第五十話 笑顔の代償
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こちらは、外伝となっております。
気になる方は、本編の『菊理姫様!お導きを!』〜定時で帰りたい領主は、今日も魔法犯罪に追われます。〜もご覧になってください。
櫻子がシャワーを浴びている。
頭からお湯を被っているが、微動だにしない。
水は、赤く流れている。
「櫻子さん?」そこにひょこっと狸耳のなぎさが現れる。
「あぁ、なぎさか。みんなを怖がらせちゃったね…。」口角をあげて目を歪める。
笑おうとしているのか、ぎこちない。
爪を立てて乱暴に髪の毛を洗う。
なぎさの耳がへにょんと折れた。
「お着替え置いておきますね…。」そう声をかけてシャワー室を出るなぎさ。
櫻子がシャワーから上がる。
ダンジョンの秘密基地だ。
中には、ヒロとなぎさがソファに座っていた。
猫又三匹とロッキーもいる。
「この部屋も、もうじきお別れかもね。」櫻子が口角をあげながら話す。
「なんでや?別にええやろ。俺ら帰る所なくなるで。」ヒロが、タバコに火をつけながら話す。
「帰る場所か…。」力無く櫻子が話す。
ヒロがなぎさを見る。
「私は、これで失礼しますね!今日は、ゆっくり休んでください!絶対ですからね!わかりましたか!」なぎさが櫻子の肩に手を置いて念を押す。
「わかったよ。ありがとう。」瞳に光がなく、口角を上げる櫻子。
なぎさが部屋を出る前に櫻子を見る。
櫻子がぎこちなく手を振った。
そんな櫻子を見て、節目がちになったなぎさ。
しかし、手を振って部屋を出た。
櫻子の顔が無表情になる。
「今日……間違えちゃった…。」
「でも、あの時櫻が動かないともっと多くの人間が魔石に変えられたかもな。」
「櫻子!それは、櫻子の責任じゃないでしゅ!気にしないで飲みましゅ!」ロッキーが櫻子の心を読んだのだろう。
そして、ハイボールを渡す。
櫻子の目に少し光が戻り、にっこりと微笑む。
「ありがとう。」そうして、ハイボールの封を切った。
「今日は、ロッキーが一緒に寝ましゅ!」
ロッキーが櫻子の頬に自分の頬を擦る。
その言葉に櫻子が笑う。
「ふふっ。ヒロ。ごめん。」櫻子がヒロを見る。
「しゃあないな。」
場面が歪む。
避難所だ。
瓦礫を自衛官が片付けている。
瓦礫を片付けている人々の中に獣耳の亜人達や様々な異形の妖もいる。
そこに櫻子とヒロがやってきた。
一瞬、動きが止まる人々。
さっと隠れる者までいた。
櫻子が軍帽の鍔をグッと下に持ち深く被り直した。
「魔法ってなんなん?人殺しの道具なんか?」あの男だ。
この男もまた壊れた人なのだろう。
櫻子は、後ろでに手を組んで何も言わない。
「じゃ!お前が!鉄砲持って敵の所に行ってこいや!」一人の老人が叫ぶ。
「伊達様!ホンマ申し訳ありません!」老人が櫻子の前で土下座をする。
「こんな…若いお嬢さんを…わかっているつもりでしたが、伊達様がああやって戦ってくれるから…。」言いたい事がうまく言葉にならない老人。
「私こそ申し訳ありませんでした。昨日は、恐ろしい思いをしましたね…。」
そこで櫻子が完璧な笑顔を作った。
「支援物資を持って来ました。甘い物もありますよ!」そう言うと大量の箱を出す櫻子。
「今日は、亜人の皆さんや妖の皆さんにも支援物資を配りたいと思いますが、良いですか?ここの片付けのお手伝いを快く受け入れてくれたので。」ロッキー・楓・紅葉・竜胆。猫又達が物資を配る準備をする。
「は?聞いてないんやけど。これって俺らの税金なんやろ?なんで、獣や化け物に配るん?」一人の男が異議を申し立てる。
「……。そこは、お願いします。これから良き隣人になるのですから。」櫻子の笑顔がより一層ぎこちなくなる。
人々も瞳に不安の色が映る。
「なんや!化け物の肩持つんか!」男が叫ぶ。
「お前のほうが化け物みたいなもんか!」
「この人殺し!」
櫻子の笑顔がより一層張り付く。
「なんてこと言うんや!」
「やめえ!」
止める住人。
光がなくなる目。
ヒロが下を向く。
「櫻子は、優しい人でしゅ!」ロッキーが櫻子の肩に乗り叫ぶ。
「お前!敵と知り合いやろ!」一人の男が櫻子を指差し、どかどかと目の前まで歩いて来る。
さっと、群衆がその男を見た。
「お前の事!先輩って呼んでたやん!」男が震える手でナイフを取り出した。
住民から悲鳴が上がる。
「お前がおるからやろ!この疫病神!」ナイフを振り上げる男。
櫻子の目に諦めと安堵が滲む。
避けようとしない体。
「やめろ!」
「何してるんや!」
周囲の住民が止めようとする声が響く。
櫻子は、後ろで手を組んだままだ。
老人も手を伸ばす。
ヒロが駆け出す。
「櫻!」
「危ないでしゅ!」
ロッキーが飛び出す。
ーーーーーーー。
ゴロン。
小さな音がした。
ロッキーはいなかった。
そこには、黒と白の縞々の魔石が転がっていた。
カラン。
竜胆が持っていた支援物資が地面に落ちる。
音が遠ざかる。
櫻子が小さな魔石を見つめていた。
櫻子の喉が震えた。




