天龍2
「なんだよこれ!あいつら全部Sなのか!?」
「んな事どっちだっていいだろ。どの道もう終いなんだ。」
「終わりってなんだよ!まさか、タイムってやつか!?」
すると男はおもむろにグランドツリーの方へ指差した。指の先には前にシュガーと見たデジタル掲示板。そこには0時30分の表示が光っている。
「後30分って事か!?」
「いや、体感から推測するに1時間が1日になってるたらなんたら、あのメガネがぬかしてたぜ。後半日ってとこだな。」
そうか、どうせリセットになるなら一か八かって考えるのも頷ける。
恐ろしい勢いで臨戦態勢だった天龍は、ピタリと動きを止めたかと思うと踵を返して地上の方へ降下していく。
「天龍が標的を変えたのか!?アイツらには悪いが囮になって貰おう。あれだけの数だ俺達がグランドツリーに向かうには十分時間を稼いでくれるんじゃないか?」
そう言うと後ろの男は大声で高笑いをすると、今までにない真剣な顔で真っ直ぐ俺を見据えてからこうきりだした。
「お前、グランドツリーに登る気か?」
「あぁ、ここの出口がそこに有るのなら俺は目指すグランドツリーの天辺を。」
「そうか。」
「アンタだってそうなんだろ?こんな最低な事までしても出たいって事か?」
「酷い事、汚い事、醜い事、ありとあらゆる事をしてきた。俺もアイツらも。」
「最低だな!!ここから出たい帰りたいのはよく分かる。だけど傷つけて良い理由にはならないだろ!?それまで捨てたらもう人間じゃない!アンタもアイツらもだ!!」
ドォォォォン!!!
突如として放たれた爆発音は天龍が地面に降り立った音だった。
「その中にお前だけ入らないなんて事があればいいがな。」
「は?それって」
その後は言葉に出来なかった。男がワイバーンの横腹を勢いよく蹴り走らせたからだ。
ワイバーンは高度を少しづつ下げながら加速していく。一直線に飛ぶ先にはグランドツリーが迫っていた。
いける!このままならグランドツリーの天辺に突っこめる!!
その瞬間、男が手網をまたしても強く引き絞った。ワイバーンは失速しつつ上向きに体を反らされる。
咄嗟に俺は叫びを上げ
「なにを」
しかしその声は途中でかき消された
「ごのぐそっだれがぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
怒号と共に更に強く引っ張る様はまるで…
ワイバーンは男を中心にぐるっと後転し、下へ一気に降下。
ガギッッン!!!
後ろから金属を擦り合わせたような音と共に
ギャーーーーーーーー!!!!!
怒り狂った天龍の咆哮がこだまし背筋を凍らせた。
あのまま行っていたら死んでいた。
そして、目の前に広がる光景が俺をより一層の恐怖と絶望へと引きずり込んだ。
地上は正に地獄絵図であった。
さっきまでの騒がしさは嘘かの様に静まりかえり、緑の青々とした芝生は黒黒しく光る赤い色に汚染され、猛烈な悪臭を風が容赦なく浴びせかけてきた。
あの数を一瞬で…
「どうやら怒りで癇癪を起こしてやがるな。面倒な蛇だぜ全く。」
地面への垂直降下で重力を使いブーストをかけている為何とか天龍のスピードを凌いではいるが、怒る天龍はすぐ後ろまで迫っていた。
「どうするんだ!このままじゃ喰われるぞ!!」
男が手網を調整すると、ワイバーンはグランドツリーのスレスレまで近づいた。
「お前、天辺に行くんだったな!」
「今そんな話してる場合か!」
「奴は領地へ侵入した奴だけを狙ってくる。面を見れば分かるだろうが毒蛇だ。牙だけでなく鱗にも毒がありやがる。だから木を登るには奴を引っ張りださなきゃいけねぇわけだ。」
男はワイバーンの背を勢いよく叩いた。
すると、それを合図にワイバーンは自らの尾を切り離した。




