第六十四話 殲滅のマーチ
毎日18時更新
こちらは、外伝となっております。
気になる方は、本編の『菊理姫様!お導きを!』〜定時で帰りたい領主は、今日も魔法犯罪に追われます。〜もご覧になってください。
※本日の更新時間変更によ18時からの投稿はないです。
ヒロがダンジョンの秘密基地にいた。
しかし、櫻子はいない。
ダンジョンの壁に魔力を流す。
隠し部屋の扉が現れ、ヒロは中へ入る。
中は工房になっていた。
工房の机の上に自宅の鍵を取り出す。
ヒロの鍵には狐のマスコットが付けられていた。
ヒロは、そのマスコットを取る。
そして、引き出しを開けると菊理姫様の糸を取り出した。
櫻子はいつもヒロに菊理姫様の糸を預けている。
魔力を込めたナイフでその糸を切るヒロ。
腰に巻いているベルトを外す。
そのベルトに狐のマスコットを括る。
そうして、部屋を出た。
部屋を出ると櫻子がソファに座っていた。
「櫻、おったんか?」ヒロが声をかける。
「ヒロもいたの?」
櫻子の目からは涙が溢れていた。
しかし、無表情だ。
櫻子の人形のような顔から涙だけがとめどなく流れている。
櫻子を抱きしめるヒロ。
「一人にしてすまん。」
「ヒロあったかいね。」
ヒロを抱き返す櫻子。
「あのね。悲しくないの。」
「でも、涙が出るの。」
「目……病気になっちゃた。」
「でもね。回復魔法も回復薬も効かないの。」
「明日も仕事なの。」
「ヒーラーの先生診てくれるかな?」
ヒロが櫻子を強く抱きしめた。
「せやな…。診てもらおう…。」
二人が抱き合っている姿が滲み。
違う景色が見えてきた。
太陽の君の執務室にやってきた。
高級な飴色に磨かれた机。
太陽の君が大元帥の御軍服を着ている。
……それも、緋色だ。
太陽の君の前には九条と近衛がいた。
「永喜王朝は、ファーリー製薬会社の現社長をテロリストとして逮捕したとな…。」
「御意。しかし、修は逃げました…。」下を向きながら悔しそうにする九条。
「それに…。大和にいる軍隊のような者達は、永喜王朝と関係ないので…。処分してよいと…。」近衛が苦しそうに話す。
「なるべく…血が流れぬ様にしたいな…。」太陽の君の目が揺らぐ。
「……櫻子の様子はどうだ?」九条に尋ねる。
「鬱状態だと…。」
「私は、亡き友から怒られような…。」そこで静かに目を閉じる。
飴色の机に太陽の君の顔が映し出された。
反射してうちの顔と白馬が映る。
「これは、九条に話しているのだ。」
九条が訝しむ。
「櫻子の主神、菊理姫様は、白馬に乗り、白山頂上まで来たれと神託を残したという。」机ごしに話す太陽の君。
「…帝?」九条の呟きが執務室に溶ける。
「其方は、櫻子と関係がある者であるか?どうなのか…。今の朕にはわからない。」
うちは白馬の手綱をギュッと握る。
白馬を見る。
動じてない。
大丈夫なのだろう。
「……でも、幼き頃の…。尚人に抱かれて笑っているような櫻子と同じ眼の其方は、きっと櫻子と関係があって、櫻子を救ってくれるのであろうな…。」太陽の君の目が揺れる。
「その時は、よろしくお願いもうす。」
この人も…。
太陽の君という責務を課された…。
一人の人間なのだろう。
うちの目から涙が伝う。
白馬が動く。
太陽の君が遠のいた。
次に見えてきた景色は徳田が日本刀を持ちながら海上に浮かぶ船を見ていた。
隊列を組んで軍艦を眺める。
ここは、帝都だろうか?
港の様な所だ。
風が強い。
新聞紙がうちの前に飛んできた。
【聖女の英雄譚!激震が止まらない!】見出しが書かれてる。
日付は2021年8月6日。
「伊能、こちら徳田、時刻確認を送れ。」徳田が首元に魔力を込めながら話す。
「こちら伊能、現在時刻○八一五。」
「これより、作戦を決行する。」そう一言話し。
大きく息を吸うと喉元の魔道具に魔力を込めて話す。
「こちら大和軍!永喜王朝の軍になりすましているテロリストに告ぐ、ただちに武器を置いて投降せよ。」
「こちら永喜王朝軍!我々は、テロリストではない!其方こそ抵抗をやめ!一般市民を解放せよ!」
相手の軍艦から声明が聞こえた。
「うまくいかぬな。」徳田が呟く。
「総員!撃て!」
そこで、魔術師部隊が一斉に魔法を放つ。
無数の光が海面を裂き、軍艦へと叩き込まれた。
景色が変わる。
神辺タワーの下に隊列組んだ櫻子が居る。
全員、人工島を見ている。
櫻子の隊列には、緋色の軍人と自衛官以外にも天狗や鬼の部隊もいる。
海上には海坊主も構えている。
そして、亜人の部隊もいる。
なぎさとなみが軍服を着ている。
櫻子の隣にはヒロがいる。
櫻子瞳は少しばかり色づいていた。
「日付と時間を」短くヒロに尋ねる。
「8月9日。11時。」
櫻子が大きく息を吸う。
「こちら大和軍!永喜王朝の軍になりすましているテロリストに告ぐ、ただちに武器を置いて投降せよ。」
「こちら永喜王朝軍!我々は、テロリストではない!其方こそ抵抗をやめ!一般市民を解放せよ!」
「帝都の残党も其方にいるだろう!貴軍は、国から見限られた!武器を捨てて投降せよ!なるべく血を流したくない!」
両軍の間に沈黙が流れる。
誰も動かない。
櫻子は、ただ敵陣を見つめていた。
一発の砲弾が飛び込んできた。
櫻子の結界が、それを弾き返す。
「伊達将官、作戦開始から2分遅れてます。」ヒロが櫻子に話す。
櫻子が俯く。
そうしてーーー。
「総員!殲滅せよ!」




