表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ジャッキング・フォース  作者: まるマル太
第3章 迫り来る地球外生命体”ブルート”
14/53

#第11話 失われた目標 

#第11話 「失われた目標」




・・・俺たち第11小隊が四方に散らばってから

10分弱ほどで緊急の無線が入った。


どうやら隊員の神楽かぐら 彩月さつき

探索中に高ランクのブルートに遭遇したらしく、

応戦しているとの事だ。




俺はアーマー、「オーバチャー」を装着したまま

木々の間を駆け抜け、

連絡のあった地点へと向かう。


アーマー装着時は脚力もパワーユニットにより強化され、

生身で全力疾走する時の1.8倍ほどの速度で

走り続ける事ができる。


走り抜ける途中で雑魚ブルートの

“ケルベロス”や”シュガール”などに遭遇しているが、

今はそれらに構っている暇はない。

走力はこちらの方が勝っているため、

適当に弾き飛ばしておけば

背後から攻撃を受ける危険性は低い。




・・・この仕事を担う以上、

自分が、もしくは仲間がいつ死んでもおかしくはない。

その考えは常に頭から離れる事はなかった。


ただ、それが不快極まりない運命だとも思わない。


そもそも、失って生きられないほどの神聖な存在は

俺にとって存在していない。

当然ながら、婚約者である郡川こおりかわ 晴乃はるのですら、

俺は失う事を恐れる必要はない気がする。




自分に絶対的な目的がある訳ではないが、

今の俺は欲望ウイルスこと”ラパシティ”の発生源を突き止める事に興味がある。


そして、未来をある程度知っている俺は

この時代の人間には到底できない事が可能になる。


抽象的ではあるが、それが今の俺の

“何でも屋”としての生き甲斐というものだ。


















―――――その頃、東京パーマネント・ガーディアンスでは―――――




「お疲れ様です、明電めいでんさん。」

東京パーマネント・ガーディアンスのブルート対策本部が設置されている

”司令本部棟”内の長く続く廊下を歩いていた私は、

背後から名前を呼ばれ、振り返る。


・・・明電めいでん 峰隆ほうりゅう

それは東京パーマネント・ガーディアンスの司令官である私の名前だ。




「・・・神崎かんざき 高来こうらいか。」

神崎かんざき 高来こうらい

対ブルート用アーマー”SAS”の開発者であり、

25歳でありながらも開発班の若き最高責任者でもある。


「お久しぶりです。

 関西へのご出張はいかがでしたでしょうか?」

彼の言う通り、私は今日までの9日間、

京都、大阪のパーマネント・ガーディアンスへと出向いていた。


東京の最高指揮権を持っている立場上、

こういった他のエリアの代表と定期的に会合の機会があり、

実際に戦闘する場面には数回しか出くわしていない。


・・・司令官、とは名ばかりの存在だろう。




「色々と向こうの本部で情報を得てきた。

 どうやら現状未確認であるSランクブルートらしき

 ブルートが京都、大阪の周囲で出現したらしい。

 話によれば大型種だそうだが。」

「Sランク・・・。」

「・・・東京でも人間の言葉を話す”ワイズブルート”という新種の

 捕獲に成功したという連絡を受けたが?」

「その通りです。

 現在、ここから200mほどの留置施設内に捕えていますが、

 何も口を割りません。」

「・・・なるほどな。

 少ししたら、私が直々に面会に行こう。

 それでは、私に適するSASの開発を頼むよ。」

そう言うと、神崎かんざきは露骨に表情を曇らせ、

それを隠すように深々と頭を下げた。






・・・間もなく、その廊下の突き当りにあるプライベートルームに辿り着いた。

入り口には明電めいでん 峰隆ほうりゅうと名の付いた

ネームプレートが吊るされている。


中は12畳ほどのフローリングに、デスクのみが置かれた部屋だ。


窓際のデスクへと腰掛け、

そこから見える景色を覗くと、

パーマネント・ガーディアンス内を歩く通行人が豆粒のように見える。


デスクの上に視線を戻すと、

そこにある小型のダンベルを2本両手に握り、

小刻みに上下運動を開始する。






・・・私が司令官に辿り着くまでの道のりは長かった。




元々、私はアメリカのZZZZZファイブゼッツ社で

人間の優性遺伝子のみを取り入れられ、生み出された。


その時、私と同じタイミングで

同じ日本人モデルとして作り出された実験体は

他にもう一人いた。


・・・その名は、時柳宋じりゅうそう 衛久守えくす


彼は未だに類を見ないほどの最高傑作と評価され、

繰り返し実験体として扱われ、強化されていった。




しかし、彼を傑作と表現するならば、私は駄作だった。


基礎能力は時柳宋じりゅうそう 衛久守えくすの半分以下と評価され、

生後の実験体としての進行結果も良くなかった。


彼とは幼少期を共に過ごした記憶が残っているが、

その差は幼い私でもはっきりと自覚していた。

また、彼もそれを理解して私と接していたように思える。




この技術で創られた人間は体細胞の老化が

通常の人間の1.2倍から1.5倍ほどの速度で進むと言われているが、

衛久守えくすはそれが顕著であった。

また、私はその影響がほぼなかった。


そんな衛久守えくすは18歳の時、

バーバレスという世界規模のテロ組織へと引き渡された。

当然の事、ZZZZZファイブゼッツ社の実験という狙いも含めての判断である。


それとほぼ同時期、

私はZZZZZファイブゼッツ社から

社会への適合実験として、

日本の大学への派遣という名目で捨てられた。




・・・私は純粋に悔しかった。


生まれながらに”負ける”事を義務付けられた自分の運命を恨んだ。


無力さを噛み締めた私は、

大学で知力、身体強化に励んだ。

手当たり次第に様々な知識を詰め込んだ。

様々な競技の種目に取り組んだ。


それでも、同級生には時に負けた。

自分の能力が一般人程度であると再認識した上で、

ひたすらに努力を続けた。




・・・そして、私は、

その努力を評価された結果、

有名企業への内定を余す事無く勝ち取った。

いつしか、友人から”天才”と呼ばれる存在となっていた。


しかし、私は企業への就職には興味がなかった。


当時の私が欲した事は・・・更なる「努力」だった。


いわゆる手段と目的が逆転する”倒錯”というものだろう。

気付けば私は、努力の虜となっていた。


それでも、私にも努力の先に見据える目的はあった。


・・・他でもない。

時柳宋じりゅうそう 衛久守えくすを超える存在となる事。

知性、体力、パワー、全てにおいて

衛久守えくすを凌駕する存在となる事。

それだけだった。


そこで私は大学卒業後、テロ組織に対抗できる

武力システムを創造する研究に没頭した。

もちろん、単独での開発だ。




・・・その2年後、目標としていた衛久守えくす

バーバレス日本支部にて戦闘中”何者か”に敗北し、

爆発物か何かでバラバラになった身体の破片が周囲で見つかった。




その事実を知った時、目標を見失った私は、

あろう事か、絶望に陥るような事はなかった。


・・・本当に、時柳宋じりゅうそう 衛久守えくすを殺せた者がいる。

その事実が歯痒くもあり、

私に安堵感を抱かせた。

つまり・・・私自身は自分の努力を認めていなかったのだ。


私では到底無理だという事を、

自分では分かっていた。

だから安心感を得た。


・・・そのような自分が許せなかった。




・・・私は努力を継続した。

もし、死んだはずの衛久守えくすが目の前に立ちはだかったとしても、

迷わず立ち向かえるような強さを求めて。




その約3年半後、ブルートが出現する1ヵ月ほど前に、

私は強力な武力システムの開発を終え、

自分を実験台として体内に組み込んだ。


そのお陰でブルート襲来の際、

近辺の人々を守る事ができ、

彼らの支持を得て、私は

東京パーマネント・ガーディアンスの司令官として認定された。


そこからは様々な人間達の協力を得て壁の建設を開始した。




その際に最も印象的だったのは

上戸鎖かみとくさり 祐樹ゆうきという

作戦指揮官として任命した男だった。


彼はバーバレスの戦闘員として戦う生前の

時柳宋じりゅうそう 衛久守えくすに遭遇した事があるという。

同時に、彼は衛久守えくすの戦闘の様子を捉えたビデオを所持しており、

見せてくれた。


想定通り、圧倒的だった。


ビデオからは分からない事も多いが、

システムを体内に組み込んだ今の私でも

倒せる確証はない強さであった。




・・・だが、ビデオを見せてくれた上戸鎖かみとくさりはフォーサーだ。

隣で共に戦う様子もこれまで何度か目にしてきたが、

確実にその衛久守えくすを超える戦闘能力を持っている。

今の東京パーマネント・ガーディアンスが建設できた理由の1つとして、

彼の存在が指摘されるほどの実力者だ。


私はその事を上戸鎖かみとくさりに伝えたが、

満足そうな笑みを一瞬浮かべた彼は、それでも司令官の座を譲ってくれた。


おそらく、彼は人に認められたいという欲求が

人一倍強いのだろうが、

それでも私にとっては背中を預けられる強い味方だった。

そして、私は彼に実力で負けていたとしても

劣等感を感じる事は無かった。




・・・あくまでも衛久守えくすに勝ちたい私は、

上戸鎖かみとくさりはどうでも良い基準に過ぎなかった。




ちなみに、SAS開発者である

神崎かんざき 高来こうらい

壁が完成した後、すぐに外部から派遣されてきた人間だ。


一度、彼が特注で製作してくれたSASを装着し、

簡易訓練に臨んだことがあるが、

途中でアーマーチップが砕け散り、

Aランクのチップを破壊してしまった経験がある。


自身の体内のシステムでブルートに応戦する事も、

壁ができる前は茶飯事であったために

十分可能な範囲ではあるのだが、

上戸鎖かみとくさりに反対され、

壁外での戦闘参加は禁止されている。


なお、私が使用したチップの問題なのか、

私自身の問題なのかはハッキリと分かっていないそうだ。






・・・さて、そろそろワイズブルートとやらの面会に行こうか。






私がダンベルをデスクへと置いて

そのまま立ち上がった、その時だった。


入り口のドアがゆっくりと開いたのだ。




「誰だ?ノックもなしに入るとは。」

「・・・お前が東京の司令官だな?」

私はその姿を確認すると、

思わず身構えた。


・・・そこには全身が鼠色ねずみいろの体色をした、

まるで翼竜のような姿をした獣が立っていたのだ。


「ほう、まさか貴様が

 例のワイズブルートというヤツか?」

「ワイズブルート・・・そう名付けられたのか。」

翼竜は扉を静かに閉めると、

その場で翼の生えた腕を組み、

まっすぐに私を見据える。


・・・事前に聞いていた通り、滑らかな日本語を話している。


「どうやってここまでやって来たかは知らないが、

 私は常識のないヤツがどうも苦手でね。」

「常識、か。

 人間の常識は心得ていない。」

ワイズブルートの出方を見ながら、

私は壁の方へと歩み寄り、私自身が作成した専用武器である

"高周波ブレード"を手に取った。


同時に、ブルートも組んでいた腕を瞬時に解く。


「安心しろ、ブルートよ。

 殺しはしない・・・が、その近くまでは

 追い込まれる事を覚悟した方が無難だ。」






――――――――――――――――――――――――――――


















―――――その頃、第11小隊は―――――




・・・オーバチャーの力のお陰で、

どうにか無線連絡があった近辺までは辿り着いた。


だが、送られてきた位置と戦闘地点が変更されたのか、

標的の敵の姿も、同隊員の姿も見当たらない。

しかも、無線を入れても他の3人から返答がなく、

完全に取り残された状態になっている。



「くそっ・・・」

付近の様子を確認するが、特に戦闘の形跡は見当たらない。


と、2匹のケルベロスが並んでこちらの様子を窺っているのに気付いた。


「雑魚が」

俺は腰からランチャー型専用武器、チャーリングを引き抜き、

その頭部を2匹まとめて素早く撃ち抜いた。

赤い体液が弾け飛び、2匹の亡骸は勢いで木へと張り付いた。


すぐさま駆け寄り、獣の死亡を確認する。


・・・と、ちょうどその時だった。


獣がべっとりと張り付いた木が突然

横に傾き始めたのだ。


俺は力量が足りると判断し、

その木を両手で受け止めると、反対側に思い切り押しやった。

思いの外、余裕であったが、

俺はすぐに上空へと視線を移す事になった。




・・・そこには、

刺々しい巨大な白い輪が規則的に身体にめりこんだような

漆黒の怪人が浮遊していたのだった。


状況的に見て

敵の高ランクブルートという判断が適するだろう。


攻撃を警戒しつつ、後退して距離を取る。

だが、俺は途中で驚きのあまりその動作を封じられた。




「貴様、人間か?」

「な・・・!?」

あろうことか、

そのブルートと思わしき浮遊した怪人は、

はっきりと日本語を発したのだった。











#第11話 「失われた目標」 完結





お読みいただきありがとうございますm(__)m


時柳宋じりゅうそう 衛久守えくすは前作ブレイキング・ローズの

ラスボス的ポジションのキャラクターです。

圧倒的優位な状況にあった彼ですが、

ある者の機転を効かせた攻略によって彼は殺されました。


そんな彼と同じタイミングで生み出された実験体である

明電めいでん 峰隆ほうりゅうの実力は現段階では未知数です。

彼の”努力”は衛久守えくすを超えられるのか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ