↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『菊理姫様!お導きを!』〜英雄の誕生〜  作者: ぽんぬ
第三章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

55/75

第五十五話 命の演舞

毎日18時更新

こちらは、外伝となっております。


気になる方は、本編の『菊理姫様!お導きを!』〜定時で帰りたい領主は、今日も魔法犯罪に追われます。〜もご覧になってください。

車の中に丸山と豊富がいる。

豊富は魔法陣を展開し、車窓の向こうにある工場を見つめている。


修金赫シュウジンヘルファーリー製薬会社の元取締役…。今は、永喜王朝のお偉いさんね…。」と豊富が資料を見ながら話す。


「尻尾出しそうかねぇ…。」丸山が双眼鏡を覗く。


「ここを叩いても…。外交が弱腰やからな…。」豊富がタバコに火をつけた。


「嫌な事言わんでくださいよ…。」丸山がぼやく。


「でも、友香里が頑張ってくれたんや。やるしかないな…。」ゆっくりと豊富が煙を吐く。


そこへ冬馬が車に乗り込んできた。


「豊富さん!また、タバコですか?」冬馬が咳き込みながらも豊富にコーヒーを渡す。


「タバコ吸わんとやってられやんわ!それより…。冬馬は寝れてるんか?」豊富がコーヒーを受け取り冬馬に尋ねる。


見ると冬馬の目の下は隈が酷い。明らかに疲弊してるのがわかる顔つきだ。


「僕は、大丈夫ですよ!妹が頑張ったんやから…。これくらい…。」冬馬の肩が震える。


「田中もそろそろ限界や。早くこんな馬鹿らしい事終わらせんとな…。」最年長の丸山が冬馬が持ってきたコーヒーのプルタブを縦に切りながら話す。


「ヒロもか…。櫻子はん…あんなんになってももうたからな…。」豊富が顔を押さえて天を仰いだ。


豊富の持っていた新聞には、【聖女!また民衆の心を救う】とデカデカと書かれている。


「魔力を抑えろ!」双眼鏡を覗いていた丸山が短く言う。


豊富と冬馬が魔力を抑えた。


「あいつや…。あいつがおった!」丸山が豊富に双眼鏡を渡した。


双眼鏡の先にアレクがいた。


買い物帰りなのだろうか?ビニール袋をぶら下げて歩いている。


「当たりや!」豊富が冬馬を見る。


「冬馬!ここを徹底的に調べるぞ!お前の得意魔法見せたれや!」


「わかりました!」そう言うと冬馬がアレクの姿になる。


「櫻子先輩♩」しかし、言葉遣いが少し違う。


「あかん。これだと気付かれるわ。一般社員捕まえてそいつにしようや。」豊富が冷静に突っ込む。


変化魔法を解いて落ち込む冬馬。




景色が歪み場所が変わる。


メリーさんの館だ。


中のホールには避難してきた人々がごった返している。


庭にも簡易テントが貼られ人々が休んでいる。


大きい屋敷だが、人でぎゅうぎゅうだ。


「いつまで、こんな事しやんといけんのや…。」


「お家…帰れないの?」


「逃げても逃げても…。どこなら安全なんよ。」


人々のぼやきと不安が漏れ聞こえる。


じわりじわりと人々の心を蝕み始めている。


そこへ笑顔の櫻子がやってきた。


隣に無表情のヒロがいる。


「ヘラヘラ笑いおって…。」そんな言葉が聞こえた。


「おい!誰や今言うたん!」ヒロの激昂する声がホールにこだます。


「誰や!今!“ヘラヘラ笑ってる”って言った奴!」


「ヒロ。私は、大丈夫。」櫻子が完璧な笑顔でヒロを制す。


ヒロが櫻子の笑顔を悲しそうに見た。


「みなさん、不安ですよね。」民衆を掻き分け、櫻子が二階に続く階段へ上がる。


なんとも言えない表情で階段を上がる櫻子の背中をヒロが玄関ホールで見ていた。


二人の間を隔てるように人々が立つ。


櫻子がゆっくり振り向く。


「今日は、皆さんに祝福を贈りますね。」


櫻子が、神器を取り出し魔力を込める。


神器のハサミを天に掲げる。


お囃子が鳴り始めた。


人々の胸から菊理姫様の細い糸が一本、また一本と天へ伸びていく。


それは、外に居た者にも届き、細い糸が出て天に伸びる。


黄金の粒子が舞い、神楽が始まる。


あまりにも神々しい光景。


人々は息をのみ、ただ見上げている。


ーーー違う。


「……櫻!」


櫻子が神楽を演舞する。


顔色が悪い。


足元がふらついている。


普段よりも一拍遅い足つき。


異変に気がついたメリーさんも駆けつけた。


「櫻子!何をする気ですの!」メリーさんの叫びがお囃子にかき消される。


人々は、櫻子の演舞を拝んで見ている。


ヒロは、人混みを押し分ける。


「あかん!こんな人数の祝福なんて!」


櫻子は、ハサミを回しながら祝詞を上げる。


「櫻!」ヒロが叫ぶ。


棒立ちになった人々が、無意識にヒロの行く手を塞ぐ。



「祓い清めたまえよ。」



微笑んだまま、


櫻子の膝から力が抜けた。


ドサリと倒れ込む櫻子。


誰も動かない。


誰も理解できない。


「………え?」呟く声が聞こえた。


その中でヒロだけが櫻子に駆けつける。


「櫻!櫻!回復薬を飲め!」ヒロが櫻子の口に回復薬を押し当てるが、櫻子の口からこぼれ落ちる。


ヒロは、回復薬を口に含むと口移しで薬を飲ませた。


「伊達様…?」人々が何が起きたかわからないでいる。


「ヒロ!どいて!魔力を流しますわ!」メリーさんが櫻子に魔力を流す。


「どいて!どいて!どかないと切り刻むよぉ!」ヴィクターが、ストレッチャーを持ってくる。


ストレッチャーに櫻子を乗せる。


その体は、ひどく痩せている。


「ヴィクター!櫻子は!」


「魔力の枯渇だけじゃない。魔素神経まで焼き切れている。早く処置を。」そう言ってストレッチャーで櫻子を運び出した。


その様子を人々は呆然と見ている。


「田中様…。伊達様は…。」


「お前らやろ!」


「お前らのせいやろ!櫻があんなんなったのは!」


「何が聖女じゃ!」


「何が女神じゃ!」


「言いたいことばかり言いよって!」


ドンっと壁を叩くヒロ。


そこへ初老の女性がヒロの元へ駆け寄る。


「私は、ヒーラーです!櫻子さんの所へ連れて行ってください!」そう言ってヒロの肩を掴んだ。


「わかった。」ヒロが短く頷く。


ヒロ達はヴィクターを追いかけた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。