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ジャッキング・フォース  作者: まるマル太
第3章 迫り来る地球外生命体”ブルート”
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#第12話 全ては作戦の内

#第12話 「全ては作戦の内」




「・・・お前、ワイズブルートだな?」

俺の問い掛けに対し、

俺との距離を20mほど取って浮遊している怪人は

すぐには返答しない。


「・・・ワイズブルート、という単語は知らないが、

 どうやら、”区分け”はできているようだな。」

「区分け・・・?」

俺が呟くと、浮遊する怪人は短い笑いを漏らした。


「まぁ、詳しい事は良いだろう。

 それより、お前はこの俺に見覚えはないか?」

怪人は両手を広げ、身体正面を見せ付けた。


・・・真っ黒い身体。

そこに歯車を思わせる刺々しい白い輪が、左右対称に3枚ずつ

計6枚めり込んだようなデザイン。

顔面は顎付近から生える湾曲した白い装甲で覆われており、

後方へと伸び続ける装甲は途中で3つに分岐して、

シルエットを幾分か拡大させている。


とても、野生生物とは思えないビジュアルだ。




「・・・見覚えがあるとすれば、いつの事だ?」

「なるほど。

 ならば人違いか、記憶が抜けているか、といったあたりか。

 俺はお前と顔見知りのはずなんだが。」




・・・もしや、

もともとこの世界にいた記憶を上書きされた俺は、

コイツに一度遭遇しているのだろうか?




「・・・俺は”カース・ディレンマ”。

 分類上はおそらくブルートという事になっているはずだ。」


その怪人の名前が耳に入ると同時に、

ふと俺は頭の内部に微かな反応を感じた。


・・・間違いない。

俺は、一度このディレンマという怪人に遭遇している。


・・・だが、ここでその事実について問うのは気が進まない。

もし万が一、俺が未来から来たという事が分かってしまえば、

俺の優位性は失われる。




「さぁ、貴様はSASを装着して、

 俺と戦いに来たのだろう?

 我々ブルートを倒して、平和を手に入れるのだろう?」

ディレンマは腕組みをして、説教めいた事を始めた。


・・・妙だ。

この怪人の目的がよく分からない。

まるで俺に戦わせようと誘導しているように思える。




「ディレンマ・・・お前の目的は」

「いたぞ!!」

突如、木々の向こうから人影が近付いてくる事に気が付いた。


「萩間(はぎま)!気を付けろ!」

接近する人影、フェニックスこと

第11小隊の隊長、西園寺(さいおんじ)が警告する。


「先ほどの戦闘で

 神楽(かぐら)はその怪人に殺害された!」

「何・・・?」


第11小隊、隊員の神楽(かぐら) 彩月(さつき)は

ディレンマが殺害した。

隊長さんはそう言っている。


元々、高ランクブルート遭遇の無線を発信したのは

神楽(かぐら)だった。

つまり、神楽(かぐら)は俺が辿り着く前に

既にここから少し離れた地点でディレンマと戦って

戦死したという事だろう。




・・・残念ではあるが、未知の怪物と戦う以上、

こういった危険性は受け入れるべきだし、

神楽(かぐら)自身も把握していただろう。






「不死鳥よ、もう追い付いたか。

 案外早いな。」

ディレンマは宙に留まったまま

フェニックスを見下ろした。


「先ほどはよくも私を目の前にして逃げ去ったな?

 ここで仕留めてやる。」


おそらく、隊長の西園寺(さいおんじ)が

神楽(かぐら)の身体の状態を確認している間に

犯行者であるディレンマはその場を去ったのだろう。




「わーりぃなあ!!遅くなった!」

軽々しい謝罪が聞こえたかと思うと、

フェニックスとは逆の方角から

何やら黄緑色の昆虫を模したような

鋭いシルエットを持つアーマーの

装着者が現れた。


同じく、マイペース隊員の中久喜(なかくき) 麗央(れお)だ。




「・・・お前のアーマーチップは何なんだ?」

何とも形容し難いフォルムがつい気になり、問う。


「えっ?あぁ、”マンティス”さ。

 分かるかー?か・ま・き・り、だぞ?」

「言っておくが、俺は東大卒だ。」


全身がカマキリの鎌のような装甲で覆われており、

それが毛皮の様にも見える。

手には”トンファ”のような一回り大きな鎌を握っており、

明らかに殺傷力が高そうだ。




「さて、いつになったら始める気だ?」

ついにカース・ディレンマは痺れを切らした。


「安心しろ。お前の相手は私一人で十分だ。」

フェニックスは右手に装備された専用武器、

“フレイムチェーン”の発射口を宙のディレンマへと向ける。


フレイムチェーンは3つの発射口に分岐した

チェーンを発射するための武器であり、

各チェーン先端の30cmほどが鋭利な刃になっている。


非常に扱いが難しそうな武器であるが、

西園寺(さいおんじ)としては

それを使いこなす技量を彼が持ち合わせている上に、

敵に攻撃の軌道が読まれにくいということで

愛用しているとのことだった。




「来い!不死鳥よ!!」

ディレンマは組んでいた腕を解き、

フェニックスを指差す。



次の瞬間、チェーンが3方向へと発射され、

本人の操作技術でそれらは一斉にディレンマ目掛けて迫る。




「・・・タクティカルビット展開!」

ディレンマがそう呟いたかと思うと、

突如、ディレンマの身体から

計6個、1.5Lペットボトルほどの太さの棒状パーツが飛び出し、

浮遊しながら彼の周囲を取り囲んだ。


そして、すぐさまそれらを中心とし

一辺が3mほどの透明な正方形の壁を構築し、

彼はその6枚の壁を身にまとう形態となる。




チェーンは左右へと行き来し、

繰り返しディレンマを攻撃するが、

連撃はその展開された壁に弾かれて続けている。




「こざかしい真似を・・・!!」

フェニックスは壁の耐久値を測るためか、

チェーンによる連撃を止めない。


「無駄だ。

 タクティカルビットの対物理障壁は

 完全再生に2秒もかからない。

 つまり、お前が例えこの壁を破壊したところで

 俺に攻撃を通す事はできない。」

「ならば、その中心の棒を破壊しろという事か?」

「なるほど。まるっきりの馬鹿ではなかったという事か。

 だが・・・それができるものならやってみろ。」


次の瞬間、ディレンマを囲っていた6枚の壁は

彼の正面へと移動した。

するとそれらはまるで回転扉のように規則的な回転を一斉に開始する。


「即時再生する“壁”は・・・極めて優秀な“刃”にも転用できる。」

ディレンマは両手を組んだままであるが、

6枚の回転扉はフェニックスを目掛けて射出されたように飛んでいく。


「【どこでも人間すり潰し機】といったところか。」

フェニックスはチェーンを一度引き戻すと、

両手をバッと左右に広げる。


これはアーマー作動で生み出される熱に対する

必要な放熱処理であるが、

熱を操るフェニックスの場合は高熱ブレス攻撃に匹敵する。


そこに6枚の回転扉が接近するが、

それらはフェニックスの半径5m以内で回転速度が落ちていくのが分かった。


すぐさま、壁はあっけなく

6枚ともフェニックスによって叩き割られた。




「・・・何だと?」

「フッ、地球外生命体であろうお前がどんなシステムで

 そのタクティカルビットとやら構築しているのかは分からないが、

 この地球の環境で生活している生物である以上、

 タンパク質、あるいはそれに準じた物質が混ざっているのは想定できた。

 タンパク質は容易に熱分解が起きやすいだろう?」


・・・なるほど。

フェニックスこと西園寺(さいおんじ)は

自ら接近してくるのを想定していて、

ディレンマはまんまとその罠に引っ掛かった、という訳だ。




「おぉ、何だか分からんけど、

 やっぱ俺らの隊長はスゲーなあ!!」

俺の横で観戦しているマンティスこと

中久喜(なかくき) 麗央(れお)は興奮して応援を浴びせる。


「ほう・・・考えたな。

 しかし、熱分解を起こさせるほどの放熱を無理に起こしたともなると」

ディレンマがそう言っている最中にも、

西園寺(さいおんじ)が装着しているフェニックスのアーマーから

火花が散っているのが分かった。


「お前のそのアーマーは持たないと思うが?」


過度な廃熱処理のせいで

フェニックスのアーマーは破壊寸前。

ディレンマはそう読んでいるようだ。

生憎ではあるが、俺にもそう見える。


西園寺(さいおんじ)の戦法は作戦としては良かった。

しかし、自身のアーマーの耐久性を考慮していなかったという事だ。




「フッ、その通りだ。」

西園寺(さいおんじ)がそう言った直後、

フェニックスのアーマーが弾け飛んだ。

同時に、彼の腰部分に装着されたバックルから

白煙を上げるフェニックスチップが飛び出す。

すぐさま、生身の西園寺(さいおんじ)へと戻ってしまった。


・・・おかしい。

隊長である西園寺(さいおんじ)は余裕そうな口ぶりだ。

尚且つ、彼が先ほどのような浅はかな作戦を

気安く決行するとも思えない。

仮にも、実戦経験が豊富なはずの彼が。




「お前、なぜ笑っているのだ?

 誰がどう見ても死の直前だというのに。」

「フッ・・・ここまでの状況が作戦通りだから、と言えば良いか?」

「何?お前の戦闘道具は使用不可だ。

 それが作戦のうちだと?」

「あのような”ゴミクズ”は最初から犠牲にする作戦だッ!」

西園寺(さいおんじ)の口調が荒ぶる。


彼が”ゴミクズ”と称するものが

先ほどまで戦闘で使用していたフェニックスのアーマーだと気付くのに

3秒ほどを要した。




・・・思えば、西園寺(さいおんじ)は俺の目の前で

東京パーマネント・ガーディアンスのシステムや

対ブルート用アーマーであるSASなどについて

不満を垂れていたのを覚えている。




「私は・・・あのポンコツたちと共に

 パーマネント・ガーディアンスの内部で

 居住を続けるのには限界を向かえた。

 私は単独で、この現状の謎を解き明かす!!」

そう言うと、彼はポケットから見た事がない

紫色のアーマーチップらしきものを取り出した。




「このアーマーチップは私自身が極秘裏に開発した

 通常、”脱法(だっぽう)チップ”だ。」

「西園寺(さいおんじ)・・・パーマント・ガーディアンスの人員を裏切る気か?」

俺は思わず、2人のやり取りに割り込んで尋ねる。


「その通りだ、萩間(はぎま)。

 私は私のやり方で人類を導く事にした。

 この新たな力でな・・・!」

西園寺(さいおんじ)は腰に巻いていた専用ベルトを取り外すと、

まるで容器をポイ捨てするかのように投げ捨てた。


そして、手にしていた新型アーマーチップ、

つまりはUSBメモリの先端のような形状の部分を

勢いよく自身の喉元へと挿し込んだのだ。



《ディレクトリ・ジェネシス。》

通常のドライバー読み込みガイダンス音よりも

野太いボイスが響いたかと思うと、

西園寺(さいおんじ)の身体は瞬時に紫色を基調とし、

銀色の斑点が身体を埋め尽くす怪物へと変貌した。

上半身を覆い尽くすように、

まるで白い鋭利な貝殻のような硬質皮膚が構成され、

その硬質皮膚から伸びるローブのようなもので下半身が覆われる。

顔面にはジェイソンを思わせるような堅そうな白い仮面が生え、

顔のパーツらしきものは他に見当たらない。




「かつてのあるべき私が創り上げた最高傑作!

 史上に名を刻む凶悪生物兵器、”ジェネシス”の力を見るが良いッ!!」

そう言い、西園寺(さいおんじ)ことジェネシスは

宙に浮遊するカース・ディレンマ目掛けて瞬時に跳躍した。




・・・西園寺(さいおんじ) 藍木(あいき)。

第11小隊の隊長でありながら、

どこか大学教授らしき雰囲気を醸し出していたが、

隊員には素性を明かしてくれなかった。


だが、現状を把握するに、

彼はブルートによる侵略が始まるまでは

何かしらの技術者であったに違いない。


いや・・・早く気付くべきであったのかもしれない。


この戦いの勝敗がどうであれ、

西園寺(さいおんじ)の性格、思想を考慮すると、

彼に”力”を持たせるべきではない。


いずれパーマント・ガーディアンス内部の人間たちの脅威ともなり得る。

その予感は、あからさまな間違いだとも思えなかった。












#第12話 「全ては作戦の内」 完結




今回もお読みいただきありがとうございますm(__)m


第11小隊の隊長、

西園寺(さいおんじ)が今回の変身に使用した"脱法チップ"は

前作ブレイキング・ローズのとある技術が元になっています。

今後、その謎が明かされます。

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