第七十三話 鉾鈴の神楽
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こちらは、外伝となっております。
気になる方は、本編の『菊理姫様!お導きを!』〜定時で帰りたい領主は、今日も魔法犯罪に追われます。〜もご覧になってください。
高天原の空は、抜けるよに青く
様々な色の魔素が溶けて漂う。
金色と白銀の龍の鱗が、時折チラチラ見える。
視線を湖に移す。
美しく透き通った水が風に揺れる。
呼吸をするように玉砂利の湖畔に清らかな水が押し寄せる。
静かにゆっくりと湖に神楽殿が現れる。
反対側を見ると岩戸から無数の糸が見える。
うちは、その中にとても細く今にも切れそうな糸が地面スレスレに繋がっているのを見た。
“櫻子の糸”だ。
そう直感で思った。
神器の鉾鈴に魔力を込める。
リン。
鈴が鳴る。
ーーーその刹那。
神楽殿にうちは居た。
やることがわかる。
鉾鈴の柄から垂れている五色の緒にそっと左手を添える。
魔力を込める。
お囃子が流れる。
聞いたことがないお囃子だ。
しかし、舞える。
うちは祈りを込めながら足を動かす。
荘厳な声が聞こえる。
『千の思いと萬の生きし御霊』
りん。
鉾鈴を鳴らす。
五色の緒をゆっくり動かす。
『裂けていった御霊の祈りが届くように』
鉾鈴と五色の緒を天に掲げ魔力を流し、鈴を鳴らす。
雨が降りはじめた。
禊の雨だ。
雨が人々の糸に降り注ぐ。
『御霊は則ち天下の神物なり』
五色の緒を離すと神器がもう一つ現れた。
扇だ。
菊と波の紋様が描かれた扇。
うちは、その扇と鉾鈴を使って神楽を奉納する。
『八百万の声を救いたまえ 御霊は則ち静め鎮まることを掌るべし』
りん。
鉾鈴を鳴らし、扇から風を巻き上げる。
うちに櫻子が見えた。
櫻子と櫻子を繋ぐ糸が煌めく。
もう一人の櫻子と目が合った気がする。
その櫻子は糸を見るとハサミをしまう。
そのハサミに狸のマスコットが括られている。
そうして、ヒロを見る。
『心神が傷ましくある時 その御霊に禊の雨降らんことを』
お囃子の声が強くなる。
岩戸から出ている糸に光が満ちる。
再び櫻子が見えた。
もう一人の櫻子は、ヒロがお茶を入れているところを見てる。
そっと二人の櫻子が一人になった。
「ほい。ルイボスティー。これで最後かもな…。貿易ストップやって。やっぱり魔法を受け入れん所もあるな。」そう言ってヒロは櫻子にお茶を差し出す。
櫻子は自らの手でカップを持ち上げる。
そうして一口飲む。
「美味しい。ありがとう。ヒロ。」その目に少しばかり光が入る。
ヒロは、その目を見て櫻子を強く抱きしめた。
りん。
魔力を込めて鉾鈴を鳴らす。
次に友香里が見えた。
「おえぇぇ。」友香里は、口に手を入れて便器に向かって吐いている。
側仕えが必死に友香里の背を摩ってる。
そんな友香里に禊の雨が降りそそぐ。
友香里の呼吸が落ち着いてくる。
「安住…。ありがとう…。」小さく礼を言う友香里。
「冬馬…。冬馬を連れてきて。」
「よろしいのですか?」
「うん。冬馬に謝らないと…。仕事全部任せきりやったし…。」
「かしこまりました。」泣き出しそうな側仕えが走り出す。
りん。
鉾鈴を鳴らし、扇で舞う。
豊富が見えた。
豊富の側に茜茜がいる。
豊富はベッドで寝てる。
そんな二人に禊の雨が降りそそいだ。
「茜茜。」
「何ネ?アレやるか?」耳をへにゃんと折り曲げた茜茜が聞く。
「えぇ。魔道具で。それに…。そんな顔するなや。」そう言って茜茜の頬に手を置く豊富。
二人がゆっくり接吻をする。
りん。
鉾鈴の鈴の音が、より一層大きくなる。
『高天原と葦原中国の狭間で生きるは
現世で痛みに狂う この時に清く潔きことあり』




