第六十八話 全てを覆い隠す冬
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こちらは、外伝となっております。
気になる方は、本編の『菊理姫様!お導きを!』〜定時で帰りたい領主は、今日も魔法犯罪に追われます。〜もご覧になってください。
北京町では、敵の殲滅が進んでいた。
永喜軍のほとんど者が降伏し、武器を取り上げられて項垂れている。
その様子を上野と丸山が事務的に処理する。
「あとは、永喜王朝に引き渡して…国で裁いてもらうだけや。」丸山が一人一人の名簿を見ながら話す。
「受け取ってくれるんか?」上野が眉を顰める。
「そん時の対応は、俺らの仕事ちゃう。」冷静に丸山が話す。
「丸山一佐!確認したい事がございます!」一人の魔術師が声をかけてきた。
丸山がその場を離れる。
「上野さん!」そこになみがやってきた。
「なみかどないしたん?」
その時、亜人のなみの姿を苦々しく見た兵士が一人。
隠し持っていた手榴弾をなみに投げつけた。
上野がなみを突き飛ばす。
手榴弾の上に覆い被さる上野。
「目を塞げ!」なみに向かって叫ぶ上野。
爆風・爆音
キーンとして金属音しか聞こえてこないなみの耳。
血まみれで倒れる上野。
なみの目が揺れ
「上野さーん!」喉から声が出たはずなのになみの耳には届かない。
複数の兵士が駆け寄る。
なみに声をかけるが、聞こえない。
衛生兵に抱えられる上野。
そんな北京町に季節外れの雪が降り注いだ。
神辺タワーの下は猛吹雪で前も見えぬほどだ。
「あかん。櫻。」ヒロが手首の魔道具を使いながら話す。
あれは、菊理姫様の糸で編んだ組紐だ。
いつもヒロがつけている。
“お守りや”と話していた。
「払いたまえ…清めたまえ…。」弱々しく詠唱するヒロ。
「田中先輩も禊するんですかぁ?」アレクが注射器を突き立てようとする。
『絶対零度』櫻子の重々しい声と共にアレクの両腕が氷漬けになる。
櫻子の目は黒目だけになっていた。
髪の毛一本一本。皮膚・爪先。
全てに魔素が満ちている。
櫻子は、神辺の大地から魔素を引き上げている。
これはーーー。
「櫻子!あかん!」届かないとわかっていたが、うちは叫ぶにはいられない。
これでは、櫻子が“なりそこない”になってしまう。
『櫻子の心と同化するぞ。』白馬が静かに言う。
ーーーあぁ、やっぱり私は、バケモノだ。
ーーーもう、戻れない。
ハサミを振り上げる。
雉に向かって切り掛かる。
ニヤリと笑った雉がいつものように背後をとった。
櫻子に注射器を突き立てようとーーー。
しかし、櫻子が自分の背後にハサミを突き立てた。
雉の心臓を櫻子のハサミが捉える。
驚く雉の口から血が流れる。
『氷結』
雉の体が氷に包まれる。
ドンっと氷塊が落ちる。
「これはやばい。逃げるぞ。」劉がアレクに声をかける。
『させない。』櫻子が高速で二人に切り掛かる。
二人も負けじと必死に逃げる。
そんな様子をヒロが禊をしながら見ている。
なんとか魔石化しないように必死だ。
「…櫻。あかん。」苦しそうに呟くヒロ。
チャリン。
ヒロの狐のマスコットが揺れた。
劉とアレクが影に入ろうとするが、櫻子がそれを阻止してる。
ーーーやっぱりだ。やっぱり。こうなったんだ。
ーーー私は、不気味なバケモノだから、きっと“なりそこない”になると母が言っていたが当たったな。
櫻子は、アレクが影に入らないようにハサミを突き立てた。
チャリン。
狸のマスコットが櫻子の目に入る。
ーーー初めてだった。
ーーー何者でもない私を見てくれた。
ーーー戦場を駆ける須佐之男命の神器を持つ父の娘でも。
ーーー同じく戦場をかけた“戦少女”でも
ーーーヒロは私をだたの櫻って。
劉が大刀を突き立てる。
『絶対零度』
大刀が砕け散る。
櫻子の髪の毛の先が白く染まり始める。
肌も人の色が失われ雪のように白くなってきた。
櫻子の“なりそこない”化がはじまる。
「櫻!戻ってこい!あかん!」櫻子の様子を苦しそうに見つめるヒロ。
「そのままだと“神のなりそこない”になってまう。」ヒロが櫻子の緋色の軍服に向かって雪をかき分けて進む。
チャリン。
ヒロのマスコットが音をたてた。
櫻子が舞うようにハサミを突き立てる。
チャリン。
また、狸のマスコットが櫻子の目の前を通り過ぎる。
ーーー楽しかったな。
櫻子の記憶が流れた。
コンビニのキャラクタークジを見ている櫻子。
そこへタバコを買ったヒロが来る。
「何?アンタこんなの好きなの?」バカにしたような言い方のヒロ
無言で立ち去る櫻子。
その様子を見て肩をすくめるヒロが一枚くじを引く。
タバコを吸っている櫻子。
「手出してみぃ。」ヒロが櫻子にいう。
小首を傾げて手を出す櫻子。
「ほい。」
櫻子の手の中に狸のマスコットを差し出すヒロ。
「アンタに似てるやん。もっとき。」ヒロがタバコに火をつける。
「私が狸って言いたいの?」
「可愛いって言ってるんや。二つでセットだから、俺はこの狐持っとるな。バディだし。」
そう言って狐のマスコットを揺らした。
目の前が真っ白な雪に変わる。
アレクと劉の顔に焦りが見える。
櫻子が、詠唱を始めた。
黒目の中に赤い瞳が生まれる。
ーーーあかん。あの詠唱は…。




