第三十九話 存在しない男
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こちらは、外伝となっております。
気になる方は、本編の『菊理姫様!お導きを!』〜定時で帰りたい領主は、今日も魔法犯罪に追われます。〜もご覧になってください。
マーブル状の世界を進む。
警察署へ戻ってきた。
会議室のような場所で、縦肘をつき、口元に手を当てた櫻子が署員の報告を聞いている。
目が怖い。
報告している署員から冷や汗が流れている。
「まずは、テロの規模を報告します。」署員が震える声で話す。
ーーー7月21日 9時12分
神辺第一小学校と育田の社で爆弾が爆破。
神辺第一小学校では、教職員と児童を合わせて282名が行方不明。
その報告を聞き、ゆっくりと櫻子が体勢を変える。
表情から一切の温度が消える。
報告している職員の冷や汗が激しい。
「確認された死亡者は2名。生存者は伊達様のクラスに居た28名です。」
「28人?私のクラスは、24人の筈だが?」
「そのテロに遭いながらも逃げ延びた児童がいまして。伊達様の合気道クラブの子と証言していました。」
その言葉に一瞬驚いた顔をした後に安堵した優しい笑みをする。
その笑みは、まるで聖母のように穏やかだった。
職員がホッとしたのと同時にキリッとし報告を続ける。
死亡が確定した2名は、櫻子の目の前で魔石になった子と逃げ延びた児童が持っていた魔石によって確認。
その直後ーーー。
9時30分。
一宮、二宮、三宮、四宮の社が爆発。
その5分後に湊川の社と和田・長田の社が次々と爆発。
消防と警察がテロの確認と消火活動などをしていたところ、怪しい鈴を持った男女が現れて人々を魔石化。消防ができるだけ拾い集めているが、死者不明。警察に問い合わせがきてる行方不明者だけでも1万人を超えている。
櫻子が顔を下に向ける。
しばらくして、顔を上げる。
「わかりました。伊吹真について報告お願いします。」静かに櫻子が話す。
「それなんですが…。伊吹真と言う人間は、大和に存在しないです。」
「どういう事だ?」
「伊達様達がお話している“伊吹真”と言う人物を追いました。がーーー。」
「戸籍すらないです。」
「大和で戸籍がなぃ?あり得ないやろ。偽名の線はないんか!」ヒロが怒号を上げる。
ひっ!と職員が縮み上がる。
「それも考慮して捜索したのですが…。個人情報が一切出てこないですし、捕まえた男から聞き出した連絡先も海外サーバーを経由しています。」
「アイツのアパートは、どうなってる?」櫻子が質問する。
「契約者がそもそも違いました。その者も行方不明です。」
「魔石に変えられているかも知れないですね。アパートにある私物からは?」
「郵便物もなく、個人を特定できる物もありませんでした。それに…指紋が一つも出ませんでした。」
「拭き取った?という事なの?」
「いえ、伊達様と田中様の指紋はでました。でも、第三者の指紋が一つも出ないんです。」
櫻子とヒロが目を合わせる。
「あと、帝都の警察から…。こちらが、伊吹真です。」一枚の写真を見せられる。
その写真には、一人の青年が写っている。
櫻子達が知っている人物とは全く違う。
「こちらの方も行方不明です。帝都の伝達者様からも確認してもらいました。この方が伊吹真です。帝都出身で3年前に警察官として勤務していました。我々が見ていた伊吹真の経歴はこの人物のものです。」
「背乗りか厄介だな。」櫻子が呟く。
※背乗り……工作員や犯罪者が正体を隠すために、実在する人物になりすまし、戸籍などを乗っ取る事。
「あと、奴らの資金源も不明です。しかし、莫大な金が動いています。伊吹真のネットバンクに億単位の動きがありました。」
「我々の目につく場所で、相手は余程自信家なのね。舐められた物だ。」苦々しく話す。
「……ありがとう。引き続き調査をよろしく。あと、何人かの職員に神辺第一小学校へ来てほしいの。」
会議室の空気が凍り付く。
「遺族説明会を開く。」会議室に緊張感が漂う。
“遺族”と言う言葉が重々しくのしかかった。




