第三十八話 ユダが残したもの
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こちらは、外伝となっております。
気になる方は、本編の『菊理姫様!お導きを!』〜定時で帰りたい領主は、今日も魔法犯罪に追われます。〜もご覧になってください。
警官を鼓舞した後、櫻子達は、メリーさんの館に向かった。
櫻子が空間移動魔法を使う。
しかし、失敗して空中に出てきてしまいベチンと叩きつけられる櫻子達。
土埃が舞う。
櫻子となぎさは地面に転がったまま動けない。
一人だけヒロが軽やかに着地した。
「イタタ…。やっぱ苦手なんよなぁ。空間移動魔法…。」櫻子が腰を抑えながら話す。
「櫻子さんでも苦手な物あるんですね。」なぎさが意外な様に言う。
「そりゃあるよ。音楽教えるの苦手やろ。あ!後、外国語も得意じゃないな…。古語で手一杯だし…あとは、何よりーーー。」そこで櫻子はヒロを見る。
「「片付け!」」ヒロと櫻子の声が重なる。
「え!お片付けですかぁ!」なぎさが意外そうに声を上げる。
「早くこんなバカみたいな事終わらして…。帰ろうね。」櫻子は、ヒロに手を伸ばす。
ヒロが、櫻子を起こす。
櫻子が、なぎさを起こす。
それをメリーさんが玄関のポーチから見てる。
「可愛らしいこと…。」メリーさんが呟く。
櫻子達がメリーさんに近づく。
「心配かけたな。」櫻子が取り繕うように言う。
「本当ですわ!櫻子が、いないと可愛い物同盟もまた二人になってしまいますし!」そこでクルッとメリーさんは、玄関へ向いて館の中に入る。
続けて櫻子達も屋敷の中へ入る。
中には、ヴィクターと山男がいる。
山男は、櫻子の姿を見ると喜んで駆け寄ってきた。
「櫻子はん!無事やったんやな!」その目には涙が滲む。
「ヒロのおかげでね。」にっこりと笑いヒロを見る櫻子。
「もう、君達結婚しちゃいなよ…。」ヴィクターがもっともな事を言う。
「で、お客様は何処にいるの?」ヴィクターのぼやきを無視する櫻子。
それに無反応なヒロ。
メリーさん達は、一階の奥にある隠し通路へ進む。
そこには、椅子に縛られ、リボンや花などで装飾された男がいる。
猿轡をされた男がもがく。
「何処まで吐いたの?」櫻子が聞く。
「アジトの場所と伊吹の別の連絡先だけですわ。」メリーさんが答える。
「あの男と同じでしゅね…。」ロッキーが話す。
「じゃ、用無しかな…。」櫻子が呟く。
縛られた男が涙目で首を振る。
「僕がぁ、好きにしていいかいぃ?」ニヤリとヴィクターが笑う。
「どうぞ。私は、何も見てない。」櫻子が冷たく言い放つ。
くるりと踵を返すと部屋を出ていってしまった。
後を追う、メリーさん達。
残ったのは、ヴィクターと男だけだ。
「さて…。久しぶりの新鮮な人体だ。どう使おうねぇ。」ヴィクターが手もみをする。
「うぅー!うぅー!」男の目が見開かれる。
「綺麗な目をしているねぇ。」ヴィクターがメスを出す。
「まずは、目を貰おうかぁ。」ヴィクターのメスが男の目玉を捉え、徐々に近づく。
男の断末魔にならぬ声が部屋にこだました。
七甲山の木々の間を櫻子達が飛行魔法で進む。
向かった先は、亜人の里だ。
亜人の里は、消火活動が終わり、人々が瓦礫などを片付けている。
「櫻子さん!」芝衛門が駆け寄って来る。
「芝衛門さん!長老は!シゲ爺は!」櫻子が芝衛門に尋ねる。
なぎさが下を向く。
「…こっちにいます。」芝衛門が、瓦礫の間を歩き出す。
櫻子の顔が強張る。
そんな、櫻子を見た亜人が節目がちになる。作業している手が止まり、櫻子を目で追う者がほとんどだ。
その目に恨みはなかった。
皆、櫻子の事を心配している目だ。
建てられたばかりの真新しい小屋に通される。
線香の香りが漂う。
櫻子は恐る恐る中に入る。
中には、静かに寝かされた亜人達がいる。
全ての亜人の顔に白い布が被され、胸元には小刀が置かれてる。
その光景に言葉が出なくなる櫻子。
「こっちです。」静かに言う芝衛門。
櫻子の足が動かない。
ヒロが肩に手を置く。
その手を櫻子が掴む。
震えている。
中央、一番奥。
そこに芝衛門が立って待っている。
震える手で櫻子が、そっと顔にかかっている布を取る。
「シゲ爺…。」櫻子が小さく呟く。
はらはらと櫻子の頬を伝い涙が流れる。
「私が…。私が、あんな奴を…。」嗚咽が漏れる。
「櫻。俺がもう少し気をつけなかったからや。」ヒロが櫻子の肩を強く抱きしめる。
ヒロの目にも涙が滲む。
「いや…親父を説得できやん俺の責任もあります!」強く芝衛門が言う。
この中で、一番悔しいのは芝衛門だろう。
櫻子達は、何も言えないでいる。
櫻子は、ふと側に置いてある煙管を手に取る。
「シゲ爺…。タバコ好きだったね…。」
「あぁ、櫻が、楓達と一緒にいるようになって吸わなくなってガッカリしていたな。」ヒロが静かに言う。
「ヒロ。タバコある?」
ヒロは、無言でタバコを出してきた。
櫻子は、タバコを咥えて火をつけ一服すると香炉に供えた。
景色が歪む。
頬を伝う涙のせいか。
それとも、また白馬が時を渡ったのか。
ーーーうちには、どっちかわからなかった。




