第五十三話 悪夢のその先へ
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こちらは、外伝となっております。
気になる方は、本編の『菊理姫様!お導きを!』〜定時で帰りたい領主は、今日も魔法犯罪に追われます。〜もご覧になってください。
戦場を駆け回る櫻子がいる。
櫻子が兵士を次々と切り裂いて行く。
手を伸ばす。
届かない。
櫻子の体が青白く発光する。
櫻子の輪郭がぼやける。
ーーーー!
「はっはっ…。」肩で息をするヒロ。
ダンジョンのベッドの上には、櫻子とヒロがいる。
ヒロが起き上がる。
額の汗を拭う。
どうやら、先ほどの映像はヒロの夢のようだ。
隣で寝ている櫻子を見る。
寝息を立てている櫻子。
ヒロが震える手で櫻子の首筋に触れ、脈を確かめる。
ヒロの肩から力が抜けた。
「ヒロ?どうしたん?」櫻子が寝返りを打ちながら話す。
「なんもない。寝とき。」
そして、魔道具を櫻子にかざす。
あれは、安眠用の魔道具だ。今でも時々、櫻子が使っている。
櫻子の呼吸が穏やかになり、深い眠りに入った。
ヒロが汗で濡れたTシャツを脱ぎ、新しいTシャツを着ると部屋を出た。
タバコに火をつけて大きく呼吸する。
深く深く煙を吐く。
「ここ火気厳禁なんだけど。」牛女がヒロに声をかける。
牛女の指先から、紫煙がゆらゆらと立ち上がる。
「……お前かて、吸ってるやないかい。」
「私は、いいの。」
「なんでやねん。」
「櫻子ちゃんも心配やけど…。あんたも心配やって。」
「誰がよ。」
「みんなよ。…みんな。」そこで、牛女が深くタバコを吸う。
「アバウトな奴やの…。」
そこで、景色が霞んだ。
次に見えて来たのは、テロ対策本部だ。
丸山とヒロが天を仰いでいる。
タバコの紫煙が二人の間で揺らいでいる。
「丸山さん…。俺、初めてやったんですよ…。」
「……。」無言の丸山。
「魔術師ってお華族様が多いじゃないですか。」
「せやな…。」
「忌守ってだけで嫌な顔されるんすよね。でも、櫻だけは違ったんですよ…。」
「……。」
「あんな風に笑ってくれて…。」そこでヒロの声に湿っぽさが混じる。
「でも、今の櫻は……。」
「……。」
「それにロッキーも…。」
「どいつなんよ。」そこでヒロが立ち上がり机を蹴った。
「こんなくだらん戦争始めたんは!」どん!と両手で机を叩く。
「なんやねん!永遠の命とか!永遠の若さとか!」ヒロが、ホワイトボードを殴りつける。
そこには“不老不死の薬”と書かれてる。
丸山はただそれを黙って見ていた。
「そんなくだらんもんに!櫻は…。櫻は…。」ヒロは、顔を両手で覆う。
「早く終わらせようや…。田中ならそれが出来るで…。」
丸山が近づき、そっとヒロの肩に手を置いた。
景色が歪む。
マーブル状の世界に入る。
それでも景色が歪む。
うちの目からとめどなく涙が溢れる。
【悲しい】
そんな言葉では、収まらない。
ロッキーを失った悲しみだろうか?
櫻子を思って心を痛めているヒロの気持ちを思ってだろうか?
人々を救っても救っても、その人々に恨まれる櫻子の心を思ってだろうか?
言葉に出来ない報われない心がうちの体を駆け巡る。
こんな時に限って白馬は何も話してこない。
うちは、目に溜まった涙を拭う。
『顔をあげよ。次に行くぞ。』
そして、前を見た。
うちは、菊理姫様に導かれたんだ。
見届ける使命がある。
そうして、次の時空の旅に進んだ。




