第八話 たぬき娘の決意
毎日18時更新
こちらは、外伝となっております。
気になる方は、本編の『菊理姫様!お導きを!』〜アラフォー領主ですが、引退したいので伝説の姫巫女を育てます〜もご覧になってください。
次に連れてこられたのは、コンテナが並ぶ港だった。
「こっちネ!」茜茜の声が聞こえる。
バタバタと走る音が聞こえる。
櫻子達が走っている。
「ここよ!」コンテナの扉を開ける。
中には、亜人の子供達がいた。
ブルブルと震えている。
その中に他の者より年上のたぬきの亜人がいる。
なぎさだ。
「大丈夫だ。私は、伝達者だ。」櫻子が手を出す。
なぎさがその手を叩き落とす。
「なっ何が伝達者や!私ら騙したのそっちやん!」なぎさが涙目で訴える。
「伝達者言うから、着いて行ったら縛られてここに連れてこられたんやで!」もう一人のたぬきの亜人のなみが言う。
櫻子が、神器のハサミをなぎさ達の拘束を解く。
「私が、信用できないなら、そのハサミで私の心臓を突け。」櫻子がハサミをなぎさに渡す。
「でも、仲間が‥。」なぎさが小さく言いヒロ達をみる。
櫻子はヒロを見る。
ヒロは、腰のホルスターからハンドガンを抜き、グリップをなぎさ達へ向け差し出した。
「撃ちたければ撃てばええ。」
「この人達は、本物ヨ!その伝達者の身分証ちゃんと見たか?」茜茜がなぎさ達に言う。
「私たち‥。文字読めやん。」
「その文字読めないのどうにかしないとまた騙されるヨ‥。」
「ごめんなさい。」なぎさがハサミを下す。
「怖かったんやな。」なぎさの頭を櫻子が優しく撫でた。
また、マーブル状の世界だ。
亜人の里だ。うちの知っている亜人の里と同じで大和風の低い家々が立ち並び、人々は和洋折衷の服装をしている。
亜人の子供達はなぎさを中心に櫻子の周りをぴょんぴょんしてる。
櫻子に会うのが楽しそうだ。
櫻子がベンチに腰を下すと子供達が列を作って紙を差し出す。
そこに櫻子が赤ペンで採点している。
どうやら宿題を提出してるようだ。
それを尻目にヒロが違う建物に入る。
うちは、ヒロに着いて行く。
中では、男の亜人達が何やら難しい顔をしている。
「あんたらが、うちの里でよくしてくれるのはわかる。でも、これ以上悪目立ちしてお上に目をつけられるのも嫌なんや。」熊の亜人が腕を組みながら話す。
「なんや。誰か来たんか?」ヒロがだるそうに話す。
「櫻子さんとは違う伝達者言うてたわ。字が読める者が確認したけど確かに伝達者と書いておった。」犬の亜人が顔の前に手を組んで話す。
「最近、女みたいななよちい奴入ってきたが、そいつなんて言ったん?」ヒロが面倒そうに話す。
「回りくどく、お上の了承しない事をするなと。代弁者のように言っていましたわ。」うさぎの亜人が言う。
「なんそれ、偉そうやの。その場に俺がおったら一発ぶちかましてるわ!」ヒロの言葉に皆が笑う。
そこにノックが聞こえる。
「失礼する。」と櫻子が入ってきた。
「何やら殴るとか物騒やね。あまり、荒い言葉遣いは控えてほしいのだけど。」櫻子がヒロに注意しながら席に座る。
「櫻子さん。わしら迷ってんねん。自警団を抜けるか、どうするか。」たぬきの亜人の長老が話をする。
「子供達の事もある。結界を張って一時里ごもりしようかと思うんや。」長老が続けた。
「私は、そちらの決断には口は出せない。そう、決まったなら仕方がないだろう。」櫻子が目を伏せる。
「隠れるん?」少女の声が聞こえる。
戸口になぎさが立っている。
「なぎさ。大人の話や。あっちに行ってなさい。」長老が嗜める。
「いやや!里ごもりするって事は櫻子さん来れないやん!それに!逃げてばかりで嫌や!」両手を強く握りしめ力一杯話すなぎさ。
その様子をため息混じりで長老が見る。
「逃げるのではない。守るのだ。わしは、また、お前達を失いたくない。櫻子さんが、助けてくれたが、危なかったやんぞ。」
不意に櫻子が席から立ち上がる。
「なぎさ。何も一生会えなくなるわけやない。状況が落ち着いたらまた遊びに来るから。」
櫻子が優しく頭を撫でる。
「その落ち着くっていつですか?」涙目になりながらなぎさが話す。
返答に困ってるのか櫻子は言葉を発しない。
ダッとなぎさが駆け出していく。
うちは、なぎさの後を追う。
なぎさは、美久と手合わせをしてる。
獲物である大斧を感情的に振り回してる。太刀筋がメチャクチャだ。
「なぎちゃん。今日は、辞めようや。うちが怪我する。」なぎさの斧を双剣で交わしながら美久が話した。
ドサリと大斧を落とす。
「私が弱いからや!しかもアホと来た!」なぎさの頬に涙が伝う。
「なぎちゃんはアホちゃうやん。櫻子さん来てから同世代では一番字が読めるやろ。」美久がなぎさの肩に手をやり慰める。
「里の中だけじゃアカン。私決めた!里ごもりの前に里を出る!そして、勉強する!」なぎさが顔をあげる。
「そんな事言うてもどうやって…。」
そんな会話が遠のく。
また、絵の具が水に溶けるみたいに景色が歪んでいった。




