第四十三話 警報
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こちらは、外伝となっております。
気になる方は、本編の『菊理姫様!お導きを!』〜定時で帰りたい領主は、今日も魔法犯罪に追われます。〜もご覧になってください。
次に連れてこられたのは、怒号が飛び交う。
神辺の下町だった。
ヒロが小銃を撃つ。
「相手の頭を狙え!」腰がひけている自衛官に怒号を飛ばす。
しかし、人間の見た目をしている賊を撃てないでいる者が何人かいる。
ヒロは舌打ちをすると腰からナイフを出し、賊を切りつけて灰にする。
「死にたいんか!」躊躇している隊員の胸ぐらを掴むヒロ。
「だ…だって、人なんて殺した事…。」
それを聞き、なんとも言えない表情でヒロが、隊員の胸ぐらを離す。
ドサリと倒れ込む自衛官。
「ヒロ。そんな言い方しちゃいけないよ。」そこに櫻子が微笑みながら近づく。
「あぁ、伊達様!」隊員が櫻子を拝む。
「人を傷つけたくないのよ。あなた達の小隊は後方で怪我をした人を助けてください。」
「はっ!」小隊が走り抜ける。
その様子を笑顔で見守っていた櫻子の顔から笑顔が消える。
「自衛官とは、前線も維持できないのか?あれでは、ただの救助隊や土木作業員だな。」吐き捨てるように言う櫻子。
「平和だったんだよ。俺みたいに中学卒業して自衛官の後に傭兵をやっていた奴なんておらん。大概の自衛官は、人を殺したことがない。」
「外宮の防衛大臣も困ったものだ。殺す覚悟のない者を送られても使い物にならない。」冷たい目の櫻子が言い放す。
雨が降り始める。
その中を櫻子とヒロがゆっくりと歩く。
雨足が強くなる。
バチバチと櫻子達の緋色の軍服を濡らす。
「人間って本当に面白いぃ。」黒い傘を差した男が現れた。
オールバックに丸めがね。
爽やかな笑顔。
アレクだ。
櫻子が素早く反応する。
すごい速さでハサミを投げるとアレクの首を狙う。
傘をさしたままアレクがかわす。
櫻子が間合いを詰めながら、ハサミで切り付ける。
これもヒョイとかわされる。
かわした隙を突いて、ヒロがナイフを突き立てる。
アレクは、傘でナイフを弾きながら櫻子たちと距離をとる。
傘が真っ二つになり、地面に落ちる。
「あぁ、この傘、お気に入りだったのに!田中先輩酷いですよぉ♩」その笑顔は、ヒロ達と戦っていた時のあの屈託のないものだ。
「お前に先輩って言われたないわ!」ヒロが小銃を向ける。
しかし、結界で簡単に弾かれる。
「酷いですよぉ。仲良くしていたじゃないですかぁ。」
アレクの背後に櫻子が素早く回り込み切り付ける。
ーーージョキン!
アレクの体が横に真っ二つになる。
アレクの口元がにぃと持ち上がるとバラバラと灰になる。
「危ないじゃないですかぁ?櫻子先輩♩」櫻子達を見下ろすように瓦礫の上からアレクが話しかける。
「お前らの組織。そして、主犯を教えてもらうぞ。」櫻子がハサミを構え切り掛かる。
「僕の事聞きたいんですかぁ?」アレクがまたかわす。
すかさず、ヒロがナイフで切り込む。
そのナイフをアレクが指で止める。
「あなた達ってワンパターンですね。」困ったようにアレクが話す。
ヒロが左拳をアレクのボディへ叩き込む。
それもアレクの結界に弾かれた。
「ヒロ!」櫻子が叫ぶとヒロがアレクから離れた。
アレクに櫻子のアイスストームが襲いかかり、体がズタボロになる。
しかし、それでも余裕な様子だ。
再びアレクが灰になる。
「僕の事知りたいんじゃないの?」建物の影からまたアレクが出てきた。
櫻子達は攻撃をやめ、じっとアレクを見る。
「じゃ、僕の本当の名前を話しますね…。僕は、アレク。しがない薬剤師ですよ〜。」芝居がかった演技でアレクが自己紹介する。
櫻子達はじっとその様子を観察している。
「で、聞きたいんですけど…。櫻子先輩。禁断症状ないの?」アレクが真顔で聞く。
ヒロが櫻子の顔を見る。
櫻子は、眉を吊り上げる。
「その様子だとなさそうですね。禊とは、そこまで浄化するんですか…。」アレクが真顔から笑顔になる。
「まぁ、でも、“魔石”になったら関係ないか♩」そう言うと注射器を投げつける。
櫻子が、ハサミで叩き落とす。
「クライアントから納品をせがまれているんですよ〜。」アレクが注射器を次々と繰り出す。
手早く反応して櫻子とヒロが叩き落とす。
「クライアントは、大和がなくなっても良いって言ってます。なんかだいぶ恨まれていますねぇ〜。お隣の国なのに♩」
「どう言う意味だ!」櫻子が困惑する。
「…永喜王朝のことか?」心当たりのあるヒロが、確かめるように聞く。
「さぁ?どうでしょうね?もうそろそろ…。貿易ストップされて苦しくなるのは、そっちですからねぇ。」ニタニタと気味悪く笑う。
「貿易ストップ…経済制裁か。」櫻子の目が苦々しく歪む。
「世界では、魔法が受け入れられてますか?邪教徒狩りは合法な殺人ですよ…。」アレクは一層不気味に嗤う。
ウーーーー!!
けたたましいサイレンの音が鳴り響いた。
「じゃ、また今度遊びましょうね♩先輩方♩」アレクが影の中に溶けるよう消える。
それを見届けると、櫻子達も空間移動魔法で姿を消した。
瓦礫の山へ、激しい雨だけが降り続いていた。
その中を不穏なサイレンの音だけが鳴り響いた。
大和という国の運命を警告するように……。
神辺の街に鳴り響いていた。




