011「スカウト(2)」
次の日の午後——俺はツイXのDMで『ライバー事務所スカウトの件』を送ってきた相手と会うため、約束の時間15分前に目的の駅についていた。
「えーと、確か女性で名前が『真希名 綾瀬』さんだっけ? 黒のオフィスカジュアルの格好と書いてあったな⋯⋯」
そうして、該当のファミレスを見つけるとちょうどその店の入口にそれっぽい人を見かけた。
黒のスーツとスカートをスマートに着こなすその様はいかにもバリバリビジネスマンのようでかっこいい。
身長は170近くあるだろうか、メリハリの効いたボディのうえ、かなりの美人さんなので彼女の近くを通る人たちが男女問わずチラチラ彼女を見る。
正直、どこかの有名モデルさんかと思えるほどの容姿は明らかに周囲から浮いていたのだが、そんな彼女が俺に気づくと「おーい!」と元気よく両手をブンブンさせて声をかけてきた。
さっきまでのかっこいい系美人がいきなり無垢の少年のように活発に手を全力で振って声をかけるそのギャップは破壊力抜群で、その姿に周囲の人たちの視線が集まる。
だが次には彼女が声をかけた先の⋯⋯つまり俺のほうに周囲の視線が移る。
いや、気まずっ!?
すると、彼女のほうから俺の元へと駆け寄ってきた。
「どうもはじめまして! 昨日DMを送った真希名綾瀬です。君がイッチ君?」
「は、はい、そうです」
間近で見ると、彼女の完璧な容姿の破壊力がすごかった。
いやマジで美人だわ、この人。
「まだ約束の10分前なのに早いね。若いのにすごいしっかりしてる!」
「い、いえ、そんなことは⋯⋯」
「今日は突然なのに会ってくれてありがとう!」
「ど、どういたしまして」
真希名さんは見た目通り、頭の回転が速く仕事ができそうで自分にも他人にも厳しそうな人に見えたが、実際は元気で、でもそれでいて相手を気遣う柔らかい印象を受けた。
あと言葉遣いもフランクだから俺としてはこれくらいの感じで話してくれるのはとてもありがたかった。
「それじゃあ中に入りましょうか」
俺たちは軽い挨拶をかわした後、そのまま店内へと入っていった。
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店内に入ると、お昼時ということもあり人が多かったが真希名さんが事前に予約をしていたらしく俺たちはすぐに席に案内された。
「それじゃあ、先にご飯食べてからその後ゆっくり話しましょ。ここは私が出すから気にせず好きなもの頼んでね」
「あ、はい。ありがとうございます」
ということで、俺は彼女のお言葉に甘えてカツ丼を注文。同じタイミングで真希名さんも注文した後、先にドリンクバーでお互い飲み物を取ってきた。
そうして注文を待っていると真希名さんが「改めて、今日は突然の申し出だったのにこうして会ってくれて本当にありがとね」と謝罪と感謝の言葉を告げる。
「いえ、大丈夫です。それにお昼を奢ってもらうってのは俺的にはすごく助かりました。特に何もなければそのまま家でカップラーメンでも食べるつもりでしたから」
「そう? だったらDMをすぐに送ってよかったわ」
そういうと、真希名さんがニコッと笑顔を見せる。
うわぁ、美人の笑顔ってすげえ破壊力だな。
異世界でも現代でも美人の笑顔は最強の武器だね。
そんな真希名さんの笑顔にすっかり絆されていると、
「あ、ちょうど食事が来たみたいね」
と、真希名さんが指差す方向を見るとちょうど配膳ロボットが俺たちが注文した料理を運んでくるところだった。
「とりあえず、ごはん食べましょ」
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その後、俺も真希名さんも食事をしながら色々と話をした。
「へ〜、琢磨君っていうんだ」
「はい。イッチの中の人こと『藤代 琢磨』です。どうぞよろしく」
「あははは、なにそれ。琢磨君面白いね」
「そうですか?」
「そうよ〜。オカルト板でのスレ民とのやり取りも面白かったし」
「え? オカルト板、スレ民⋯⋯って、どうして真希名さんがそれをっ?!」
「ふっふーん。何を隠そう私はこう見えて22ちゃんねるのオカルト板の常連でしかも古参なのだよ〜」
「な、なんですとー!」
ビックリした!
まさかこんな美人でかっこいい人が『掃き溜め』と呼ばれる22ちゃんねるのしかもオカルト板のスレ民だったとは!
しかもオカルト板の古参って⋯⋯マジかよ⋯⋯。
「ビックリした?」
「まだビックリしてます」
「あはは、なにそれ。やっぱ琢磨君おもしろーい」
そりゃこっちのセリフだ。
あれ? ちょっと待て⋯⋯。
「ってことは、もしかして真希名さんは俺を配信前のオカルト板での告知から知っていたってこと?」
「そうだよ。ていうかオカルト板の古参っていったじゃん。だから私は君を配信前から知っていたしチェックしていたよ」
「マ、マジっすか⋯⋯」
「マジっす(笑)。でもすぐに声をかけなかったのは君がYo!Tuber⋯⋯ライバーとしての素質があるとか魅力があるとか以前に⋯⋯⋯⋯本気かどうかを見極めたかったんだ」
「っ?!」
「⋯⋯そして、第1回と第2回の配信を観て君が本気でライバーを目指していると私は確信した。だから声をかけた」
「ま、真希名さん⋯⋯」
「とはいえ、本当ならもう少しじっくり交渉するつもりだったんだけど⋯⋯でも、そうは言ってられなくなった」
「といいますと?」
「琢磨君の⋯⋯異世界帰還者イッチちゃんねるの次の配信は大きな転換点を迎えると私は確信している! だからすぐに琢磨君にDMを送った!」
「つ、次の配信が大きな転換点⋯⋯?」
「そうよ。だからこうして獲得に動いた私がここにいる!」




