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【ヴァルガノンに宿る異形】

帝国領北側の島へ墜落してから、

数時間が経とうとしていた。


墜落した場所より少し奥に、

簡単な野営地を作り体を休める。


「アグニードさん、大丈夫ですか?」


「あぁ、痛みだけは少し和らいできた、

テラの回復魔法のおかげだな」


「えへ!」

嬉しそうに微笑むテラ。


その時、茂みの奥から低い足音が聞こえる。

「全員そこを動くなよ…」


「複数の気配…何か来る」

アグニードが警戒する。


茂みの奥から、武装した集団が姿を現した。

あっという間にエルゼ達を取り囲む。


「こいつらは…」


「アグニードさん、知っているんですか?」


「あぁ、ドワーフ族と言って

独自の生活をする者達だな」


「お前達…帝国の仲間か?」

とリーダーらしき男が、

低い声で問いかけてきた。


「違います!私達は帝国とは

何の関係もありません」


「……」

黙り込むドワーフ達。


アグニードが小声で話す。

「何かおかしい…」


「何がおかしいんです?」

首を傾げるヘレナ。


「ワシらを撃ち落としたのが、

このドワーフ達とするなら…」


アグニードが言うには、

本来ドワーフは鍛冶を得意とする種族だ。

竜を撃ち落とすような

高度な魔法を扱うような事はしない。


「じゃあさっきのは?」


「その者達を信じてはいけませんよ」

ドワーフ達の背後から、静かな声が響いた。


そこへ現れる黒いローブの男。


「あなたは!」

ヘレナが驚いた表情で叫ぶ。


現れたのはエルゼ達も知っている人物…。


『ヴァルガノン・ダクスブレイド』だった。


「どうして……あなたがここに?」

ヘレナが問いただす。


「それは僕が聞きたいくらいなんだがね…」


「ヴァルガノン殿」


「こいつらの話は、

あんたの話と食い違っているが?」


「帝国の者が、

本当の事を言うわけ無いでしょう?」


「きっと貴方がたドワーフの技術に目をつけ、

送り込まれたんでしょう」


「聞いてください、私達は…」


「黙れ、帝国の奴らとはなすことなどない!」


「全員連れて行け」


連行されていくエルゼ一行。


ーー『ドワーフの村』ーーー


村の外れにある独房に入れられたエルゼ達。


「参ったな…」


「いや、これでいい」

とアグニードが言う。


「え?」


「ヴァルガノンが何を企んでるか、

このまま様子をみよう」


数時間後…


ドワーフが数人やってきた。


そこのお前出ろと…、

エルゼを指差す。


黙って従うエルゼ、

そのまま連れて行かれる。


「大丈夫かな、エルゼちゃん…」


「最悪でも、平気だろう」


「私達の中で一番強いしね!」

とイリアが言う。


ーードワーフの村某所ーー


結構大きな研究施設のような部屋に

連れてこられたエルゼ。


中に入ると…。


「やあ」


『ヴァルガノン・ダクスブレイド』が

待っていた。


「君たちは外で警備を頼むよ」


頷き部屋をでるドワーフ達。


「やっと二人になれたね、

エルゼ・リリーコーラル」


「私に何の用なの?」


「君は明らかに他の人とは違う、

それを、解明し僕の研究に役立てたくてね」


「僕が魔物を作ってる事は知っているだろう?」


頷くエルゼ。


「元々ドワーフの技術を手に入れたくて、この島へ来たんだけど…」


「私達を撃ち落としたのもあなたなの?」


「…僕ではないけど、お願いはしたかな」


……それから数日後。


「やはり君の中には、特殊な反応がある」


(悠人……)


機械的な装置にかけられる。


頭の奥をかき回されるような痛みが襲い、

エルゼの体中に苦痛が走る。


「きゃああ」


「ドワーフの技術…未知の精神…」


「僕の技術を合わせれば…」


その時、エルゼのかけられていた装置が、

異常な音を立て始める。



「何だこの反応は……」


次の瞬間、装置が爆発を起こし吹き飛ぶ。


爆風に吹き飛ばされるヴァルガノンとエルゼ。


装置のあった場所の空間が歪み出す。


「あれは!?」


空間の歪みにヒビが入り、

次第に広がっていく。


唖然とするヴァルガノン。


そして……。


空間のヒビが割れ、中から手が

空間の歪みを掴み出てこようとする。


そこから現れたのは…、

全身を黒い鎧のような外殻に覆われた、

異質の魔物。


この禍々しい気配…、

エルゼがそれを見て呟く。


「あの姿みたことがある…」


リヒータ王国で戦った『鎧の男』に似ている。


「なんだこれは…」


ヴァルガノンが異形の魔物に魔法を放つ。


『シャドウエッジ』


闇の刃が魔物を斬り裂く…ように見えたが、

まったく反応しない。


「僕の魔法が効いていない!?」


ヴァルガノンの額に汗が滲む。


魔物がヴァルガノンを見つめる。


ヴァルガノンにゆっくりと歩み寄り、

その前で立ち止まる。

そして、ヴァルガノンにゆっくりと手をかざす。


次の瞬間、魔物の体が黒い粒子となり、

ヴァルガノンの中へ消えていく。


自身の手足を確認するヴァルガノン。


そこへ慌てて駆けつけて来たドワーフ。


「何の騒ぎだ!?」


ヴァルガノンに気づくと…。


「ヴァルガノン殿、大丈夫ですか?」

と近づいていく。


ドワーフを一瞥すると手が黒く染まる。

その手を刃のように使い

ドワーフを斬り裂いていくヴァルガノン。


他のドワーフも駆けつける。


「ヴァルガノン殿、

これはどういうことですかな?」


「……」


何も話さないヴァルガノン、

まるで興味が無いようにも思える。


ヴァルガノンの体中から、

黒い魔力が溢れ出し魔法を唱える。


我が下僕よ、ここへ来たれ。

『カースドゲート』


上空に現れる四つの魔法陣。


「我が下僕よ、この地を闇に染め上げよ!」


そこから現れたのは、

黒い外殻をまとった異形の魔物。


魔物は降下するなり、

ドワーフ達を襲いだす。


そう言い残し、

ヴァルガノンは闇の粒子となり、消えていく。


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