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【砕けた剣、増える影】

ーーバルドルの工房ーー


「それでどうするつもりじゃ?」


「もうアグニードの翼も治ったし、

ラ・ジール王国に向かうよね」

とイリアが言う。


「そうか…」

残念そうなバルドル。


「何かあるのか?」


「いや、急ぎなら別にいいんじゃが」


「北の鉱山の奥に珍しい鉱石が

あるそうなんじゃ」


「行けないのか?」

アグニードが不思議そうに聞く。


「無理じゃよ、魔物が出るのでな」


「それを私達に取ってきて欲しいと?」


頷くバルドル。


「せっかく装備も貰ったし、

それくらいいいんじゃない?」


「私もいいよー」


「ほんとか!?」


「まあ問題ない!」


「すまん、助かる!」


バルドルの頼みを引き受け、

エルゼ達は北の鉱山に向かった。


ーー鉱山の入り口ーー


「魔物が出るらしいから、

みんな油断しないようにね!」


「私なら『視覚強化』あるから、

先頭を進むわね」


警戒しながら奥へ進む。


「静かだね、すごい不気味…」


「鉱山ならそんなものじゃない?」


「変だな…」

アグニードが呟く。


「どうかしたの?」


「魔物の音がしない」


「バルドルが言うには魔物が出ると、

言ってたのに」


「もっと奥とか?」


「これだけ進んで出ないとは思えないんだがな」


道なりに奥へ進む…、

だがいくら進めど魔物がいる気配はしなかった。


「何にも出ないね?」


そのまま進むと広い部屋に出る。


部屋の奥に歩きだすエルゼ。


「何もないね…」


半分程進むと…。


地面から黒い粒子が舞い上がる。


「何だ!?」


警戒するエルゼ達。


次第にその粒子は人型に形作る。


左手には剣を持っている。


「なにこれ…魔物?」


(悠人…調べられる?)


(あぁ…)


『鑑定眼』

シャドウグレイン Sランク

Lv60 影系 付与『異界の魔呪』


(琴音…これ…)


(どういう事?)


(あの時の『カースドデビル』は

たぶん囮だったのかもしれないな)


(こっちが本命…)


みんなが集まってくる。


「エルゼちゃん、大丈夫?」


「うん、それよりこれ…」


「たぶんこの前ヴァルガノンが、

残していったものよ」


エルゼ達を見つめるシャドウ。


「全員気を抜くな!」

アグニードが警戒しながら言った。


「瘴気の魔物?」


シャドウがエルゼに斬りかかってくる。


紙一重で躱すエルゼ。


そのままエルゼを蹴り飛ばすが、

受ける瞬間、自分から後ろへ跳び、

衝撃を抑えた。


「新しい装備はやっぱり良いわね、

全然動きやすいわ!」


イリアが矢を撃つ。


がシャドウをすり抜けていく。


「物理は効きにくい、魔法系で攻撃するんだ!」

アグニードが叫ぶ。


『アクアソード』


テラが魔法を放つ。


だがシャドウの体に当たった途端、

魔法が霧散していく。


「なに!?」


「まほうもきかないよー」

テラが慌てる。


「そんな事が…物理も魔法も効かない?」


「いや、エルゼにさっき攻撃したから、

攻撃の瞬間だけ実体化するのかもしれん」


「俺が攻撃を止める、みんなは攻撃を頼む」


アグニードがシャドウへ向かっていく。


大剣で斬りかかる。

だが、刃はすり抜けた。


その直後、シャドウが反撃する。


(琴音、剣に魔力付与するぞ)


エルゼの剣が光り輝き、

シャドウに斬撃を飛ばす。


しかし魔力の斬撃までもすり抜ける。


「違うのか…」


『ウインドショット』


ヘレナも魔法で攻撃するが、

効果がまるでない。


「まいったな…」


「こっちの攻撃は抜けるのに

向こうの攻撃だけ当たるなんて、

どうしようもないじゃない!?」


シャドウの剣とアグニードの大剣が、

激しくぶつかりあう。


(……もしかしたら)


(悠人?)


(琴音、きっと剣だ)


(剣が本体なのかもしれない)


(わかったわ)


「みんな、剣を壊すのよ」


「剣? そうか、剣の部分なら実体があるのか」


エルゼとリゼもシャドウに近づき、

三人がかりで剣に攻撃する。


「当たってる…」


「それにしても硬いな…」


「休まず攻撃するんだ!」


『アクアソード』

『ウインドショット』


ヘレナとテラも魔法で攻撃する。


その時シャドウの持つ剣にヒビが入る。


「もう少しだ!」


シャドウの体が波打つ。


次の瞬間。

体中から鞭のような細い触手が何本も伸びる。

前衛三人へ一斉に襲いかかった。


前衛三人はそれを弾きながら攻撃する。


あまりにも激しい攻撃に次第に防戦一方になっていくエルゼ達…。


「このままじゃみんなもたない…」


イリアが矢に爆裂付与し、

構える。


「これで決まって!」


イリア渾身の矢が、

シャドウの剣に炸裂する。


シャドウの剣が砕け散る。


しかし『シャドウグレイン』は消えない…。


「そんな…」


「剣が本体じゃないの!?」


今までの戦闘で、

消耗が激しいエルゼ達…。


砕けた剣から、さらなる瘴気が溢れ出す。


それは人の形へと変わり、

もう一体の『シャドウグレイン』となった。


「二体!?」


さらに今度は二体とも剣を持っていない…。


「これじゃあ、もう倒せないの…」

とヘレナが力なく座り込む。


「諦めないで!」

エルゼが叫ぶ。


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