第五十二話 それでも聖女は笑う
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こちらは、外伝となっております。
気になる方は、本編の『菊理姫様!お導きを!』〜定時で帰りたい領主は、今日も魔法犯罪に追われます。〜もご覧になってください。
ぐにゃりと曲がる線路。
その上を鼻歌を歌いながら歩く櫻子。
数歩後ろをヒロがついて歩く。
夏の日差しが照りつける。
陽炎が二人を包み込む。
爆音が響く。
櫻子の白い頬に灰が舞い微かに色をつける。
それでも笑顔は崩れない。
「今日も暑いねぇ〜♩」
「あぁ。」
「あそこで燃えているからかな?」
「さぁな。」
「ちょっと行ってみようよ。」
まるで、楽しいお店を見るかのようにヒロを誘う櫻子。
そして、飛行魔法を使い爆発が起きている所へ向かう。
飛び立つ櫻子の背中を、ヒロはしばらく見つめていた。
櫻子の姿が小さくなる。
ヒロもその背中を追った。
敵兵の元に吹雪と共に櫻子がやってきた。
「やぁ、今日はどんな授業しているの?」櫻子が穏やかに敵兵に言う。
「うっうぁ!」突然現れた櫻子に驚く兵士が発砲する。
それを結界で弾き飛ばす櫻子。
ハサミを横に振る。
赤い閃光が走った。
一拍遅れて兵士の体が滑り落ちていった。
一人の永喜王朝の男が荒廃した神辺の街を走る。
その後ろを櫻子がゆっくり歩いている。
男が必死に走っているが、転んでしまう。
櫻子に向かって銃弾を打ち込む。
ハサミでいとも簡単に撃ち落とす櫻子。
「ば、化け物!」男が這いつくばりながら前に進む。
カタリ。
中学生ぐらいの子供がいる。
逃げ遅れたのだろう。
涙と灰で顔がぐちゃぐちゃだ。
男は、その子を捕まえると子供に銃を向ける。
「ヒィ!」子供の口から悲鳴が上がる。
「近づくな!こいつを殺すぞ!」兵士が櫻子に向かって脅す。
「ダメですよ〜。民間人に危害を加えるのは、ルール違反です。」櫻子がにっこりと笑う。
そしてーーー。
氷漬けにされた男の傍らで、震えている少年がいる。
笑顔の櫻子が、近づく。
「ごめんなさい。怖い思いをさせたね。君、お名前は?」
「橋下健吾。」
「健吾さんは、なんでこんな所にいたの?」
「魔法が…。見たかったんです。」下を向く少年。
「危ないから2度とこんな真似はしないでね。自衛官のところまで送るわ。」
笑顔の櫻子の背中をキラキラとした目の少年が見つめていた。
ーーーーーーー。
怒号と爆音が聞こえてきた。
敵兵の前に櫻子が現れる。
無言だ。
ハサミを振り上げ体を真っ二つにする櫻子。
時折、歌を口ずさんでいる。
踊るように兵士を虐殺する櫻子。
櫻子から逃げる兵士。
櫻子がハサミを投げてーーー。
返り血で真っ赤な櫻子が戦場にいた。
ーーーーーーーーー。
櫻子がシャワーを浴びている。
髪の毛の血の塊を丁寧に洗い流し、シャンプーで頭を洗う。
シャワー室から櫻子が出てきた。
髪の毛がまだだいぶ濡れている。
雫が床へ落ちる。
ヒロがソファに座り、甘いコーヒー牛乳を飲んでいる。
「しっかり、洗ったか?」
「………。」
「感染症とかあるから、気いつけや。血って案外汚いで。」
「………。」
櫻子が冷蔵庫からハイボールを取り出す。
一気に飲み干した。
「ここ手っ取り早く撃ち落としたいけど無理なのかな?」櫻子が神辺の人工島を見て言う。
「海坊主が船を沈めてくれたんや。そこで手打ちにしたれ。」静かにヒロが言う。
景色が遠のいた。
そして、時空の旅に入った。




