013「アンダーテイルへ」
真希名さんが突然大声を出して立ち上がったことで周囲がこちらを見ながらざわざわしている。すると、
「た、琢磨君、とりあえず場所変えていいかな? ここで琢磨君から異世界の証拠話を聞いて取り乱さない自信がないの⋯⋯」
あぁ⋯⋯つい自然と収納ストレージからポーションを出したのは悪手だった。
今の無意識の行動でもわかる通り俺はまだ異世界の感覚が残っている。
だから俺としてもこの後の話でまた真希名さんを驚かすようなことを無意識に言うかもしれないと考えると、真希名さんの提案は俺からしてもありがたかった。
「わかりました。あと、軽はずみな行動をしてすみません」
「い、いいのよ。ちょっと⋯⋯あいや、だいぶ驚いただけだから⋯⋯」
そうして俺たちは下を俯きながらすごすごとファミレスを後にした。
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「ここが私の城よ」
そう言って、真希名さんがドヤ顔で紹介するのはファミレスを出てから3分ほどで着いたライバー事務所『アンダーテイル』の建物。
「本当に近いんですね」
「でしょ? 知り合いの不動産屋さんから紹介してもらったの。駅からも5分以内だし、家賃もこの建物と立地にしてはかなり格安。つまり優良物件よ!」
事務所は3階建ての建物でビルというほどではないが屋内は結構広そう。
しかも2階と3階はガラス張りなので外観がかなりおしゃれな感じだ。
「たしかにこの大きさの建物で駅から徒歩5分は良い立地ですね」
「でしょ? ちなみにここって元は歯医者さんだったんだけど結構おしゃれな建物だったから外観は特に手を加えずそのまま使ってるのよ」
「へ〜。これで家賃がこの辺の適正価格より安いのは良い買い物ですね」
「もう! 琢磨君ってすごい話わかるじゃない! そういうとこだぞ(ハート)!」
「あ、ありがとう、ございます?」
そんな『建もの探訪』のオープニングのようなやり取りをしたあと、真希名さんに中へと案内された。
「ほ、本当に広い⋯⋯」
現在、俺は建物の3階部分にあたる社長室にいた。
それまで1階と2階も見たのだが特に2階が凄かった。
なんとワンフロアそのままをスタジオとして使っているのだ。
ちなみに1階は受付とちょっとした休憩所となっていて、3階は階段を登ったところに配信用のボックスルームが2つとその奥に社長室があった。
「琢磨く〜ん、コーヒーでいいかな?」
「はい。あ、砂糖もミルクもいりませんので」
「ブラック? へ〜いいじゃない。私もブラック派よ」
といいながら、真希名さんがニコニコしながらコーヒーを持ってきてくれた。
現在、俺は社長室の見るからに高級そうで座り心地の良さそうなソファーで真希名さんと面と向かって座っている。
「とりあえず一杯飲んでから話しましょ」
真希名さんがそう言ってフーフーしながらコーヒーをチビリと一口飲む。俺もそれにならって一口飲んだ。
「ふぅ、さて⋯⋯⋯⋯ばっちこぉぉぉいっ!!!!」
真希名さんが一息ついたと思ったら、突然気合十分な大声を上げた。
「ちょ、真希名さん!? いくら事務所だからってそんな大声出したら近所迷惑⋯⋯」
「ふふ、甘いわよ少年? ここは泣く子も黙るライバー事務所! 全フロア防音対策はバッチリよ!」
真希名さんが「フフン」と腕組み後方支援なドヤ顔を披露する。
そんな見た目スーパーモデルの真希名さんのお茶目なドヤ顔は物凄い破壊力でギャップ萌えが天元突破していた。
不意打ち助かる(助からない)。
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「はい、これがポーションです」
「っ?! ふ、ふぅ〜⋯⋯何とか取り乱せずに済んだ」
ファミレスの時のように収納ストレージからポーションを取り出して見せたが、真希名さんは大声上げるなどして取り乱すことはなかった。
そんな真希名さんが俺の手に持つポーションを見つめながらボソッと呟く。
「でも、一番やばいのはポーションじゃなくて何もないところから突然ポーションを出した⋯⋯《《それ》》よ」
と、俺がポーション以外にも何か良いものがないかと収納ストレージをゴソゴソしていたところに真希名さんがズビシっ! と指を差す。
「え? どれ?」
「だからそのアイテムボックス⋯⋯収納ストレージってやつよ!」
「え? これ?」
「そうよ! どう見たって異常じゃない! ていうかそれくらいわかるでしょ?!」
「え? あ〜⋯⋯うん。そっか。そうだよなぁ」
「?」
真希名さんが俺のリアクションを見てコテンと首を傾げる。




