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『菊理姫様!お導きを!』〜英雄の誕生〜  作者: ぽんぬ
第二章

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第四十八話 疑念の煙

毎日18時更新

こちらは、外伝となっております。


気になる方は、本編の『菊理姫様!お導きを!』〜定時で帰りたい領主は、今日も魔法犯罪に追われます。〜もご覧になってください。

次に来たのは、とある民家の一室だ。


鼻歌を歌いながら、新聞紙をスクラップしている輝夜がいる。


新聞には、【聖女!また!人々を救う!】と大きく書かれ、櫻子の写真がデカデカと載っている。


輝夜は、スクラップを作ると嬉しそうにそれを見た。


初老の婦人がやってきた。


手には、麦茶がある。


「櫻子ちゃん。頑張っとるようだない…。」輝夜に麦茶を渡しながら言う。


「お祖母様は、聖女様とお知り合いなのですよね!どんなお方ですか?」キラキラとした目で輝夜が祖母に尋ねる。


「人一倍頑張り屋で…。でも、見ていて時々危なっかしい子だ。」


「危ない?」


「あの子は、助けを呼べない子だからない。昔からそこが、危なっかしくて…。」婦人が新聞紙の櫻子の写真を見る。


そして、その後ろにいるヒロを見る。


「ちょっと、見せてくんねいかい?」そう言って婦人は、輝夜のスクラップを見る。


櫻子のどの写真にも後ろにはヒロがいた。


「櫻子ちゃん…。いい人に出会ったのかもね…。」


その時、ドン!と大きな音がして部屋が揺れた。


「輝夜!」鶴介が部屋に入ってきて輝夜に飛びつく。


「お祖母様……奥州も戦場になるのでしょうか?」輝夜が不安そうに婦人を見た。


部屋に沈黙が漂う。


「お祖母様…。私…。夏休みが開けたら…。学徒兵として志願するつもりです。」輝夜が静かに話す。


婦人の目が驚きと絶望で大きく開く。


「そげなこと!なじょして、そげな事いうんだ!」


「お父様が、不正で政から下されました…。華族学校にもいれません。だから、せめて、魔術師として大和の為にと思います。」


「金ならなんとかする!絶対!学校は卒業しろ!」


「でも…それだと…。大和がこれほど酷い状況なのに…。」下を向く輝夜。


「お国の為になる事が、軍人とは限らない。そうだ、物資を送ろう。大丈夫。このおばぁがどうにかするで心配するでないど。」そう言って輝夜の手を取る婦人。


鶴介は、そんな二人の顔を交互に見る。


輝夜は祖母の皺だらけの手を握り返した。


戦争は、まだ遠いはずだった。


それでも、人々の未来だけは、少しずつ奪われ始めていた。




景色が歪み避難所へとやってきた。


ヒロが魔道具を動かしながら、別の隊員に指示を出している。


「で、この魔石をここに設置するやろ?」


そこで、隊員の顔色が悪くなる。


「なんや?」それを見たヒロが聞く。


「そ…それ、人じゃないですよね?」


「ちゃうわ!本来、人は魔石に変わらん。あいつらが邪道なんや。」そう言って魔石を魔道具にセットした。


機械が動き出す。


「これで、しばらく発電出来るやろ…。」


「ヒロ!発電機はどう?」櫻子が貼り付けた笑顔でやってきた。


「伊達様!」隊員が敬礼をする。


「畏まらないで。いつも通りでいいから。」


はっ!短く言い敬礼をやめる自衛官。


「しばらく、これで電気はどうにかなりそうや。」クイっと魔道具を親指でさすヒロ。


「さすが、ヒロ。」一瞬櫻子の笑顔が自然になる。


その笑顔を眩しそうに見るヒロ。


「他に足りない物はない?」隊員に聞く櫻子の顔はもうあの作り笑いだ。


「食料が…不足してきました。それに、紙おむつや生理用品が足りないと住民からの声があります。」おずおずと話す隊員。


櫻子が顎に手を当てて考え込む。


「小さな子や若い女性には酷な話よね…。」


「あんたも若い女性やで…。」ヒロが突っ込む。

チラリとヒロを見る櫻子。


その目は笑ってない。


「奥州の知り合いが物資を送ってくれました。気の利く方だからオムツや生理用品が入っているかもしれません。確認しましょう。」そうして、完璧な笑顔で隊員を連れて立ち去っていく。


ヒロは、そんな櫻子の背中をじっと眺めていた。


「のう兄ちゃん?タバコ持っとらん?」一人の男がヒロに声かける。


ヒロが無言でタバコを出す。


「やっぱ、赤い人は、優遇されてまんな〜。」


「どういう意味や?」


「だってそうやん。俺ら配給も回ってこんのに、兄ちゃんらはタバコまである。」そう言ってタバコに火をつける男。


「なぁ?……魔法なんか、なかったら戦争にならんかったんちゃう?」男がゆっくりと煙を吐き出す。


煙は、疑念に変わりヒロを包む。


ヒロは何も答えなかった。


その煙だけが、避難所の空気に溶けていった。

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