第四十九話 聖女の血の涙
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こちらは、外伝となっております。
気になる方は、本編の『菊理姫様!お導きを!』〜定時で帰りたい領主は、今日も魔法犯罪に追われます。〜もご覧になってください。
支援物資を配る櫻子。
その中には、ロッキーと楓達猫又三匹がいた。
「これをそうぞでしゅ!」
「ありがとう!ロッキー!」どうやらロッキーは、避難所で人気のようだ。
うちは、ロッキー達の姿を見てホッとする。
「なぁ、姉ちゃん。戦争いつ終わるん?」ヒロからタバコをもらっていた人物が櫻子に声をかけてきた。
「……それは、お答えできません。」一瞬櫻子の笑顔が引き攣った。
「そうっすか。」下を向く男
沈黙が流れる。
「俺な。ガソリンスタンドやっとったんや。」ボソボソと話し始める男。
「店、爆破されて。残ったんはローンだけですわ。」人々が男を見る。
「………。魔法なんか、なかったら。」
「戦争しやんかったんちゃうの?」そこで男がはっきりと櫻子を見た。
「アンタ!なんて事いうんや!」中年女性が叫ぶ。
「……申し訳ありません…。」櫻子の口から謝罪の言葉が出る。
それを鼻で笑う男。
「あんたが俺のローン肩代わりしてくれんか?せんやろ。」そう言って支援物資を配る列から離れる男。
櫻子の目が揺れる。
場面が変わる。
テロ対策本部の一室で丸山と上野がタバコを吸っている。
「シェルターに妖と亜人の受け入れか…。」上野が苦い顔をして資料から目を離す。
「難しいのは、わかるがどうにかならんか?」丸山が煙を吐く。
「人だけで手一杯ですよ…。それに亜人や妖まで受け入れるとなると。それに、亜人の方は、見た目ただのコスプレだからいいけど…妖は…。」
「難しいよな…。」
沈黙が二人の間を流れる。
トントン!と小さなノックが聞こえた。
「ちょっと!櫻子ちゃんいる?」そこに牛女がやってきた。
ギョッとする上野。
だるそうに見る丸山。
「なんや。牛女か。櫻子さんになんの用よ?」
「メリーちゃんとも話したんだけど。亜人と妖の避難所。ダンジョンとラビリンスで請け負っても良いわよ。」牛女が腕を組みながら話す。
「ダンジョンとラビリンスって危なくないん?」上野が引いている。
「…いや。一番安全かも知れん。ちょっと櫻子さんに話してみるわ!牛女!」
「何よ?」
「その避難所。人間も使えんのか?」
「人間?自衛出来るなら良いわよ。」フンと小馬鹿にする牛女。
場面が変わる。
小さなプレハブ小屋に避難所の住人の代表者が集まっている。
「ダンジョンなんて…なんで危ない所にわざわざ行かないといけないんですか?」困惑している表情の女性が叫ぶ。
「お気持ちは、わかりますが…。私が簡易的に作った結界より、強力な結界が張られています。中のモンスターなどは亜人と妖が討伐してくれますから、そちらの方がより安全なんです。」力強く櫻子が説明する。
「兜山の夫婦石のところでしょ?あそこて昔から石に触ったら死ぬって都市伝説が…。」
「うちは、小さな子供がいます。今のままの方がいいです。」
ガヤガヤと意見が飛ぶ。
だが、賛成する者はほとんどいなかった。
そこに凄まじい轟音と衝撃が轟く。
「櫻!永喜王朝が攻撃してきた!」部屋にヒロが入って来た。
「みなさんは、自衛官の指示に従って避難してください!」櫻子が笑顔でみんなに言うと部屋を飛び出す。
「こちらは、永喜王朝である!邪術に頼る邪教徒は降伏し、一般市民を解放しろ!」拡声器を使いながらバリバリと結界を壊す。
その結界を壊しているのは、魔法だ。
永喜王朝の道士が前線に出て櫻子の結界に一斉攻撃を繰り出している。
後方には、戦車やジープなどが見えた。
ーーーそして。
後方の戦車の上ににっこりと笑って手を振る男がいた。
「先輩!迎えに来ましたよ〜。」アレクの声が響いた。
櫻子が神器のハサミに菊理姫様の糸をつけると道士に向かって投げつけた。
反応が遅い道士が何人か真っ二つになる。
人々の悲鳴が上がる。
櫻子は止まらない。
前線にいる兵士に向かって氷嵐を繰り出す。
ヒロも援護射撃をする。
「隊列を作れ!櫻を援護しろ!」
自衛官が反応する。
櫻子が大剣ほどに変えた刃先を構えながら、アレクに向かって突っ込んでいく。
「櫻!あかん!」ヒロの声が聞こえる。
櫻子の後を追うヒロ。
目の前にいる永喜王朝の兵士を切り刻みながら進む櫻子。
櫻子から離れようと混乱が生じる。
櫻子の足元に血溜まりが広がる。
「櫻子!あかん!止まれ!」ヒロが兵士を倒しながら進む。
櫻子のハサミがアレクを捉える。
アレクが素手で受け止める。
ギリギリと櫻子とアレクが睨み合う。
アレクはニヤリと笑うと注射器を櫻子に突き立てようとする。
アレクの攻撃をかわしながら間合いをあける。
「櫻子!あかん!」ヒロが櫻子に近づこうと兵士を次々と倒す。
「いい体つきの男じゃない〜。菊のお姫様の彼氏?私と気持ちいいことしない?」そこに雉が、ヒロの攻撃を弾いた。
「下品な女は嫌いや!」ヒロがナイフで雉を攻撃する。
結界の綻びから永喜王朝の兵士が入る。
避難所の住民に銃口を向ける。
櫻子が土魔法でそれを阻止した。
「よそ見するなんて余裕ですね♩」アレクが注射器を突き立てる。
ハサミで叩き切る。
どんどん壊される結界。
「突破した!侵入するぞ!」侵入してくる兵士。
道士が前に出て。
ーーーリーン!
閃光と爆風。
櫻子が舌打ちするとアレクから離れて結界の中に空間移動魔法で現れ、結界内に侵入した兵士を攻撃する。
櫻子がハサミを突き立てるたびに足元に血溜まりが広がる。
子供の泣き声が響き、母親が子の目を塞ぐ。
敵兵の攻撃は櫻子のハサミの前では無力だ。
首が切れて、血吹雪をあげて倒れる兵士。
老人が震えながら櫻子を見ている。
「あぁ、聖女様が台無し♩」その様子をアレクが楽しそうに見ている。
「あんたが、お姫様を助けたナイトでしょう?」ヒロの攻撃を簡単にかわしながら雉が話す。
ヒロの銃弾が雉を捕えた。
しかし、簡単に結界で弾かれる。
不敵に微笑む雉。
舌打ちして後方に下がるヒロ。
「もう、終わり?もっと遊びましょうよ?」ヒロにバックハグする雉。
「っ!」ヒロが驚き魔道具を発動させた。
爆音と共に半径500メートルが火の海になる。
雉はいない。
アレクもいない。
ヒロの遠くに櫻子が居る。
敵の血を全身に浴びて、肩で息をしている。
足元には、大量の死体が転がっている。
ヒロが近づく。
櫻子の顔にもベッタリと血がついている。
涙のように血が頬を伝った。
「あれが…。伊達様。」誰かの問いが鉄の匂いと火炎の匂いに消える。
誰も拍手をしない。
誰も歓声を上げない。
助かったはずなに、人々はただ、血塗られた聖女を見つめていた。




