提でワタシたちは創られたのだからな。
しかし、向こうは数が多過ぎる・・・。
更には、通常ブルートの中でも強力なタイプも存在する。」
「私たちが高ランクブルートと名付けている
AやSランク個体の事か。」
明電の言葉に、翼竜は頷く。
「・・・ワタシの言葉をどこまで信じるかは勝手だ。
だが、この壁の外に獣が徘徊する現状に不満があるのであれば、
ここは手を組む事を考えてはくれないだろうか?」
明電は5秒ほどの沈黙を置いた。
「了解した。
ただし、ワイズブルートについての情報は機密事項とし、
限られた人員のみに公開する。
そして、お前の身柄は
基本的には留置所に拘束し、
その内部で不審な動きを見せた場合、直ちに始末する。」
―――――その頃、萩間たちは―――――
西園寺 藍木が
“脱法チップ”ジェネシスで変身した怪人は、
宙に浮遊しているカース・ディレンマ目掛けて跳躍する。
「・・・俺のタクティカルビットを攻略したのは褒めてやろう。」
ディレンマはそう言いながら右手を広げ、
迫り来るジェネシスへと向ける。
「だが、少々甘かったな・・・!」
すると、ディレンマの身体から先ほどのように
筒状のパーツが6本射出され、
それらを中心とした一辺が3mの正方形の透明な壁を構築した。
すかさず、6枚の壁は回転しながら
ジェネシスの身体を粉砕しようと接近する。
「高熱を利用した攻略は見ものだったが、
ビットの再生機能は予測できなかったか?」
・・・先ほど、フェニックスのアーマーによる放熱により、
見事にビットを無効化した西園寺であったが、
ディレンマには代用ビットが備えてあるようだ。
フェニックスのチップは放熱によって損傷しているため、
現状では代用ビットを同じ手で無効化する事はできない。
尚且つ、ジェネシスは跳躍後の状態で、
有効な手を打つ余裕も残されていないだろう。
「フッ・・・!」
ジェネシスは両手の指の爪を瞬時に50cmほどまで伸ばし、
まるで迫り来る壁を無視するかのようにディレンマへと突き出す。
「・・・見るが良い!!」
ジェネシスが叫んだ次の瞬間、
彼に狙いを定めていた6枚の壁は
あろう事か標的をすり抜けたのだった。
「何・・・!?」
油断していたディレンマの腹部に
ジェネシスの爪による斬撃が命中。
浮遊していたはずのディレンマは
そのままジェネシスと共に落下し、
地面に叩き付けられる。
が、草木の地面で転がりながらすぐさま起き上がり、
再び浮遊した。
「タクティカルビットを瞬時に無効化するとはな。
今度はどんなトリックを使った?」
「”透過”をしたまで、の事だ。」
・・・透過?
もしや、西園寺が変身したジェネシスは
状態を保ったまま敵の攻撃を無効化できるというのか?
「そもそも、この技術のベースは
“HR細胞”によるフォーサー化だ。
しかし、私は独自にHR細胞をカートリッジ化し、
任意のタイミングで体内・体外に移動させる事を可能とした。
それがジェネシスのチップ、という訳だ。」
・・・HR細胞とは、
本来は体内の特定の部位に打ち込み、
その部位と一体化して機能強化を及ぼす技術であったはずだが、
西園寺はチップ1本で
体外に摘出する技術を開発していたという事か。
「だが、それだけでは通常のフォーサーと大差ない。
そこで私は自身が編み出した
”特定の細胞の移動”という技術を再利用し、
怪人態の肉体を細胞レベルで分解・構築し直す事に成功した。」
・・・つまりは、
“透過”というのは、怪人化した自身の肉体を
瞬時に細胞レベルで分解して柔軟性を持たせ、
直後に再び細胞を構築している、というメカニズムだろう。
「なるほど・・・。そういう事か。」
ディレンマは腕組みをして納得しているかのような仕草を見せる。
「これが理解できているというならば、
人間並みの知能はあると考えて良さそうだな。」
「人間並み・・・か。」
理由は分からないが、ディレンマは微かに笑った。
「まぁ、どちらにせよ、
お前はこの技術のテスト運用のために死んでもらう。」
ジェネシスは伸びた両手の爪を開閉させる。
「確かに、厄介な技だ。
透過した状態で体内に手を突っ込み
臓器を摘出でもされたら即死という訳だ。」
「・・・その作戦に勘付くとは、なかなか良いセンスを持っている。
それでは、その予想がいかに正確か、教えてやろう。」
ジェネシスはそう言いながら大地を蹴り、
脚を踏み出す。
#第13話 「明かされる1つの謎」 完結
今回は、ワイズブルートという
人間の言葉を話すブルートたちが
元は人間であり、改造された人種だという事が判明しました。
なお、本文中にも説明がありますが、
西園寺が変身したジェネシスは
前作、もしくは今作の通常フォーサーとは違い、
HR細胞を体外に保存しておく事ができます。
この技術の開発には、
そもそも"HR細胞"は西園寺の発明品ではないため、
彼自身の体内に入れたままにする事に抵抗がある、
という発想が関わっています。
そして、その技術の副産物として"透過"能力を手に入れたという訳です。




