第四十六話 素顔
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こちらは、外伝となっております。
気になる方は、本編の『菊理姫様!お導きを!』〜定時で帰りたい領主は、今日も魔法犯罪に追われます。〜もご覧になってください。
うちは、マーブル状の世界にいる…。
ここを抜けると櫻子の地獄だ。
抜けるのが、怖い。
でも、見届けなければ…。
『辛いか?』不意に白馬が声をかけてきた。
「うちは、大丈夫や。」下を向きながら答える。
『人とは、時に他人の事を思って強がる。しかし、それが人らしいな。』
「バカにしとるのか?」
『褒めているのだ。』
「のう、白馬様…。魔法は、悪い物なのか?」
『先ほども言ったが、魔法も科学も道具に過ぎぬ。扱う者の良し悪しだ。』
「でも…。封印を解いたから攻め込まれたんやろ?」
『あの時、封印を解かなくともかの国は、大和を攻め込む計画をしていた。この時ばかりは、神々もひやりとしたと…。そう、仰せだ。』
神様でもやばいと思うことがあるのか…。
『神々の中には、元は人間もおるからな。』
「そうなのか!?」
『あぁ、大和とはそんな国だ。』
『次に行くぞ。今回は、櫻子達の言葉だけ心に刻め。』
そう言うと景色が形取り始めた。
ダンジョンの秘密基地だ。
ベッドの上には、櫻子とヒロがいた。
二人とも服を脱ぎ、薄手のブランケットを体に掛けている。
うちは、目を逸らす。
テーブルを見ると大量のハイボールの空き缶と回復薬の空き瓶。
それに灰皿には、タバコの吸い殻が山のようになっている。
「…ヒロ。いつになったらこの戦争は終わるん?」櫻子の声が聞こえる。
その声は、とても苦しそうだ。
戦場を鬼神の如く駆け回っている者とは思えない。
「わからん。でも、櫻はようやってる。だから、少し休め。」ヒロの静かな声が聞こえる。
「でも!私が休んでいる間に、また誰かが魔石になったら?」
視界の端のブランケットが揺れる。
二人の息遣いだけが静かに聞こえてきた。
「わからんか?好きな女を戦場に送りたい男が、どこにおる?」
「ちょっとヒロ…。」
二人の小さな笑い声が聞こえる。
「櫻が、何千人何万人救って。それで、櫻が壊れてしまうなら…。俺は、櫻が壊れんように何万人を見捨てるけどな…。」
ベッドの軋む音が激しくなり、櫻子の艶っぽい声がする。
「今日は、ちゃんと寝ろ。眠れないなら、眠れるぐらい抱き潰してやるよ。」そんなヒロの声が聞こえる。
うちは、見ないようにしながら手綱をぶんぶんと振る。
景色が溶けて、マーブル状の世界にやってきた。
次にやってきたのは、テロ対策本部の部屋だ。
神辺周辺の地図を見ている櫻子がいる。
緋色の軍服をきっちりと着こなし、後ろ手を組んでいる。
隣には、自衛官の上野。警察官の丸山。それに櫻子と同じ緋色の戦闘服を着ているヒロがいる。
「永喜王朝の軍は、人命救助という名目で神辺の人工島に陣を置いて魔石を運び出していますね。海自からの報告で、不審な船が常時停泊しているのが、確認できました。」上野が、不審船の停泊している場所を磁石でマークする。
「あと…日向の国の自衛隊から…。日向が永喜王朝に落とされました。」
「日向は、天孫降臨の伝説がある土地だ…。不味いな。」櫻子が苦々しく話す。
「でも、こっちで手一杯やで。」ヒロが話す。
「物資も枯渇してきた。輸入に頼っている大和で兵糧攻めされたらひとたまりもないな…。」
「難民も増えてます。避難所は常にいっぱいです。また、病気も流行り始めましたね。高齢者と子供を中心に肺炎が流行り始めています。」
そこで、またサイレンがなった。
一斉に部屋を飛び出していく、櫻子達。
景色が揺らぐ。
次の瞬間、神辺の人工島を見下ろしていた。
櫻子が魔法陣を展開して相手の様子を覗いている。
「わかりやすく宣戦布告してくれた方がありがたいな。」ヒロがため息混じりに言う。
「こちら側から攻め込まれないようにしているのだろうな。姑息だ。」
ヒロは、カメラで相手を撮影している。
櫻子の魔法陣の映像が拡大され兵士の様子を探る。
相手の道士がこちらを見上げた。
「気付かれたか。」櫻子が短く呟く。
「切るか?」ヒロがカメラを構えながら言う。
「いや、このまま証拠を集めよう。」
魔法陣を拡大しながら相手の陣をあちこち覗く。
キョロキョロと動いていた映像が一つの場所で焦点が止まる。
拘束された民間人が悲鳴を上げる。
閃光。
人々の姿が灰になり、色とりどりの魔石だけが残った。
兵士は、手慣れた手つきでそれを木箱に放り込む。
「敵軍による民間人の魔石化を確認。映像を確保。」そう言って空間移動魔法で消えた。




