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『菊理姫様!お導きを!』〜英雄の誕生〜  作者: ぽんぬ
第三章

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第五十四話 敵が残した傷跡

毎日18時更新

こちらは、外伝となっております。


気になる方は、本編の『菊理姫様!お導きを!』〜定時で帰りたい領主は、今日も魔法犯罪に追われます。〜もご覧になってください。

次に連れて来られたのは、病院だ。


病室の前には、項垂れる小野冬馬となんとも言えない表情の豊富と三条がいた。


「豊富さん!友香里ちゃんが…。」櫻子がその先が言えず言い淀む。


「とりあえず、命は無事や…。俺ら男は、近づけん。看護師が「友香里が櫻子はんを呼んで」って…。」


櫻子がゆっくり扉を開ける。


点滴をつけて目が虚ろな友香里が病室の天井を見つめている。


「友香里ちゃん…。」櫻子が近づく。


「櫻子さん…。」虚ろな目で櫻子を見る友香里。


「私…神器持ってないやないですか…。」静かに聞く櫻子。


「魔力が尽きちゃって…。そうしたら…あいつら…。」


櫻子がぎゅっと友香里の手を握る。


「私の近くに中学生ぐらいの女の子がおったんですよ…。そいつら、その子を」


「私、別にそういうこと、初めてじゃないし…。私が身代わりになったらって…」


「友香里ちゃん!喋らんでえぇ。」そこで櫻子が泣き出す。


「櫻子さん…。私、悔しいです…。なんで、なんで…。」友香里の光のない目から涙が溢れ出す。


友香里がゆっくり起き上がる。


「無理して起きんでもえぇ。」櫻子が、背中をさする。


「櫻子さん。治癒魔法と忘却魔法を私にかけてください。」友香里の目に鬼女が宿る。


「忘却魔法って…。忘却魔法は、術が解けた時、押し込めた記憶が一気に戻るで…。」


「知っています。でも!今、アイツらをぶちのめさないと!男の人怖がっている場合じゃないんですよ!」そこで子供のように友香里が泣いた。


「わかった…。」櫻子は、短く答えて友香里の頭に手を置いて忘却魔法を使う。


櫻子の顔が歪む。


忘却魔法は、消し去りたい記憶を術者も読み取らないといけない。


友香里の見た地獄を思って心が締め付けられる。



ゆっくりと櫻子が病室から出てきた…。


俯いている。


「……櫻子さん。友香里は…。」冬馬が近づいてきた。


「……忘却魔法をかけた。」


「なんでですか!……なんで…。」冬馬が涙目で櫻子の胸ぐらを掴む。


「友香里ちゃんが望んだんや…。」


「止めてくださいよ!友香里は、もう一度あの地獄を見るんですよ!大人じゃないですか!なんでですか!」櫻子の胸ぐらを掴み大きく揺さぶる冬馬。


「冬馬。私は、大丈夫。」それを聞いていた友香里が病室から出て来た。


「…友香里。」


「櫻子さん。申し訳ないですが、引き抜いた記憶を使ってください。」友香里がしっかりと櫻子を見る。


「友香里ちゃん!ホンマにいいのか?」櫻子の目が驚きに満ちる。


「はい。ちょっとでも…。ちょっとでも情報が欲しいです。」そこでドン!と壁を叩く友香里。


その覚悟にみな言葉が出ない。


「わかった…。」そう短く答える櫻子。


目を閉じる。


泣きたいのを我慢しているのだろう。


ここでは、泣けない。


一番泣きたい気持ちの友香里がいるのだから…。


そんな、感情がうちの中に入り込んできた。


ーーーーーーーー。


次に魔道具を使い櫻子と茜茜(シーシー)が友香里の引き出した記憶を見ている。


俯いた櫻子の手からは、タバコの紫煙が揺らいでいた。


無表情の茜茜が魔道具を動かす。


「……。」


「……。」


二人とも無言だ。


魔道具から友香里の悲鳴と男達の笑い声が聞こえる。


茜茜が無言で停止する。


数秒。


煙だけが揺れる。


再生。


友香里の悲鳴。


茜茜がおもむろに映像を巻き戻した。


友香里の声を取り除く。


そして…。


男達の永喜語だけが残る。


修金赫シュウジンヘル?」茜茜が呟く。


「人の名前か?」櫻子が顔を上げる。


「“修金赫シュウジンヘル”…“社長”永喜語でそう聞こえるネ。」


櫻子がPCを操作する。


修金赫シュウジンヘル……。永喜王朝の政治家。7年前に選挙に当選して現在は政治局員として活動。


ファーリー製薬会社元社長…。」


櫻子と茜茜が顔を見合わせる。


「その会社は日本にあるのカ?」


「ちょっと待って!」


櫻子がPCを操作する。


「ある…。神辺と浪華の間に一社。」


そこで、櫻子達は部屋から出ていく。


PCの画面には、柔らかな笑みを浮かべる中年の男が映っていた。


黒目がちの瞳。

通った鼻筋。

口元の黒子。


まるで20年後のアレクを見ているような顔だった。

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