第11飯 チキン南蛮
申し訳ございません。
昨日の投稿を間違えていました。
「ふるーつばすけっと?」
翌朝。ちゃぶ台の向かいで、ヴィヴィが焼き鳥の残りをつついていた。朝から焼き鳥。しかも昨日あれだけ食っておいてまだ食う。
「アイドル探索者グループだよ。巷で人気の」
俺はスマホの記事を、ヴィヴィに見せてやった。『アイドル探索者グループ FRUITS BASKET が渋家ダンジョンに挑戦!』の見出しと、五人の少女が並んだ写真。
「あいどる?」
「歌ったり踊ったりして人気を集める仕事だ。……で、このグループは探索者もやってる。両方やってるから話題になってるらしい」
「ほう。そんなのがおるのか」
ヴィヴィが、興味なさそうに焼き鳥をかじる。
「で、どうするのじゃ?」
「どうもこうも。やることは変わらん」
俺は指を折って数えた。
「一つ、飯になるモンスターを狩る。二つ、配信をする。三つ、ボスを倒して魔剣を取る。以上だ」
「あいどるは?」
「無視だ。向こうも仕事で来てるんだろうし、こっちはこっちで忙しい」
そもそも、あっちは事務所がついたプロで、こっちは飯を撮ってるだけの個人配信者だ。住む世界が違う。関わることもないだろう。
「うむ。では飯じゃな」
「そこは変わらんな、お前」
こうして俺たちの渋家ダンジョン周回が始まった。
◇
結論から言うと。
五日経っても、魔剣は出なかった。
ダンジョンは一日に一度、中身がまるごとリセットされる。倒したボスも、狩ったモンスターも、翌日にはまた元通り現れる。壁に穴を開けても、一日経てば塞がっている。だから周回のペースは一日一周。それ以上は狩れない。
つまり五日通って、メガガルーダを五回倒した。それだけやってまだドロップなし。
「なあヴィヴィ。これ本当に出るのか?」
「知らんわ。わしのせいではないぞ」
三日目あたりから、ボス戦は完全に作業になっていた。頂上まで飛ぶ。サイクロンをロックで防ぐ。ふところに入ってショックかバースト。終わり。所要時間、三分。カップ麺かよ。
最近はシフトで飛ぶのも慣れてきたからバーストも当たる。
普段なら高難易度のボスでも、こうも簡単に倒していると慣れたようだ。
配信においてもこの状況をすでに受け入れている。なお、冒険者ランクはE→Dになった。
>今日も三分クッキング
>ボス戦が日常業務になってて草
>メガガルーダが可哀想になってきた
>ダンジョンボスを簡単に倒せる配信はここだけです!
>冒険者ランクの上昇スピードが異常
>ニキ、Dになったんだっけ?
>短剣ニキ、今日で何回目?
>五回目です
道中のガルーダはそれなりに狩った。こっちは群れで出てくるから、いくらでも肉が手に入る。
正直メガガルーダと比べたら肉質がおちるからほとんど拾わない。魔石とか素材だけ大雑把に切ってインベントリにしまう。
メガガルーダだけは持ち帰って、あとは素材として売る。食べれるところは分けてもらう。
貴重なメガガルーダの納品もさすがに過剰供給気味か? 渋家ギルドの田中さんも三日目からは、またですか……とため息をつき出した。しゃあない。
◇
ここ数日は鶏肉料理のオンパレードだった。
一日目 唐揚げ。
マヨネーズ、レモン、塩、しょうゆ、色々な味のバリエーションを出してみた。そもそもヴィヴィは唐揚げが大好物のため、黙ってても食べまくる。
「うま、うま」とどこぞのカレー好きみたいに頬を真っ赤にして平らげていた。
二日目 トマト煮 野菜とトマトと鶏肉を煮込んだ簡単料理だ。大量に作れるしヘルシーで上手い。大味が好きなヴィヴィは野菜があってもおいしく食べれたようだ。おれの健康にもよい。
とまぁ、こんな感じで三日目、四日目も鶏肉料理が続いた。
本日の五日目の配信は、チキン南蛮だった。
ガルーダのモモ肉に衣をつけて、からりと揚げる。それを甘酢にくぐらせて、自家製のタルタルソースをたっぷりとかける。
ゆで卵と玉ねぎを刻んで、マヨネーズと少しの酢で和えたやつだ。
「ほれ、できたぞ」
「おおおっ、これは……!」
黄金色の衣に、白いタルタルがとろりとかかっている。ヴィヴィが箸を突き刺して、大きな一切れを口に運んだ。
「んんっ! 甘い! 酸っぱい! でもころもがさくさくで、中の肉はじゅわっとしとる! なんじゃこの、三重の攻撃は!」
「甘酢とタルタルで味が二重になるからな。揚げ物なのに、さっぱり食える」
>チキン南蛮とかずるい
>タルタル自作は勝ち組
>ヴィヴィアンちゃんの語彙が独特で好き
>深夜に見るもんじゃなかった
>もうこの料理配信ならぬ飯テロ配信を毎日楽しみにしてる
>わかる、苦しいがわかる
毎日違う料理を作って配信する。おかげでチャンネルの登録者はじわじわと増えている。
だが。
「……のう、下僕」
ヴィヴィがぽつりと言った。
「わし、ちょっとだけ……鶏に飽きてきた気がするのじゃ」
「奇遇だな。俺もだ」
贅沢ぅ、ついに言いやがった。この何でも食う大食い魔王が。まあ、六日連続で鶏だ。無理もないか……俺だってそろそろ違うものが食いたい。
「よし。じゃあ明日は、ちょっと刺激的な料理にするか」
「刺激的?」
「ああ楽しみにしてろ」
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ここまでお読みいただきありがとうございます。
本日はもう一話、7:20に更新予定です!
そちらもよろしくお願いします。




