【帝国のダンジョン】
姿が変わった騎士はこちらを見つめる。
「やっぱりあの時の…」
(こうなったらもう助からないわ
楽に殺してあげて)
(いいのか?)
(いいわ どうせ戻せないもの)
戦闘が始まる Aランクの魔物…しかもLvが高い
勇者エルゼでも圧倒できないのだ
だが徐々に押していくエルゼ。
そこに現れる黒いローブの女。
その女が現れた瞬間、
周囲の空気が妙に冷たくなる。
「久しぶりね エルゼちゃん」
(誰だ?)
(アネット・ヴァーミリオン
彼女には気をつけなさい)
ビックノードデスがいきなり動かなり
石化したみたいに固まった。
「ウフフ 中々美味しかったわ」
(なっ?)
「何をした?」
「エルゼちゃん? なんでそんな事聞くの」
「あなたならしってるでしょう?」
「でもあなたが私達を裏切るなんて」
(…裏切る?)
(意味がわからなかった
私はそんなつもりはない)
だがアネットの口ぶりでは、
既にこちらが裏切り者として
扱われているのは理解できた。
「私にあなたを殺す命令が来ないことを
祈ってるわ」
「じゃあね」
最後まで微笑んだまま、
女は闇へ溶けるように消えた。
(結果的に助けてくれたのかな?)
(あの女がそんな事するわけないわ)
(…)
(裏切り者…)
その言葉だけが
妙に頭に残った。
二人は宿屋に向かう。
(このままこの国にいるつもり?)
(琴音がここへ向かってるんだろう? ならここで待つほうがいいさ)
その日の夜 エルゼは宿屋に泊まっている
コンコン
誰かが扉をノックする。
「はーい 何方ですかー?」
「…」
返事がない 恐る恐る扉を開けると
そこには。
「はーい リリー元気だったかい?」
(丁度いいわ 薬について聞いて頂戴)
「えーと お前が作った薬って…」
「おや 何かいつもと感じ違うねぇ」
(リリーのはずなのに、
時々まるで別人みたいに見える
気のせいか?)
「リリー 今君は僕達にとって
裏切り者になってるらしい」
「今日マキシムが私の所へきたの」
「えっ 彼が来たのかい」
(様子がおかしい あの薬はやっぱりこいつが
作った薬だったんだろうか)
「薬の事は君でも話すことはできないな」
「それより僕がここへ来たのは
君が興味を持ってたあの女の事についてなんだ」
「エルゼ?」
「そうそう 彼女を偶然見かけたのをものでね
ちょっと遊んであげたんだよ」
「エルゼに何をした!」
背筋が冷たくなる
嫌な予感が止まらなかった。
ヴァルガノンが驚き固まる。
「えぇ リリーどうかしたのかい?」
「何でもない…」
「ちょっと帝国のダンジョンへ
送ってあげただけさ」
「何人生きて出てくるか楽しみだねぇ」
「今日はそれを伝えに来ただけだよ」
「僕は君の味方だよ」
「って言いたいけど帝国を敵に回すのも
困るんだよね」
そう言うと男は消えた。
「琴音を助けに行く」
そう口にした瞬間
胸の奥が妙にざわついていた。
間に合わないかもしれない。
そんな嫌な予感だけが
頭から離れなかった。
(こんな時間にいくの?)
「ああ」
(好きにすればいいわ)
(帝国のダンジョンってどこにあるんだ?)
(西の方角よ)
(待ってろよ琴音)
脳裏に浮かぶのは
いつも通り笑っていた琴音の顔だった。
もう辺りは暗くなっていた。
西のダンジョンへ急ぐ
エルゼが言うには
あの〈ヴァルガノン〉とか言うやつの
実験場にもなってるらしい
何がいるか分からない
気をつけないとな。
脚力強化をかけているので
そう時間もかからずに
たどり着く。
かなり不気味なダンジョンだ。
(ここはダンジョンとは言っても
人工的に作られた場所だから
内部はそこまで複雑に作られてはないわ)
奥に進んでいく
エルゼの言った通り
内部はほぼ一本道だった
魔物数は多いが…。
5階ほど進むと
ゴゴゴゴゴ… と揺れる
ダンジョン全体が揺れてるかと思えるほどの
激しい揺れだ。
途中…
唖然とする光景が目の前に広がる。
そこには前に戦闘した
〈ノードデス〉が大量にいたのだ。
(これどれだけいるんだ)
鑑定眼発動…
ノードデス アクマ系
Lv40 Aランク
ノードデス達が
まるで軍勢のように通路を埋め尽くす
赤い眼光が一斉にこちらを向いた。
ゾワッ―
肌が粟立つ。
「嘘だろ…」
次の瞬間。
咆哮と共に
百を超える殺意が押し寄せた。
一体ごとの力はエルゼが上
だが差は絶対ではない
それが百体 一瞬でも囲まれれば終わる
エルゼは最初から全力で踏み込んだ。
(くっ、これ相当きついな)
一体倒すのにも
そこそこ時間がかかった
致命傷を負うことはなかったが
かなりダメージはある
体力もやばかった。
(こんな所で…)
剣を握る腕が震え足が重い
結構弱ってはいたが
何とか進んでいく
その後も戦闘はあったが
B〜Dランクがほとんどだった。
奥まてたどり着く
そこには大きな門が。
(ここが最奥かな)
嫌な汗が流れる
胸騒ぎが止まらない
まるでこの先へ進んではいけないと
本能が警告していた
それでもエルゼは
震える手で門へ手をかけ
覚悟を決め開ける
そこには…。




