第七十二話 切れゆく糸と鈴の音
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こちらは、外伝となっております。
気になる方は、本編の『菊理姫様!お導きを!』〜定時で帰りたい領主は、今日も魔法犯罪に追われます。〜もご覧になってください。
次にやって来たのは自宅のリビングだ。
櫻子が部屋着で髪の毛はボサボサ。
クッションを抱えてソファに座り、猫のラーメン屋の話を観ている。
そこへヒロがやってきた。
「それ何回目よ。」櫻子にお茶を差し出した。
「……。」無言の櫻子。
「散歩だけでも。メリーさん来てくれへんって拗ねてるで。」
「休んでいるのに遊んでいたらあかんやん。」
「ラビリンス運営の下見ってことにしようや。」
「嫌や。」
「そうかい…。」
そうして、泣く場面でもないのに涙をとめどなく流す櫻子。
「また…目が壊れた。」ボソリと話す。
「せやな…。ヒーラーの先生に話そう。」ヒロはそう言って櫻子の隣に座り頭を抱き寄せた。
それを醒めた目で見ているもう一人の櫻子。
糸がさらに細くなっている。
次に来たのは、真っ暗な部屋だ。
ソファに櫻子が座っている。
「なんや…。ベッドで寝ようや。」ヒロが手を差し伸べる。
振り払う櫻子。
「散歩行ってくる。」玄関を出ようとする櫻子。
「俺も行くから待ちい。」
「嫌や。一人がいい。」
櫻子が玄関を出る。
ヒロは、櫻子に気がつかれないように後を追う。
虚な目で街を見る櫻子。
復興が進んでいるのか建設途中の建物が目立つ。
コンビニに入る。
ハイボールを買う。
飲みながら歩く櫻子。
ヒロが頭を掻きながらタバコに火をつけた。
そんなヒロの様子を見た、もう一人の櫻子がハサミを出す。
ゆっくり
ゆっくり
糸に近づく。
ジョキン!と糸を切る。
しかし、糸は切れない。
細かった糸がさらに細くなる。
場面が変わる。
ベッドの上で友香里が布団にくるまっている。
「仕事しなきゃ。助けなきゃ。でも、汚い。」ぶつぶつと話している。
そんな様子を側使えが涙を流しながら見ている。
友香里の体が二重になっている。
ーーーまさか!
『……この者も魂が離れようとしている。』白馬が静かに話した。
また場面が変わる。
豊富が暴れてる。
「翔太郎!大丈夫ネ!もう、終わったんよ!」
神器をめちゃくちゃに振り回す豊富。
「っ!っ!」豊富の顔は真っ赤で焦点がおかしい。
「あの女は何処や!」
「もう、死んだネ!櫻子が倒したヨ!」
「伊達先輩!」
そこで、豊富が茜茜を見る。
ゆっくりと落ち着く豊富。
「……茜茜…すまん。俺。」
豊富の体も二重になりつつある。
次に見えて来たのは、自宅のリビングだ。
櫻子の服が長袖になり、カーディガンを羽織っている。
櫻子はもう何もしていない。
ただ、虚空を見つめて座っているだけだ。
生きているのかすらわからない。
ヒロが朝食の準備をしている。
櫻子の糸は触れたら今にも切れそうなぐらい細い。
チャイムが鳴る。
なぎさが入ってきた。
「朝早くからすまんな。」ヒロの顔に疲れが見える。
「私は、大丈夫ですよ。朝ごはん食べました?」なぎさが話す。
「まだや…。」
「じゃ、私と交代しましょう!大夢さんは、モーニングにでも行ってきてください。タバコも吸いたいでしょ!」なぎさが元気に言う。
「おおきに。じゃ、甘えさせてもらうわ。」そう言って家を出ていくヒロ。
そんなヒロをもう一人の櫻子が見てーーー。
ハサミを取り出す。
糸を見る。
ゆっくり。
ゆっくり。
近づくハサミ。
「あかん!それ以上は!」うちが叫ぶ!
櫻子の手が止まる。
櫻子がうちと白馬を見た。
『よし!行くぞ!』
そう言うと白馬が駆けていく。
絵の具を垂らしたような世界を突き進み山の頂上へ行く。
そこには、岩戸があった。
ーーーリン。
うちの腰に下げていた神器が光る。
神器が浮き上がり、うちの目の前に来る。
手を差し出す。
形を成した。
うちの神器は「鉾鈴」だった。




