【小さな守り手】
次の日。
朝起きると、アリアンネがやってきた。
「アリアンネさん、おはようございます」
「おはよう、エルゼちゃん。
この前の件で、ギルドに来てほしいそうよ」
「何かわかったんですか?」
「詳しいことは、私もまだ聞いていないわ。
とにかく来てほしいそうよ」
「なるほど、分かりました」
エルゼは簡単に朝食を済ませ、
身支度を整えると、
アリアンネと一緒にギルドへ向かった。
ギルドに着くと奥の部屋へ向かう。
部屋に入ると、
ミラベルと数人の職員、
そしてヘレナ達が既に揃っていた。
アリアンネは奥の席に座り、
エルゼはヘレナ達のいる方へ腰掛ける。
「全員集まったわね、
カミラの件で色々調べてみたんだけど」
ミラベルは机の上に、
数枚の資料を広げた。
「他にも同じように登録を抹消された、
冒険者がいるようなんだけど……
いえ、正確にはカミラ個人じゃないわ」
「彼女が所属していたパーティそのものが、
登録を抹消されているようなのよね」
「それっていつの話なんでしょう?」
ヘレナが問いかける。
「今から……五十年前のことよ」
「ふむ、つい最近だな」
アグニードが呟く。
「アグニードさんにはね……」
リゼが呆れたように言う。
「えっ? とてもそんな歳には、
見えませんでしたけど」
「ギルドに残されていたのは、
パーティの主要メンバーと、
登録抹消の記録だけなのよね」
「そのパーティについて、
詳しく聞いてもいいですか?」
「ええ、いいわよ。
本来なら、
ギルドの外に出していい話じゃないんだけどね」
「もう本人に会っている以上、
今さら隠しても仕方ないでしょうしね」
「そのパーティの主要メンバーは五人」
ミラベルは資料を一枚ずつ確認しながら、
名前を読み上げていく。
カミラ・ローレイン 魔術士
ネリス・アストレアス 賢者
ノエリナ・クレストレア 治癒術士
エルバルト・クロウゼイン 剣士
オルディアス・バルノーク 騎士
「その人たちが登録抹消された理由は、
記録に残っていないんですか?」
「ないわね。
でも、登録抹消なんて
簡単に下される処分じゃないわ」
「少なくとも、当時のギルドが、
そのパーティを危険だと判断したのは間違いないでしょうね」
「ギルドでは、
それ以上の事はもう分からないわね」
「ところでミラベルさん、
ラ・ジール王国って今どうなっています?」
「現状、まったくの手つかずよ」
「私達が中に入ることってできますか?」
「何か気になることでもあるの?」
「実は……」
エルゼはリヒータ王国で起きたことを話した。
「そう……リヒータ王国も、
そんなことになってるなんて」
「ラ・ジール王国のように、
壊滅まではしていませんけど……」
「今は立ち入り禁止区域になっているけど、
ギルマスの許可証があれば入れるわ」
ミラベルはそう言って、
アリアンネの方を見る。
アリアンネは静かに頷いた。
「私としては、君たちを信用しているつもりだ。
だから許可証はすぐに用意させよう」
「ただ、急いでも明日までかかるだろう。
それまでは待っていてもらうことになる」
ギルドでの話し合いが終わり、
宿屋へ戻るエルゼ達。
その日の夜。
宿の外から、悲鳴と怒号が聞こえてきた。
部屋にいるエルゼ達の元に、
宿屋の主人が飛び込んでくる。
「街に大量の魔物が出た! 外は危険だ!」
「大変、街の人を避難させないと」
「お嬢さん達、外へ行く気か!?」
「大丈夫です。私達、冒険者ですから!」
着替えて外へ出てみると、
そこには大量の魔物がいた。
「なにこれ……」
あちらこちらで冒険者らしき人と、
魔物が戦闘している。
アグニードが叫ぶ。
「こっちにも来るぞ!」
エルゼが鑑定する。
「Cランクのルートトレントだ!」
「私に任せて!」
『アルカレイフレア』
大きな火球がルートトレントを燃やし尽くす。
「えっ、ヘレナちゃん、いつの間に
こんな魔法を……」
「エルゼちゃんが訓練してる間、
みんなも訓練してたのよ!」
手分けして魔物を倒すエルゼ達だが、
一向に魔物が減る気配がない。
イリアが提案する。
「何人かギルドへ向かったほうがいいかも」
「そうだな……エルゼ、リゼ、テラ。
三人でギルドへ向かえるか?」
エルゼ達は頷いた。
道を塞ぐ魔物を倒しながらギルドへ走る。
途中、逃げ遅れた人が魔物に襲われていた。
それを見たリゼが、すぐに飛びかかる。
「この人たちは私が安全な所まで連れて行くわ」
「うん、お願い!」
再び走り出すエルゼとテラ。
「もう少しでギルドよ」
その時脇道から声が聞こえる。
「誰か助けてー」
視線を向けると子どもが魔物に襲われている。
エルゼが走り出そうとすると、
立ち塞がる魔物。
(琴音、転移で飛べるか?)
(だめ、ここからじゃ遠すぎるわ)
子どもに襲いかかる魔物。
『アクアソード』
水の刃が魔物を斬り裂く。
(テラちゃん……いつの間に)
テラが子どもに近づく。
「行こ!」
テラは子どもに手を差し出す。
(あっちは大丈夫そうか)
エルゼは目の前の魔物を鑑定すると……。
(Aランクか、面倒だな)
エルゼは、四体のAランク魔物に囲まれていた。
その時……テラに迫る魔物が見える。
(あれもAランクか、
さすがにテラ一人であれは……)
(早く助けにいかないと!)
テラも魔法で応戦する。
『アクアソード』
『アクアアロー』
魔物にダメージはあるようだが、
大して効いていないようだ。
魔物に追い詰められるテラ……。
(琴音、急げ)
(あと一体!)
(だめだ、間に合わない)
その時だった。
テラの背後に、
淡い光のようなものが揺らめいた。
次の瞬間、見えない衝撃に弾かれ、魔物の体が砕けるように吹き飛んだ。
(今なにが!?)
最後の魔物を倒し、
テラのいる方へ走り出すエルゼ。
だがテラが子どもと、
手をつなぎ宿屋の方へ走り出す。
「ぼくがまもるからねえねさきにすすんで!」




