第六十二話 反攻のプレリュード
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こちらは、外伝となっております。
気になる方は、本編の『菊理姫様!お導きを!』〜定時で帰りたい領主は、今日も魔法犯罪に追われます。〜もご覧になってください。
次に見えてきたのは…。
ビルの一室でヒロが、ライフルについた望遠鏡を覗いている姿だ。
その先は、大聖堂だ。
丸山がやってくる。
「壁しか見えんやろ。それで見えとるんか?」ヒロに尋ねる。
「透視魔術を付与してあります。」短く答えるヒロ。
「田中ってスゲェわな。華族だったら豊富さんや櫻子さんに並ぶで…。」
「神々の名前覚えるの嫌ですわ。それに…。丁寧な言葉遣いとか食べ方とか…。色々性に合わないです。」
「俺かて適当や。その辺りは…。」
「俺の昔話してかまん?」いきなり丸山が切り出す。
「俺、すぐ忘れますよ。」
「それが良いんやん。俺って、子爵家の三男坊で、魔力も少ないから華族学校で馬鹿にされとったんよ。」
「……。」ヒロが黙ってスコープを覗く。
「そんな俺を、よう庇ってくれる令嬢がおった。その人は、学園では誰にも優しくて【聖女】って言われていたんや。俺、コロッとそのご令嬢に恋して、華族学校の紫苑の花畑で告白してな。」
「……。」
「紫苑の花畑から仲間ワラワラ出てきて“ドッキリでしたぁ〜。”って」
「“貴方に優しくした方が、周りの男に好かれるでしょ!そっちの方が聖女らしくないかしら?”って笑われたわ。」
「……それが、何なんですか。」ヒロが丸山を睨む。
「………。」何も話さない丸山。
「櫻も!そんな女や!言いたいんですか!」ヒロが丸山の胸ぐらを掴む。
「やっぱり、田中が櫻子さんの事ようわかってるやん。」
「なんで、戦場の聖女を演じたかーー。」
「なんで、田中の前だけいつもの櫻子さんなのかーー。」
「お前しか櫻子さんの隣に居れんのじゃ!」
「だからな。」
「辛いやろうけど。」
「側に居たりよ。」丸山の目に涙が光る。
ヒロの喉が小さく鳴った。
掴んでいた丸山の胸ぐらをゆっくりと離す。
そうして、またライフルを構える。
「今は、豊富さんです。櫻が頑張ってくれたんやから…。」
「せやな。早く終わらせて、帰ろうや…。」丸山がヒロの肩を叩く。
景色が滲む。
大聖堂の中だ。
縛られた豊富の前にアレクがいる。
とても楽しそうに記録をとっている。
雉がネイルを見ながら木製の長椅子に座っている。
そこに丸めがねの男がやってきた。劉だ。
劉はまだ魔石になっていない豊富を見る。
「おいアレク!何でコイツまだ生きているんだ!」豊富を指差す。
「えぇ、だってしぶと面白くてぇ!」アレクがおちゃらける。
そんなアレクを見た劉が、アレクの胸ぐらを掴み大刀を構えると壁まで押し付ける。
「やっやだな!劉さん。マジになっちゃって。」
「あの女が覚醒した。ここも見つかってるかもしれない。」
「櫻子先輩がですか!来てくれますかねぇ♩」
「そんな余裕はない!早くあいつを魔石にしろ!」大刀を豊富に向ける劉。
「何よ、そんなに慌てて。」雉が立ち上がる。
「他の国がこの戦いに本格的に参戦してきた…。父さんを捕まえようとしている。」劉が答える。
「あら、それは…。」
そう言って雉は薬を豊富に打つ。
豊富はすぐさま禊の祝詞を唱え始めた。
舌打ちする劉。
豊富の口を掴み大刀を構えーーー。
豊富の舌を抜こうとした、
その瞬間ーー。
豊富が桃色の煙に変わる。
「っ!」素早く劉が反応する。
ドンッ!
大聖堂の扉が爆ぜた。
「突入!」三条の怒号が響く。
素早く影に消える三人。
石の祭壇の陰には、茜茜が豊富を毛布で包み介抱している。
「翔太郎!大丈夫カ!迎えに来たヨ!」茜茜が心配そうに豊富を見る。
豊富は弱々しく震える手で茜茜の胸に手を当てる。
唇は震え、顔色は真っ青だ。
でも口元だけは、いつものように笑おうとした。
そうしてーーー。
「あぁ〜。…おっぱい。」
茜茜の目に涙が滲む。
「アンタ!バカヨ!」
パァン!
大聖堂に平手打ちをする音が響いた。




