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アンドロイドに転生したプロゲーマーの少女救出ルート攻略記  作者: マフィン


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3/14

詰み

 俺は食器棚から皿を取り出した。自分がいる場所から食器棚の中の皿までの位置が、ただ腕を伸ばしただけではとても届かない距離だったはずなのに、苦戦することなく手に取ることができたのは、もはやどうでも良い。


 俺は手に取った平皿にお湯でふやかされて少し曲がり始めたパスタをのせ、その上にミートソースをかけながら、朝食を出すだけならミートソースだけで良かったのでは?と考えていた。


 「お母さんごめんなさい!」


 クレアの泣き叫ぶ声が聞こえる。反省会はまた今度にしよう。今の雰囲気ならまだ間に合うだろう。


 俺はクレアに朝食を持っていくことを口実に、彼女の部屋に突撃した。


 「クレア様、朝ごはんですよ」


 あれ?今俺が言ったのか?それに、今何かにぶつかったような気がする。だが、視界にはクレアしか映っていない。こちらを見る彼女の目の奥には、まだ恐怖の色が色濃く出ていた。


 「心拍数と血圧の上昇。脳からアドレナリンが分泌中」


 どうやら俺の目に埋め込まれている解析機能も、俺と同じ解析結果を出したようだ。


 だが、よくよく彼女を観察するとその恐怖の目はこちらを見ているわけではなかった。俺の後ろか?そしてその視線がゆっくりと上に上がっていく。


 嫌な予感・・・。俺は振り向いた。


 「この粗大ゴミが!ロボットの分際で一体何様のつもりよ!」


 そう叫ぶアビーの右手には、ベルトのようなものが半分に折りたたまれて握られている。まさか、それでこの子を?


 俺は真っ先に彼女の身体を調べようと思考に働きかけた。すると、俺の視界にはコンピューターの解析ソフトのように、彼女の身体のいろんな箇所に的のようなものが浮かび上がると、「複数の外傷を確認」と言う文字で埋め尽くされた。


 どの傷もつけられてからから数日が経っているものばかりだ。


 これが何を意味するのか?少なくとも、今日はまだあのベルトで叩かれているわけではないようだ。


 とりあえず、どうにか彼女を守ることに関しては間に合った俺は、この状況からどう彼女を助け出すためにはどうすれば良いのか?これが次のミッションってやつなのか?


 だがやることリストみたいなところにそんなミッションは出てこない。かと言って別に何かするべきことも指示されているわけでもない。


 あとは自分の意思でこの最高級のボディを動かすことができれば良いのだが……。


 俺は普通通りに右足を動かしてみる。


 すると今度は余裕で動かすことができた。


 「召し上がれ」


 俺はまた無意識にクレアに語りかけると、頭を優しく撫でていた。


 「どう言うつもりだお前!私からその子を奪うつもりかい?」


 アビーのライオンのような視線がこちらを睨みつけている。相変わらず彼女をみると、俺の視界には犯罪歴と借金の金額、そして結婚歴まで出てきた。やっぱりこのおばさん、バツイチだ。


 まぁバツイチでも俺からしたら、少ないような気もするが、よくもまぁこんなおばさんみたいな三十路近くの女と結婚したやつがいたものだ。


 いや待てよ!だとしたら、クレアを産んだのは彼女が19歳の時・・・。


 なんかだんだんとこのゲームの話がわかってきた気がする。


 「美味しいですかクレア様」


 俺はなぜか能天気にクレアに朝食の味を聞いている。味を聞くよりも先に食えるかどうかを聞くべきな気もするが・・・。


 だが、クレアは一口もパスタを口に運ぶことはなかった。それは美味しくなさそうだからではない。その原因を俺は視界に出てきた緊急を知らせる赤文字の表記ですぐに気がつくことができた。


 俺は身軽にアビーの攻撃を避けると、彼女の方を見た。


 「どうかなさいましたか?アビー様」


 俺のいまの言葉は完全に相手を煽っている。


 「どうもこうもないわよ。もしかしてあんた壊れたね?そうやって修理に出してもすぐに壊れて修理代を稼ごうっていう魂胆でしょ?まったく小賢しい商売だねぇ」


 そう言いながら、彼女は俺にもう一度ベルトを叩きつけた。また警告表示が出ると、それと同時にクレアの叫び声も聞こえてきた。


 「やめて!」


 彼女の大きな身体を小さな身体で抑えようと、必死にアビーの腕にしがみついている。


 「何よ!もうあんたもこのがらくたの言いなりなのかい!」


 アビーはそう叫ぶと、クレアを部屋の隅へと突き飛ばした。あまりに勢いよく床に叩きつけられたクレアはその場で咳き込みながら倒れてしまった。


 バイタルは異常ない。俺は彼女を止めようと、身体を動かした。しかし、まだ大きな身体の動きを自在にできるわけではなかった。ということは全てのミッションを終えても、俺に自由がないのか?結局俺は、どうやってこの子を助けたらいいのだろうか?


 そんなことを考えていると、今度は腹のあたりに衝撃を感じた。俺はどこで何を間違えてしまったのだろうか?これはかなりのタイムロスだ。いやそれどころか、もう詰んでしまったに近いだろうか?


 俺の視界にはさっきよりも遠くの位置で咳き込んでいるクレアの姿と、鞭のようにベルトをゆらゆらと揺らしているアビーの姿が横向きに写っている。


 やり直すのならどこからやり直せばいいのだろうか?だが、どんなに考えても、どんなにやり直そうとしても、どうしていいのかわからない。


 俺はこのまま彼女がベルトで叩かれるところを見なければならないのだろうか?なんて酷なことをするゲームなのだろうか・・・。

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