【Cランク昇格】
エルゼは奥の扉へ向かった。
(カミラ・ローレイン……
何者なんだろう)
(悠人? 情報も少すぎるし、
今考えても仕方ないんじゃない?)
(そうだな)
扉を開けると……。
部屋の中には、古びた椅子と、
そこに縛られたアリアンネの姿だけがあった。
(琴音、気をつけろ)
周囲を警戒しながら、
アリアンネに駆け寄り縄を解く。
「ん…… ここは?」
アリアンネは小さく息を吐き、
まだ重そうな身体を起こした。
「大丈夫ですか?」
「あなたはエルゼちゃん!?」
エルゼは、ここまでの経緯をアリアンネに説明した。
「そう……カミラ・ローレイン。
その名前なら聞き覚えがあるわ」
「たしか、元Aランク冒険者だったはずよ」
「元、ということは……?」
「ある事件を起こしたせいで、
冒険者ランクを剥奪されたのよ」
「アリアンネさんを攫ったのも、
それと何か関係が?」
「詳しいことまでは分からないわ。
私はまだ、その頃ギルマスじゃなかったから」
「とりあえず、ギルドに戻りましょう」
エルゼは頷いた。
アリアンネの視線が、エルゼの服へと落ちる。
「それより、あなたその格好は……」
アリアンネは羽織っていた上着を脱ぎ、
エルゼに差し出した。
「……これを着なさい」
「あ、ありがとうございます」
「出口はこの部屋にはないわね」
二人は部屋を出て、
さっき戦った部屋、そしてエルゼが目を覚ました部屋を順に調べた。
けれど、
どこにも出口らしいものは見当たらない。
「何もないわね」
その時、エルゼの耳に、
微かな音が届いた。
「空気が動く音?」
近くの壁から聞こえる。
「この壁……」
アリアンネが壁を調べる。
「少し脆くなってるわね、壊せるかもしれない」
次の瞬間、壁を蹴り抜いた。
壁が崩れ通路が現れる。
「さあ、行きましょう」
通路を進むと……。
薄暗い部屋に出る。
奥には階段と、その前に人影が見える。
ゆっくり階段へ近寄る二人。
そこには、アグニード達の姿があった。
(また偽物か?)
エルゼが構える。
「待って!」
ヘレナに見える人物が、
慌てて声を上げた。
「エルゼちゃん、どうしたの?」
(少なくとも、さっきの偽物とは違うみたいだ)
「みんな、どうしてここに?」
「あの後、廃屋に入ったら二人の姿がなくて」
「中を探してたら隠し階段を見つけて、
降りてきたのよ」
「ここで話すよりギルドへ戻らないか?」
アリアンネが言った。
エルゼ達は頷いた。
一同は階段を上がり、
廃屋の外へ出た。
そのままギルドへ戻る。
ギルドの前に着くと、
帰りを待っていたミラベルと職員達が駆け寄ってきた。
「ギルマス!」
「みんな心配をかけてすまない」
「エルゼちゃん達も、大丈夫だったかい?」
ミラベルはエルゼの服を見渡す。
「とりあえず、着替えてきたほうがいいね」
エルゼ達はギルドの奥へ行き、
預けていた装備へ着替える。
「よくあの格好で平気だったわね」
エルゼが顔を赤くして答える。
「助けることに必死で、
今になって恥ずかしくなってきたわ……」
ギルマスの部屋へ入り、
今までの経緯を説明する。
「元冒険者のカミラね、
ちょっと調べてみるわね」
そう言って、ミラベルは資料室へ向かった。
「あ、それと今回のギルマス救出の件で、
君達のランクもCランクになる事が決定した」
ギルドの職員から告げられた。
「Cランク……まだ実感わかないわ」
「うんうん、でも嬉しい!」
しばらくして、ミラベルが戻ってきた。
「簡単に調べてみたけど、
詳しい記録は見つからなかったわ……」
「数日はかかると思うけど、
ギルドの方で詳しく調べてみるから」
「しばらくこの街に滞在出来る?」
「数日なら平気かな?」
アグニードが答える。
エルゼも頷いた。
「では今日は遅いから、
また何か分かったらギルドへ集まってほしい」
「分かったわ」
「あと、宿屋の方はこちらで手配しておいた」
とアリアンネ。
「宿代は私が持つ。
今回のお礼だと思って、
自由に使ってくれて構わない」
その後、エルゼ達は手配された宿屋へ向かった。
その夜。
女性陣は宿のお風呂へ向かった。
湯船に浸かり、ようやく一息つく。
しばらくして、
湯気の向こうから扉の開く音がした。
そこへアリアンネが入ってきた。
「アリアンネさん!?」
「ちょっと、話したくてね」
「エルゼちゃん、よかったら明日から
私の訓練に付き合ってくれないか?」
「訓練?」
「あぁ、まだ呪いの影響が残っていてね」
「いざという時のためにも、
体を慣らしておいたほうがいいからね」
「それに、君は強い。
けれど、技術はまだ甘い」
「私が少し、稽古をつけてあげよう」




