【砂漠の死闘】
日が昇る、宿屋の一階で朝食を
取るヘレナ一行。
「早くエルゼちゃんを助けに行きたいけど
今の私達では危ないんですよね」
「行けるまでどのくらいかかるんだろう…」
「だかワシの予想よりは動けていたからな
Bランクの魔物と戦える程度になれば
いけそうだがの」
「Bランク…」
「今のパーティーで勝てたら行けます?」
「ふむ… 試してみるか?」
一行は朝食を食べ終わるとギルドへ向かった。
さっそく依頼を確認する。
「これかな」
アグニードが手に取ってみせる。
ボーンクロウ Bランク
Lv40 サソリ系
「これくらいは倒せないと遺跡は無理だな」
と言って遺跡を受付で受けるアグニード。
街を出て今度は砂漠の北側に向かう。
「サソリ強そう…」
「エルゼちゃんなら勝てるのかな?」
「ワシが思うにエルゼはちょっと…
いやかなり強いだろう」
「ワシですらエルゼと戦ったことはあるが
勝てなんだからな」
前にエルゼと戦闘した事を思い出すアグニード
あのまま続けてたらアグニードでさえ
死んでいたかもしれない
あれから結構経っているので
今はどれ程強いか
アグニードには想像できなかった。
「下手するとワシでも
もう相手にならんかも…」
「えぇ…」
「そんなに強いのエルゼちゃん?」
実際にエルゼは強かったが
今のエルゼは速さで攪乱させるタイプなので
アグニードには相性も悪いのだ。
最も琴音の時と悠人の時で変わるので
絶対ではないが
スキルが増えて戦闘のバリエーションが
増えたのは明白だろう。
…砂漠に到着する一行。
4人固まってサソリを探す
ばらけると迷うのでとアグニードが
提案したらしい。
しばらく歩くと地面が揺れる。
ゴゴゴゴゴ…
揺れはどんどん強くなる。
「な、何?!」
イリアが慌てて辺りを見回す。
すると前方の砂が盛り上がり
巨大な影が飛び出した。
ドバァァァッ!!
砂煙を巻き上げ現れたのは
黒い外殻を持つ巨大なサソリ。
両腕の鋏は人間ほどの大きさがあり
尾の毒針は槍のように鋭い。
「いたぞ ボーンクロウだ」
とアグニード、そのまま静かに前に出る。
ボーンクロウは四人を見つけると
ガチガチと鋏を鳴らし威嚇した。
巨体とは思えない速度で
突っ込んでくるボーンクロウ。
だがアグニードが前に出る。
ガギィィン!!
鋏を剣で受け止める。
すると横からもう片方の鋏が迫る。
「危ない! アグニードさん」
ヘレナが魔法を詠唱する。
〈ウインドショット〉
風球が鋏に直撃し
わずかに軌道が逸れる。
その隙にアグニードが距離を取った。
「助かったぞ」
「で、でもあまり効いてないみたい…」
その時だった。
シュルルル…
ボーンクロウの尾が持ち上がる。
「毒針来るぞ!」
高速で突き出される毒針
後ろの岩が一撃で砕け散った。
ドゴォッ!!
「うそでしょ…」
「まともに食らえば終わりだな」
アグニードの表情も険しいが
そのまま一気に突進する。
砂を蹴り上げながら突進するアグニード
だが深い砂に足を取られ
踏み込みがわずかに鈍る。
剣がボーンクロウの前脚へ叩き込まれる
がまるで金属を斬ったような感触だった。
そこへ魔法を詠唱する ヘレナとテラ。
〈ファイアボム〉
〈アクアソード〉
ファイアボムがボーンクロウの尾に
直撃し小さな亀裂が入る。
アクアソードは鋏にあたるが弾かれる。
するとボーンクロウは怒ったように
ガチガチと鋏を鳴らし
今度は地面へ潜り始めた。
「潜った?!」
ズゴゴゴゴゴ……
砂の中を高速で移動しているのか
地面が波打つように盛り上がる。
「来るぞ! 散開しろ!」
アグニードが叫ぶ
直後―
ドバァァァァッ!!
ヘレナの真下から
ボーンクロウが飛び出した。
「きゃあっ!」
吹き飛ばされるヘレナに
鋏が迫る。
だがその瞬間
アグニードが無理やり割り込む。
ガギィィン!!
「ぐっ…!」
剣で受けたが
凄まじい衝撃で吹き飛ばされる。
「アグニードさん!」
地面を転がりながらも
何とか立ち上がるアグニード。
ボーンクロウは再び鋏を鳴らし
ゆっくりと距離を詰めてくる。
直後―
シュバァッ!!
毒針が一直線に突き出される。
だが…。
〈ウインドシールド〉
ヘレナが魔法で防ぐが一緒で破壊される…。
アグニードは咄嗟に横へ転がる。
イリアは考える…。
(あの硬さだと普通の矢じゃ効果ないな)
(うーん… あ)
「イリアはボーンクロウの尾を見て
あることに気づく。」
〈爆裂付加〉
矢に爆裂付加して攻撃するイリア。
バギィッ!!
ボーンクロウの尾が弾け飛ぶ。
「ギシャァァァァ!!」
初めてボーンクロウが悲鳴を上げた。
巨体が初めて大きくよろめき
それまで一定だった動きが
明らかに鈍る。
尾を失い苦しむボーンクロウ
だが次の瞬間―
ギギギギギッ!!
怒り狂ったように鋏を地面へ叩きつける。
ドゴォォン!!
砂煙が舞い上がり
視界が一気に悪化する。
すると砂煙の中から
高速で襲いかかるボーンクロウ。
後衛へ下がっていたはずのヘレナに
ボーンクロウが一直線に突っ込む。
ガギィィン!!
ヘレナが鋏で吹き飛ばされる。
「きゃああっ!!」
視界が悪く状況がつかめないアグニード。
「ヘレナ大丈夫か?!」
アグニードの背後から迫るボーンクロウ。
テラも身動きが取れない。
その時…
バギィッ!!
イリアの爆裂矢がボーンクロウに命中する。
「ギシャァァァ!!」
砂が霽れだす。
ヘレナに駆け寄り回復魔法をかけるテラ。
「今のであたしの爆裂矢は最後だから…」
「大丈夫 ボーンクロウもかなり弱ってるはず」
「しかしよく当てたな」
「フフ あたしには視覚強化があるからね」
「尾に亀裂が入ってるのが見えたから
もしかしたら壊せるかなって」
「なるほど!」
何とか立ち上がるヘレナ。
「大丈夫?」
「うん… みんなごめんね」
「みんなちょっといいかしら?」
ヘレナが何かをみんなに伝える。
「わかった」
アグニードがボーンクロウの正面から
突進する。
ヘレナとテラが魔法を詠唱する。
ヘレナのウインドシールドがボーンクロウの前方下に出現する。
ウインドシールドを踏み台に
高く跳び上がったアグニード。
大剣を振りかざす。
「うおおおおおおっ!!」
全力で振り下ろされた一撃。
ガギィィィン!!
鈍い音が響く。
尾を失い弱っているボーンクロウの
頭部外殻に大きな亀裂が走る。
〈アクアウィップ〉
テラがアクアウィップでボーンクロウの左鋏を
しばりとめる。
〈ファイアボム〉
ヘレナが続けざまに頭部に魔法を放つ。
「ギシャアアアアアッ!!」
イリアも〈腕力強化〉して矢を当てる。
連続攻撃を受け
ボーンクロウの巨体が大きくよろめく。
「まだ倒れないの?!」
テラはアクアウィップで必死に左鋏を
抑えている。
「もう一度だ!」
アグニードがさらに大剣を振りかざす。
何度も斬りつける。
ヘレナも魔法を詠唱する。
〈ウインドショット〉
ボーンクロウの動きが止まった。
巨体がぐらりと揺れ――
ドゴォォォン!!
砂漠へ崩れ落ちる。
静まり返る砂漠。
荒い息だけが響く。
「か、勝ったの…?」
ヘレナがその場へ座り込む。
ヘレナの元に駆け寄る三人。
「結構ギリギリだったわね…」
「うん あぶなかったね」
「初めてBランクを倒した…」
エルゼ不在
しかもヘレナ、テラ、イリアは
まだFランク冒険者だ
アグニードがいるとは言っても
Bランク魔物を倒した事実は
彼女達に大きな自信を与えていた。
「遺跡ってこんなのいるの?」
「そうだな だが相性の問題もあるのだから」
「甲殻タイプに魔法と矢だからな そう悲観することもないだろう」
その後、一行はアグニードに乗り
モルビワに帰還する。




