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『菊理姫様!お導きを!』〜英雄の誕生〜  作者: ぽんぬ
第三章

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第五十三話 悪夢のその先へ

毎日18時更新

こちらは、外伝となっております。


気になる方は、本編の『菊理姫様!お導きを!』〜定時で帰りたい領主は、今日も魔法犯罪に追われます。〜もご覧になってください。

戦場を駆け回る櫻子がいる。


櫻子が兵士を次々と切り裂いて行く。


手を伸ばす。


届かない。


櫻子の体が青白く発光する。


櫻子の輪郭がぼやける。


ーーーー!


「はっはっ…。」肩で息をするヒロ。


ダンジョンのベッドの上には、櫻子とヒロがいる。


ヒロが起き上がる。


額の汗を拭う。


どうやら、先ほどの映像はヒロの夢のようだ。


隣で寝ている櫻子を見る。


寝息を立てている櫻子。


ヒロが震える手で櫻子の首筋に触れ、脈を確かめる。


ヒロの肩から力が抜けた。


「ヒロ?どうしたん?」櫻子が寝返りを打ちながら話す。


「なんもない。寝とき。」


そして、魔道具を櫻子にかざす。


あれは、安眠用の魔道具だ。今でも時々、櫻子が使っている。


櫻子の呼吸が穏やかになり、深い眠りに入った。


ヒロが汗で濡れたTシャツを脱ぎ、新しいTシャツを着ると部屋を出た。


タバコに火をつけて大きく呼吸する。


深く深く煙を吐く。


「ここ火気厳禁なんだけど。」牛女がヒロに声をかける。


牛女の指先から、紫煙がゆらゆらと立ち上がる。


「……お前かて、吸ってるやないかい。」


「私は、いいの。」


「なんでやねん。」


「櫻子ちゃんも心配やけど…。あんたも心配やって。」


「誰がよ。」


「みんなよ。…みんな。」そこで、牛女が深くタバコを吸う。


「アバウトな奴やの…。」



そこで、景色が霞んだ。


次に見えて来たのは、テロ対策本部だ。


丸山とヒロが天を仰いでいる。


タバコの紫煙が二人の間で揺らいでいる。


「丸山さん…。俺、初めてやったんですよ…。」


「……。」無言の丸山。


「魔術師ってお華族様が多いじゃないですか。」


「せやな…。」


忌守(いもり)ってだけで嫌な顔されるんすよね。でも、櫻だけは違ったんですよ…。」


「……。」


「あんな風に笑ってくれて…。」そこでヒロの声に湿っぽさが混じる。


「でも、今の櫻は……。」


「……。」


「それにロッキーも…。」


「どいつなんよ。」そこでヒロが立ち上がり机を蹴った。


「こんなくだらん戦争始めたんは!」どん!と両手で机を叩く。


「なんやねん!永遠の命とか!永遠の若さとか!」ヒロが、ホワイトボードを殴りつける。


そこには“不老不死の薬”と書かれてる。


丸山はただそれを黙って見ていた。


「そんなくだらんもんに!櫻は…。櫻は…。」ヒロは、顔を両手で覆う。


「早く終わらせようや…。田中ならそれが出来るで…。」

丸山が近づき、そっとヒロの肩に手を置いた。



景色が歪む。


マーブル状の世界に入る。


それでも景色が歪む。


うちの目からとめどなく涙が溢れる。


【悲しい】


そんな言葉では、収まらない。


ロッキーを失った悲しみだろうか?


櫻子を思って心を痛めているヒロの気持ちを思ってだろうか?


人々を救っても救っても、その人々に恨まれる櫻子の心を思ってだろうか?


言葉に出来ない報われない心がうちの体を駆け巡る。


こんな時に限って白馬は何も話してこない。


うちは、目に溜まった涙を拭う。


『顔をあげよ。次に行くぞ。』


そして、前を見た。


うちは、()()()()()()()()たんだ。


見届ける使命がある。


そうして、次の時空の旅に進んだ。


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