第五十六話 聖女の失敗
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こちらは、外伝となっております。
気になる方は、本編の『菊理姫様!お導きを!』〜定時で帰りたい領主は、今日も魔法犯罪に追われます。〜もご覧になってください。
景色が歪み。
また、円卓の間に来た。
徳田と豊富・三条がいる。九条に近衛。
皆の手にはタバコの紫煙がゆらめいている。
明らかに人数が少なくなっている。
小野兄妹と櫻子とヒロがいないだけでなく、空席が目立つ。
「こっちのプロバガンダ。櫻子はんに任せすぎやない?」豊富が話す。
「櫻子君は、見た目がいいし、何より本人の行いがいいから…。」三条が苦しそうに言う。
「それで、櫻子はんもヒロも壊れそうやけどな…。」
「………。」
「報告を頼む。」九条が短く話す。
資料を投げつける豊富。
「以上や!俺は冬馬の所へ行く。あいつ今も研究所はっているから。何かあったらすぐ行かんと冬馬が死んでまう。」そう言って空間移動魔法で消えた。
残った資料を読む三条と徳田。
「修金赫か…。」ボソリと九条が話す。
「知っているのか?」徳田が九条に聞く。
「わしの時代に…。華族学校に留学に来ていた…。」九条が話す。
三条が資料を再び見る。
「別の人じゃないですか?だって、この人どう見ても九条さんより30は若いですよ。」
「いや、あいつだ。」そうして九条は魔道具に自分の記憶を引き出した。
「大分、古い記憶だから見づらいを許せ。」
そこには、音声のない画質が悪い昔の映画のような映像に制服を着て笑顔で手を振っている人物がいる。
黒目がちの瞳。
通った鼻筋。
口元の黒子。
アレクの顔だ。
「わしも…名前を聞くまで忘れておった。あいつは、この頃から若さと永遠の命を欲していた…。学生時代の戯言と思っておったが…。」九条が苦々しく答えた。
「どんな人物だったんですか?」三条が聞く。
「今で言う所の学園のアイドルだ。なんでもそつなくこなして、女子からの黄色い声援をもらっとた。わしは、こいつと相部屋だった。」
九条が、学生時代の断片的な映像を見せる。
「なぁ?九条?魔物は魔石になるだろう?なんで、人間は魔石にならないんだ?」カタカタとした音声で修が話す。
徳田と三条が顔を合わせる。
「あいつは、姑息だ。」そういうと九条が立ち上がる。
「どこに行くんですか?」三条が九条を見つめる。
「わしはわしの戦い方で修を追い詰める。すまないが、現場を頼むぞ。」そう言うと九条は部屋を出ていった。
「櫻子君の所へ行ってやってはどうだ?」徳田が三条に声をかける。
「そうやな…。」三条が空間移動魔法で消えた。
次に連れてこられたのは病室だ。
点滴と生体モニターに繋がれた櫻子がいる。
櫻子の目は閉じてるがとめどなく涙が溢れている。
その涙をヒロが優しく拭っている。
トントンとノックが聞こえた。
「入るぞ。」一言いい、三条が入室してくる。
「櫻子君の様子は?」
「命は助かりました…。」
「そうか…。」
「……三条さん。櫻の親父さんと同期なんすよね?」
「あぁ。」
「俺、櫻の親父さんに墓場から殴られますかね?」
「そんな事ない。むしろ良く支えてくれたって褒められるで。」
「でも…。櫻…。こんなにボロボロに…。」
ヒロの押し殺した泣き声が、病室に響く。
三条がそっとヒロの肩に手を置いて慰める。
「ヒロ…。」櫻子の弱々しい声が聞こえた。
「櫻!」
「ごめんね…。私…。失敗しちゃった…。」ヒロの顔を見て櫻子が言う。
何に失敗したのだろうか?
聖女を演じきる事だろうか?
それともーーー。
自らの命を断ち切れなかった事だろうか?
そんな櫻子の様子を見てヒロは震える手で櫻子の手を取る。
「櫻子は失敗なんてしてへん…。大丈夫や…。」
そう言い、櫻子の手を取り優しく手を撫でた。
本来なら白く細かったはずの指は、戦いの日々で荒れ、ごわついていた。




