第四十五話 鬼女と聖女
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こちらは、外伝となっております。
気になる方は、本編の『菊理姫様!お導きを!』〜定時で帰りたい領主は、今日も魔法犯罪に追われます。〜もご覧になってください。
強い日差しが、砕かれたアスファルトの上に血だまりが静かに広がるのを映す。
その血だまりを蹴り上げながら、一人の自衛官が必死に走る。
パァンッ!と短い銃声が聞こえる。
足を撃たれてもがく自衛官。
それでも尚も逃げようと必死に這う。
リーン。
閃光・爆風。
後に残ったのは、キラキラと煌めく魔石だ。
永喜王朝の軍人がどこからともなく現れて、魔石を回収していく。
灰の中から、赤黒い魔石を拾い上げ太陽にかざす軍人。
「これ一個で一年は、遊んで暮らせるんだろ?何個か貰っていくか?」
「やめておけ。元は大和人だぞ。呪われる。」
そんな、軽口を叩きながら淡々と作業をしている。
地面にしゃがんでいる軍人の手元に影が重なる。
振り返る軍人。
「勝手に人の物を持って行ってはいけないんですよぉ?」櫻子が子供を叱りつける様に話す。
張り付いた笑顔で永喜王朝の軍人を見る。
「うわぁ!」軍人が銃を構える前に櫻子がハサミで軍人を切り付ける。
「敵・魔術師を捕捉。菊姫だ!」そんな声が聞こえたら道士が櫻子の周りに集まる。
三、四人の道士がそれぞれの武器を持って櫻子ににじり寄る。
「あっそびましょう♩」櫻子が笑顔でハサミを大剣ほどに変えて道士に切り掛かる。
反応出来なかった道士の体が真っ二つに裂かれる。
黄色い札を使い結界を展開する道士に櫻子のハサミが牙を剥く。
バリバリと結界が崩れていく。
道士の顔色が悪い。
仲間の道士が櫻子に火魔法を放つ。
煙がゆっくりと立ち込め消える。
そこには、手を掲げたまま口元をにぃと歪める櫻子が立っていた。
足元には、首と胴体が離れている遺体が転がっている。
「おっ鬼!」道士が飛行魔法を使い物凄い速さで逃げ出す。
櫻子は、立ち去った道士を見る。
「10、9、8…。」カウントダウンする櫻子。
「あんなの勝てるはずない…。無理だ…。」恐怖で顔を歪ませている道士。
「ばっ化け物……。」道士が震える。
「あれは、鬼だ。血塗られた鬼女。」真っ青になりながら自分の陣へ帰ろうとする道士。
高度を上げてすごい速さで逃げる。
「鬼ごっこですかぁ?」櫻子の声が道士の耳に届く。
「私、仕事でよくやっていたんで得意ですよ。」いつの間にか道士の背後にいた櫻子が囁く。
「タッチ♩」
その瞬間、道士の体がズタボロになり、地面へ向かって落ちていった。
櫻子が地上に降りてきた。
人々が、結界の内部で震えている。
「伊達様!」一人の衛生兵が櫻子に駆け寄る。
「怪我のひどい者は?」
「こちらです。」
案内された場所には、多くの自衛官がもがき苦しんでいる。
「もう、大丈夫ですよ。みなさんの苦しみをとりますね。」櫻子が天を仰ぎ部屋いっぱいに治癒魔法をかける。
人々の表情に安堵と安らぎが戻る。
「ありがとう…。ありがとうございます。」泣きながら拝む自衛官もいた。
櫻子が回復薬の封を切って飲み干した。
次に櫻子が来たのは、民間人が避難しているシェルターだ。
「伊達様が来たぞ!」人々が櫻子の周りに来て頭を下げる。
「伊達様。いつもありがとうございます。」老人が深々と頭を下げる。
「私は、公務員として仕事をしているだけですよ。それより、衛生用品が不足気味と聞いたけど本当?」櫻子が完璧な笑顔で避難民に尋ねる。
「…はい。伊達様が頑張っているのに甘えるようで申し訳ないのですが…。」老人が頭を下げる。
「そんな事はないわ。頭を上げて。何がどう不足しているか教えてください。帝都から物資を運搬できないか確認しますね。」
「ありがとうございます。」
「それと皆さん。お風呂には入れていますか?私が、水魔法と火魔法でお風呂を沸かしましょう。自衛官の皆さんに掛け合ってお風呂の準備しますね。」
人々から喜びの声が上がる。
自衛官が、野外に仮設の浴室を建てる。
櫻子はその裏で火魔法と水魔法を駆使して、住民の為に湯を沸かす。
そこへヒロがやってきた。
「櫻の仕事ちゃうやろ。」ヒロが櫻子にタバコを渡す。
無言でタバコを手に取り火をつける。
一服すると黙々と湯を沸かす櫻子。
「無理するな…。って言いってもやめやんか。」回復薬を置いてその場を離れるヒロ。
そんな様子を見ている自衛官がいる。
今の冒険者組合で安全管理部主任の上野だ。
テントの表では、民間人が笑顔で湯を堪能してさっぱりとしている。
裏では、櫻子が無表情に魔法を練り上げ湯を沸かしている。櫻子は、汗だくだ。
そんな櫻子の小さな背中を上野が見つめていた。




