第四十七話 亡国の条件
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こちらは、外伝となっております。
気になる方は、本編の『菊理姫様!お導きを!』〜定時で帰りたい領主は、今日も魔法犯罪に追われます。〜もご覧になってください。
人々が、四角い背の低いテーブルの周りに一人掛けのソファに腰掛けている。
時々、テレビで観たことがある部屋だ。
確か、国会の内部のはずだ。
中心には、内閣総理大臣と防衛大臣がいる。
その他にも偉そうな大人がいた。外宮の各大臣だろうか?
内宮のメンバーはいつもの面々だ。
今日は、タバコが吸えないのか豊富が貧乏ゆすりをしている。
「神辺の映像と日向の国の虐殺を提出して、国際法に基づく調査を要請しましたが…。証拠不十分と言われました。」総理大臣が話す。
内宮の面々が呆れて、一斉にタバコや煙管を取り出す。
小野兄妹はマスクをする。
「こちら…。禁…。」と言い掛けて言葉を噤む総理大臣。
「他の諸外国の世論を教えていただきたい。」九条が、煙管に火をつけながら話す。
「欧米諸国は、調査団を派遣したいと申し出ています。」一人の男が答える。
「永喜王朝は悪質な捏造と大和を非難しています。永喜王朝の国内では、魔法から人々を救っている映像が流れています。」そこで、タブレットで永喜王朝の国営放送のニュースを見せる。
ニュースでは、永喜王朝の兵士が笑顔で人々に配給を配り、民間人が「マホウ、コワカッタ。タスカッタ!」とインタビューを受けている。
インタビューを受けている者の大和語が明らかにおかしい。
「あからさまなプロバガンダですね。」三条が葉巻の煙をゆっくりと吐く。
「石油と天然ガスの貿易もストップしています!国民の生活は日に日に苦しくなっています…。このままでは、熱中症で死者が増加してしまいます。ここは、国民の事を思い相手の条件を…。」
豊富が男を睨みつける。
男は、言葉を失い、喉を鳴らした。
会議室が静まり返る。
「相手の条件を飲むとこの侵略は終わるのですか?」櫻子がイラついた手つきでタバコを灰皿に押し付けた。
「それは、そう相手が…。」
「随分、お相手を信用しておいでですね。」櫻子がにっこりと微笑む。
その笑顔に男の顔色が青くなる。
「こちらの女性が関わっているのですか?」そう言って写真と資料を投げつける櫻子。
「こちらには、サトリがいるんですよ…。国民の為とか言って、相手の条件を飲んだ後に自分が高待遇で永喜王朝に亡命しようとしているのはバレバレですよ。」そこで、櫻子がタバコを一本出すとメンソールを噛んで火をつける。
ふぅと一服すると他の外宮の面々を見る。
「他の方々も欲のかきすぎには、ご注意を。内閣総理大臣。」櫻子が総理大臣を見る。
ビクンと体を硬らせる総理大臣。
「そちらの大臣の処分はそちらでお願いしますね。」
「善処します…。」
ダラダラと冷や汗を流す外宮の面々。
「石油やガスはこちらでは輸入していないが、他の物資ならこちらも取引がある。内宮の貿易は動いているので、そこから物資を援助いたしましょう。」近衛が煙管の煙を吐きながら話す。
「ありがたいお申し出だが、永喜王朝とは長年貿易で経済依存をしているのを今更…。」
「そっちが、危機感持たんとバカスカ永喜王朝から物を買ってたんやろ?移民も増やして…。ステイツ合衆国みたいに脱・永喜をしやんかったツケを俺らは払わされているんやで!」ドン!と机を叩く豊富。
「僕も永喜王朝の条件を飲むのは、反対です。戦死した自衛官に何て説明するんですか?相手のあからさまなプロバガンダと侵略を許すのですか?」一人の大臣が話す。
この中で一番若い人だ。
「それに…。太陽の君の引き渡しの件。お話しないのは何故ですか?総理?」
若い大臣のその一言で、部屋の空気が止まった。
誰一人として息をしていない。
「その件、詳しくお話しいただきたいですなぁ。」九条の声が静かに響く。
そっと煙管を灰皿に置く。
その目が総理大臣を捉えている。
「せっ戦争にならぬなら!致し方ないのです!」総理大臣が叫ぶ。
「太陽の君を一人!一人!永喜に送れば、戦にならない!」
「もう!戦は始まっている。」徳田がバン!と机を叩いた。
「国家とは、感情では、動けない。私は一億人の大和人を救うために一人に犠牲になってもらうと言っているのだ!」総理が立ち上がり徳田を睨む。
「テロが始めに起こった神辺では、もう何人も亡くなっているんですよ!」若い大臣が立ち上がる。
「自衛官も警察も消防も救急も!命をかけて戦っています!」
机を両手で叩きつける大臣。
「その者たちに、総理はなんと声を掛けるおつもりですか!」
総理は何も答えられない。
「太陽の君を差し出せば、本当に終わるのですか!そんな保証はどこにあるんです!?」
会議室に沈黙が落ちる。
「次は月の君を寄越せと言われるでしょうね。」
「その次は神器。」
「その次は魔法使い。」
「その次は内宮。」
若い大臣の声だけが、静まり返った会議室に響く。
「最後には、大和そのものです。」
総理を真っ直ぐ見据える若い大臣。
「侵略とは、そういうものではありませんか。」
沈黙が会議室に流れる。
「防衛大臣。」と静かに櫻子が呼ぶ。
若い大臣が櫻子を見る。
「ありがとうございます。」
「………いえ。」
そう答えると自分の席に座った。
また、景色が遠のき、マーブル状の世界に入っていった。




