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【踊り子エルゼの潜入作戦】

結局全員が目覚めたのは、

お昼過ぎだった。


ギルド奥の部屋に集まり、

話し合いが行われていた。


集まっているのはミラベルの他、

ギルドの職員数名とエルゼ達だ。


「ギルマスは一体どこに行ったんだ?」


「そもそもあれは偽物だって話でしょ…」


(琴音、もう大丈夫なのか?)


(もう何ともないわ、心配かけてごめんね)


(しかし偽物であの強さって何なんだろうな)


「ちょっといいでしょうか?」

ヘレナが立ち上がる。


「どうかしたかな?」


「アリアンネさんはギルマスです。情報を得るために、まだ殺されていないはずです」


「どこかに、

捕まってる可能性が高いと思うんです」


「それならここの近くで、

誰もいない廃屋…」


「あ… もしかして」

エルゼも気がつく。


頷くヘレナ。


それは… エルゼ達がヴァルガノンと、

もう一人のエルゼに出会ったあの廃屋だった。


「なら早く助けにいかないと…」


「冒険者を集めよう!」


「待ってください」

 

「あんまり大勢で行けば、

敵に勘付かれるかもしれません」


「なのでここは私達に任せてもらえませんか?」

 

ミラベルが答える。

「確かに、偽物でもアリアンネさんと、

戦えたエルゼちゃんなら任せても問題ないかと」


「反対の者はいるかな?」


「……」


「決まりだな」


ギルドの職員が話す。

「一つ提案なんだが…」


「普通に向かえば目立つ。旅芸人の一座に見せかけるのはどうだろうか……」


それから少し経ってルナルロッカ、

廃屋方面入り口。


「こんな格好で行くの…」


エルゼ達は冒険者だとバレないように、

変装していくことになった。


冒険者だと分かる装備は、

すべてギルドに預かってもらった。

代わりに渡されたのは、妙に派手な衣装だった。

 

アグニードは旅芸人一座の団長、

エルゼとヘレナは踊り子役。


イリアは曲芸師、リゼは道化、テラは人形。


「恥ずかしい…」


「だが旅芸人一座なら、

戦闘になった時に動きに制限がかかりにくい」


「時間もないし、行きましょう」


廃屋へ移動するエルゼ達。


「でもエルゼちゃんとヘレナちゃん、

その衣装いいの……」

とリゼがエルゼ達の衣装に視線を向ける。


「エルゼちゃんは冒険者の時の

装備も似たような感じだよね」

イリアがそう言って苦笑する。


ヘレナは顔を真っ赤にして、

両手で衣装の裾を押さえていた。


「あの装備も私が選んだわけじゃないから!」


イリアが首を傾げる。

「エルゼちゃん、そんな事言ってるけど、

意外と平気そうだよね?」


「普段からあんなの着てるからでしょう!」

リゼが半笑いで答える。


「ひどーい!」


そうこう言っている内に廃屋が見えてきた。


アグニードが低い声で言った。

「敵の正体がわからん、

警戒は怠るなよ」


「直接行くと怪しまれない?」


「そうだな… 廃屋の前で、

少し雑技でも披露するか…」

アグニードも衣装のせいか意外に乗り気だ。


「本当にやるの!?」

リゼは戸惑う。


街外れで練習している旅芸人を装い、

廃屋の前で簡単な準備を済ませ、

エルゼとヘレナが踊り始める。


イリアも小道具のナイフで的当てを披露する。


リゼはわざとふらつくように歩き、

次の瞬間には軽く宙返りして道化を演じる。


反応がないまま時間だけが過ぎていく。


エルゼが小声で話す。

「私に任せて」


その時エルゼが大げさに転ぶ。


「きゃああー!」


みんながエルゼに駆け寄る。


アグニードがエルゼを抱き上げ、

ゆっくりと廃屋の扉へ近づいていく。


コンコン!


「申し訳ない、仲間が怪我をしてしまい、

少しベッドを借りられないだろうか?」


「誰もいないか…」

アグニードが大きめの声で話す。


すると…。


ドアが少し開き、

中から女が顔を出す。


アグニードを一瞥すると…。


「その女の子だけなら構わないよ」


「…」


エルゼはアグニードに頷く。


「あぁ、それでいい。頼む」


アグニードがエルゼを女にそっと預けると、

女はその身体を受け止め、

すぐに廃屋の中へ運び込んだ。


バタン、と扉が閉まる。


女はエルゼをベッドに寝かせると、

扉の方を一度だけ振り返った。


女がうっすら笑っているのが見える。


不思議な感覚に包まれる。


(……まずい)


エルゼは起き上がろうとした。

だが身体に力が入らない。


視界がゆっくりと歪んでいく。


そして、エルゼの意識は闇に沈んだ。


その頃廃屋外。


ヘレナが小さく息を呑んだ。

「……エルゼちゃん、大丈夫かな」


アグニードは扉を睨んだまま、低く答える。

「信じるしかあるまい」


リゼが顔を上げ廃屋を見る。

「大丈夫だよきっと…」


だが、その声には自信がなかった。

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