【二人のエルゼ】
突如として現れたソレイユに
驚き固まる ヘレナは斬られた為
倒れている。
「久しぶりね ヘレナ」
何か様子がおかしいとヘレナ。
よく見ると額に何かが輝いている
黒い宝石のような物体がヘレナの額に
埋まっている。
「いつものソレイユちゃんじゃない」
と言っているといきなり斬りかかってくる
剣で防いで足でソレイユをはじき飛ばし
ヘレナを抱えて外へ飛び出すエルゼ。
家から出てくるソレイユ
外に出ると前に見たマントを着た男のように
体中に青紫の血管みたいなのが
浮き出している。
そのまま向かってくるソレイユに
応戦するエルゼだが
剣と斧が正面からぶつかり、火花が散る
互角に思えたが
エルゼの剣は弾き飛ばされ
本人は後方へ吹き飛ばされた。
(琴音?! 何だあの力は)
禍々しい雰囲気に包まれたソレイユ
通常ならその強さはヘレナと同じ程度のはずだが
吹き飛ばされたエルゼを見て
ソレイユの強さに押し黙る。
(手を抜いて戦える相手じゃないな)
(駄目よ だってソレイユちゃんだよ?!)
琴音は人を殺すことはできないだろう
ましてや今戦っているのは
全く関係ない相手ではないのだから。
(俺に代われ琴音)
悠人は琴音程優しくはない
このまま大事な妹に
何かあれば取り返しがつかない
それなら誰でも殺す覚悟はできているのだ。
(嫌よ そんなの…)
ヘレナも斬られ、ソレイユの雰囲気に
覚悟を決めた悠人だが
琴音は変代わろうとしない。
全力で… 殺すつもりでいけば
勝てただろう、だが琴音にそれはできない
このままなら斬られたヘレナも危ないのだ。
それでも代わろうとしない琴音
悠人にはこうなると何もできない。
エルゼの前に立つソレイユ
次の瞬間エルゼを斬りつける
左腕、右腕、右足――
いたぶるように次々と斬り裂かれる。
「ぁ……っ」
目の前で大好きなエルゼが斬られていく。
「やめてぇぇぇぇっ!!」
テラは震えながら叫ぶ。
涙が溢れ、足から力が抜け
恐怖で動けずにいた。
そのまま倒れ込むエルゼ。
絶望的な状況の中
考える悠人。
(テラじゃ無理だし 何とかする方法がないか)
2人が倒れテラしか残されていない
しかもエルゼの両腕は斬られている
例え今代わっても戦えない。
「さようならエルゼ」
止めを刺そうとするソレイユ。
そこへとんでくる魔法。
ズドォォン。
あと一歩の所で避けられ
魔法は地面に激動した。
「まだ動けるのねヘレナ」
斬られたヘレナだが致命傷ではなかった
それでもソレイユにこれ以上酷いことは
して欲しくないその一心で動いている。
「もう止めてよソレイユちゃん!」
必死に説得を試みるが
反応しない。
その雰囲気や言動が正気ではない事を
悟りながら語りかける。
「ならあなたから先に殺してあげるわ」
とヘレナに近づいてくる。
ヘレナの前に立ち
手に持った斧を振り上げるソレイユ。
それを振り下ろしヘレナにあたる直前で止まる
斧を持つ手がカタカタと震えている。
「なんで動けない?」
ソレイユが慌てている
不気味な雰囲気が少し和らいだように感じる
表情は変わらないが、口だけが動く。
「ごめんね ヘレナちゃん、もう体の自由が
効かないの」
「だから今の内に…私を殺して」
「そんな事できるわけないよ!」
ソレイユの手は震えたまま動かない
必死に抑えてる様子がうかがえる。
もうそれ以上話さない 動きを止めるのが
精一杯なのだろう。
考えるヘレナ、そこへ現れる
ローブの男。
「んん? もとの精神がまだ残っていたのか
〈異界の魔呪〉もまだ不完全か」
「まあ僕の計画でもないけど要改良っと」
「あとはそっちのエルゼちゃんって言ったっけ」
エルゼの方を見つめ笑う男
僕も知らなかったんだけど
君は唯一の成功例みたいなんだよね。
エルゼには何を言っているのか
理解できなかった。
そこに現れるもう1人のローブを着た人物
頭も隠しているので顔も見えない。
「始めまして エルゼ・リリーコーラル」
声は若い女の声だ、だがエルゼには
こちらの世界に知り合いはいない。
こちらの世界に2人が来た時
エルゼの中に入った時に
エルゼの記憶を全部ではないが
見た事は覚えていた。
この大陸の北方の辺境の村で生まれたエルゼ
親は小さい頃に魔物に殺され
村の身寄りのない子供達が集められた施設
孤児院に引き取られ生活していた。
エルゼは才能に満ちていた
剣も魔法の腕も高く子供も時でも
村の大人でさえかなわなかった。
誰よりも強かったが
いつも1人でいた
悠人と、琴音が見た記憶はそこまでだ。
この女はエルゼを知っているようだった
2人の記憶よりあとに出会ったなら
ありえなくもないのだが。
そのあとの言葉に2人は愕然とする。
ローブの女は静かに言った。
「改めて名乗りましょう、私は
エルゼ・リリーコーラル」
(同じ名前?)
意味がわからなく
2人は黙る。
「わかりませんか、そうでしょうね」
「…意味を知りたいなら一緒にきて
頂けますか?」
(琴音 だめだ)
そう言われエルゼは身構える。
「はぁ… なら無理にでも来てもらいましょう」
もう1人のローブのエルゼも武器を取り出す
左手に剣を右手に杖を。
ローブの男もやってきて言った。
「僕とリリー相手に
その状態で何ができる?」




