第五十七話 机の戦場
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こちらは、外伝となっております。
気になる方は、本編の『菊理姫様!お導きを!』〜定時で帰りたい領主は、今日も魔法犯罪に追われます。〜もご覧になってください。
次に来たのは、執務室のような所だ。
飴色の高級な机に太陽の君が座っている。
今は、洋装だ。
その前には、九条と近衛がソファに座る。
太陽の君が報告書に目を通している。
「修金赫は、九条の華族学校の同期とな?」
「御意。」九条が短く答える。
「して、どの様に戦おう。」
「まずは、諸外国の魔法省に此度のテロの詳細を通達いたしましょう。アルビオン王国とステイツ合衆国からは内密に調査団が大和に入っていますが、とても小規模です。その他の国は静観しております。」
「しかし、それでは戦火が広がらないか?永喜王朝が関わっているのであれば、相手も抵抗しよう。」
「幸運にもいまだに宣戦布告はされておりません。こちらも宣戦布告をしていない。だから、永喜王朝ということではなく一人の政治局員の責任…。と言うところで落とし所を見つけましょう。」
考える太陽の君。
「前線で戦っている者は、もう限界を迎えています。特に伊達殿は…」九条が目を伏せる。
「…。九条。其方は、修を国家ではなく“一人の犯罪者として裁く”そう申したが、永喜王朝を納得させるだけの証拠はあるのか?」
「昔の伝手を頼りました。」そう言うと九条は、太陽の君に資料を渡す。
「ファーリー製薬会社は、もう何年も魔物を使って研究をしている様です。我々魔術師が術を秘匿している事を良いことに結構派手に動き回っています。」
九条の説明に太陽の君が資料を捲る。
「キメラの研究もしているようで、アルビオン王国で人語を話す異界の魔物の発見もされています。」
「ステイツ合衆国の離島で有識者と不穏な宴もしています。」
「その全ての中心には、修金赫とファーリー製薬会社がいます。」
「しかし、この証拠だけでは、修は逃げるでしょう。だから、各国の情報が多く必要と感じます。」九条がしっかりと太陽の君を見据えた。
「諸外国との魔法省との回線を開こう。近衛。準備を頼む。」
「御意。」近衛が静かに部屋から出ていく。
太陽の君の顔が飴色の机に反射され映し出された。
「九条…。此度の事、失敗したら大和は孤立するだろうな…。」太陽の君が静かに話す。
「御意。だから、負けられないのです。」
「戦は、一度、始まると負けられません。」古強者の目に須佐之男命が火を灯す。
次にやって来たのは、アパートの一室だ。
小さな机と寝袋。いやらしい雑誌。
机の上の灰皿には、大量の吸い殻がある。
冬馬はマスクと手袋をしながらそれを片付けていた。
「茜茜さん連れて来ないんですか?」冬馬が吸い殻を片付けながら豊富に聞く。
「来るって言うたが、止めた。」雑誌を見ている豊富が答える。
「なんでです?」
「お前なぁ、自分が捕まっていた組織にもう一回行きたい奴おらんやろ。」雑誌から目を離して豊富が冬馬を見る。
「それに危険やろ…。」そう呟く。
「ここでも戦場の華が咲いてまんな…。」外を見ていた丸山がボソリと呟く。
「おっさんなんか言ったか?」
「なんも言ってへん。」
小首をかしげる冬馬。
「アイツが出てきたで…。時間は?」外を見ていた丸山が反応する。
「9時30分です。」冬馬が短く答えた。
「きっかり9時30分…。毎日同じやな…。人間ってこんなに正確に生活できるんか?」考え込む豊富。
「それに社員も少ないですよね…。工場なのに。」冬馬が考える。
「荷物は、よう出てるのに搬入車が少ないのも不思議やな。」丸山が考える。
狭いアパートの一室で、男三人が車座になった。
「冬馬。アレクは会社ではどんな感じなん?」豊富が話す。
「それが、誰も何も知らんのですよ。」
「はぁ?」
「アレク…。会社では、小林ですね。小林の話をするのは社員の間ではタブーなんです。」
「なんやそれ…。」
「普通の製薬会社ではない事は確かやな。」丸山がタバコに火をつける。
「今のうちに突撃しますか?アレクは30分は帰ってこないですよ。」冬馬が話す。
「誘われすぎてるわ!あいつら俺らを中へ入れたがっているように見える。」豊富が顎を撫でながら考える。
「冬馬。豊富さんの言う通りや。ここだけ永喜の攻撃が少ないし、奴さんの判を押した様な生活。飛び込むだけバカやで。」丸山は煙を吐きながら冬馬を諌める。
「でも……!」
「友香里はあいつらに苦しめられたんですよ!」冬馬が怒鳴る!
「すぐそこに証拠があるじゃないですか!」そう言うと冬馬がアレクの姿になる。
「豊富さん!行かせてください!」アレクの顔で冬馬が懇願する。
「あかん。その友香里がお前に何かあったら悲しむで。」静かに諭す豊富。
「いやです!行かせて下さい!」冬馬の目に闘志が宿る。
二人の間にタバコの煙と沈黙が流れた。
「………。わかった。そのかわり、やばくなったら絶対逃げろ。」
豊富がそんな冬馬を送り出す。
冬馬が、ゆっくり立ち上がりアパートの玄関を開ける。
振り返る。
「絶対証拠掴みます!」
そう一言、言い残し外に出ていった。
豊富がタバコを一本取り出す。
「おっさん…。冬馬死なせないようにしような…。」
「あぁ…。」
丸山は、再び双眼鏡を取り出すと窓の外を見る。
双眼鏡の先には、笑顔を作ったアレクになりすました冬馬がファーリー製薬会社に入っていった。




