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『菊理姫様!お導きを!』〜英雄の誕生〜  作者: ぽんぬ
第三章

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第六十話 氷結の麗人と抑圧されたスナイパー

毎日18時更新

こちらは、外伝となっております。


気になる方は、本編の『菊理姫様!お導きを!』〜定時で帰りたい領主は、今日も魔法犯罪に追われます。〜もご覧になってください。

神辺のテロ対策本部。


ホワイトボードの前に、後ろ手を組んだ櫻子が一人立っていた。


ヒロはいない。


ホワイトボードには神辺市街の地図、事件の経過、そして冬馬が命懸けで持ち帰ったファーリー製薬会社の資料が隙間なく貼られている。


櫻子はじっとそれらを見ている。


ノックが聞こえる。


「入ります。」静かに冬馬が入ってきた。


その後に異国の軍服を着た人が入って来る。


二人とも違う軍服だ。


櫻子が振り返る。


その瞳には、赤く燃えゆく業火さえ消え去っていた。

残っているのは、すべてを凍らせるような真っ白な絶対零度の世界だ。


アルビオンの軍人が思わず足を止める。


ステイツの軍人も無意識に息をのんだ。


櫻子は、ゆっくりと翻訳の魔道具を出す。


「お待ちしておりました。私は、神辺の伝達者。伊達櫻子といいます。」


「私はーーー。」


軍人二人が短く挨拶する。


無機質な机に座る面々。


「こちらをーーー。」櫻子が資料を二人に差し出す。


「良く調べましたね。」銀髪に碧眼の初老の男性が話す。アルビオン王国の軍人だ。


「あなたが、指揮官で?」ステイツ合衆国の軍人である、栗色の髪の毛に濃いブラウンの目の男が話す。


「ここの防衛を任されていますが、私は軍人ではないので。指揮官ではありません。」


「軍人ではない…?」


「はい。教師です。」


ステイツ人とアルビオン人が目を合わせる。


「では、あなたが指揮官なのですか?」冬馬を見る。


「いえ…。僕も軍人ではありません。検察官です。」


困惑する二人。


「驚かれるのも無理はありません。」櫻子は淡々と続けた。


「大和では、特権階級のみが魔術を扱えます。普段は教師、警察官、検察官、自衛官として暮らし、有事の際のみ、それぞれの役割を担います。」


そこで、ノックが聞こえる。


たぬきの耳と尻尾の亜人のなぎさが四人にお茶を運ぶ。


その様子にも驚く二人。


「失礼いたしました。」なぎさが一礼して退出する。


「このように様々な人種と手を取り合わないと大和は、滅んでしまいます。なんせ、魔術師が少ないですから。」


そこで櫻子がなぎさが持ってきたティーカップを持ち上げる。


カップを揺らし相手に見せる。


一口飲む。


ステイツとアルビオンの軍人を見て。


カップを下ろした。


アルビオンの軍人が目を細める。


「……毒見ですか?」


「えぇ、ホスト側が客人の前に口をつける。大和の鬼喰い(毒見)の作法です。」


そして、どうぞ。


と二人にお茶を勧める櫻子。


しかし、二人ともカップに手が伸びない。


その様子を氷の様に冷たい目で見た櫻子が話を続けた。


「中央騎士団は帝都を主任務としておりますので、地方は地方の魔術師が守る。それが大和です。」


そして、もう一度お茶に口をつけた。


ゆっくりとカップを置いて、それぞれの国の軍人を見る。


櫻子は背筋を崩さぬまま足を組み替えた。


「そちらの情報を提供していだたきたい。どんな些細なことでも。」


そこで、櫻子はコテンと小首をかしげた。

異国の軍人を光のない真っ白な瞳で見据える。


戦場を駆けてきたであろう二人の額から汗が伝った。




景色が遠のく。


次に見えたのは、自衛官が忙しなく動き回るテントだった。


ヒロと上野・丸山が地図の前に立ち、何やら話している。


「地下街を洗っているがなんもでやんかった。」上野が言う。


「相手の陣へ戻ったんちゃう?」丸山が話す。


「いや、国際的に動いとる事は永喜も知っとるやろ。ここでわかりやすく戻るとは思えん。」ヒロが髭の剃り残しを気にしながら話す。


「空港はどうや。」上野がヒロに聞いた。


「あり得るな。」


自衛官と元傭兵の二人が敵の出方を模索している。


そんなヒロの表情を丸山がチラリと見る。


場面が変わる。


ヒロが大きなライフルを机に乗せていた。


そこに丸山がやってきた。


「探したで。」丸山がヒロにタバコを勧めた。


ヒロはタバコを仕草で断った。


「丸山さんも今はタバコやめてください。警官が持っているS &Wより危ないんで。」


丸山に注意するヒロ。


手慣れた手つきで部品を外し、細い棒のような物を銃口へゆっくりと通す。


うちには何をしているかわからん。


「それ、スナイパーライフルってやつやん。想像よりでかいな。」


「俺、元々は狙撃手なんすわ。」


ヒロがバラバラになった部品を迷いなく元に戻していく。


「櫻がおったから前衛しっとただけです。」


無表情のままライフルを机に置き、銃に取り付けられた小さな望遠鏡の様な物を覗き込む。


「……えぇんか?」


「何がですか?」棘のある声で答えるヒロ。


ぎろりと丸山を睨みつける。


そんな様子を見てため息を一つ吐く丸山。


「……後悔だけはしやんようにな」


丸山は振り返らず去る。


ヒロは答えない。


ライフルの大きな取手を引く。


カチャリ。


その音だけがテントに響いた。


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