第三十七話 帰ってきた女神
毎日18時更新
こちらは、外伝となっております。
気になる方は、本編の『菊理姫様!お導きを!』〜定時で帰りたい領主は、今日も魔法犯罪に追われます。〜もご覧になってください。
※作者、怒りの投稿により、何回も投稿するかもしれません。
景色が見えて来た。
櫻子が緋色の軍服で警察署へ乗り込んだ。
同じく緋色の戦闘服のヒロが隣にいる。
警察署内部に避難していた人はギョッとした様子だったが、テレビを見ていた人が殆どだったので櫻子たちを見たら小さな歓声が上がる。
「豊富さんと丸山さんは何処だ?」櫻子がその辺にいた職員に声をかける。
「櫻子はん!無事だったんか?」豊富が走ってくる。
「はい。留守の間ありがとうございます。」
「えぇよ。でも、俺もこれまでや。浪華に帰らんとあかん。マキが暴走気味なんや。別の被害が出る。櫻子はん。茜茜、借りてええ?」そこで、豊富が茜茜を親指でクイっと指差す。
「茜茜は、私の部下では、ありませんから、本人が望むなら。」
「やってよ。茜茜来てくれへん?あんたいたら千人力や。」
「櫻子酷いネ。なんで引き留めないのヨ!」茜茜が怒る。
「いや…。茜茜は自由に選択できるから…。」
「わかったネ!もう怒った!翔太郎の所に行っちゃうネ!」そう言うと翔太郎と一緒に空間移動魔法で居なくなってしまった。
「なんか、すごく仲良くなってるけど何か知ってる?」櫻子が側にいたなぎさに聞く。
「いえ、私は何も…。」
「そう、時間がない。亜人の里を襲ったテロリストと伊吹真の素行についてだ。」
櫻子が廊下を進む。
そこに丸山が、合流する。
「櫻子さん!無事でよかったです。」短く櫻子の無事を喜ぶ丸山。
「心配をかけました。しかし、騎士団の神器持ちが、さらわれました。私と同じ目に遭っているなら命が危ない。」
留置所には男が転がっている。
畳の上に太々しく寝てる。
「ロッキー頼むで。」ヒロがロッキーに話しかける。
櫻子の肩にロッキーが乗る。
櫻子が、男が転がっている拘置所の扉を蹴る。
畳の上でゴロンと寝転がっている男がこちらを振り向く。
「んだよ。アレ?お前、生きてるの?伊吹の坊主もしくじるんだー。へぇー。」そう言うと興味なさそうに、また反対方向を向く。
「櫻子。あいつは、強がっているでしゅ。」ロッキーが話す。
「あぁ?」
「なんだ?こいつって思っているでしゅ」ロッキーの追撃。
「おとなしく自白しろ。」櫻子が短く言う。
「話すはずないだろう?」櫻子達に向き直り、あぐらをかく男。
「俺の考える事がわかるのか?やばい。やばい。でしゅ。」ロッキーが相手の心を見る。
「櫻子。こいつのアジトは神辺の人工島。動物園の近くでしゅ。ゴロつきの溜まり場のような所のようでしゅ。新人は、たまにしか来ましぇん。来たら指示を出して金を置いていくだけでしゅ。こいつは、一応、連絡先を知っているみたいでしゅ。」
ロッキーの言葉に相手が口をパクパクと動かし、動揺している。
櫻子が男の首に捕縛魔法をかけて、拘置所のドアの前まで手繰り寄せる。
「これで、お前は、用済みだ。亜人を何人殺した?殺すってことは、殺される覚悟があるんだなぁ?」そこで、櫻子は神器のハサミを見せる。
男の体から一本。
糸を紡ぐ。
男が小さく悲鳴を上げる。
「この菊理姫様から賜った縁を切るハサミで…お前の生命の糸を切っても文句は言えないなぁ?」
糸を男の鼻先に持っていく。
「ごめんなさい!やめてください…。」男が幼児のように赦しを乞う。
「亜人達が助けを求めた時、お前はそれを聞いたか?」
櫻子が男の目の前でゆっくりとハサミをーーー。
男が泡を吹いて倒れている。
ハサミは糸が切れる寸前で止まっている。
「お前らと同じことするか。」櫻子は蔑みの目で男を見た。
「最近、アンタ、キレすぎやで…。」
櫻子がギロリと睨む。
威圧するが、ヒロには効かない。
「気持ちわかるが、冷静にならないと足元掬われるで。」
「そうね…。」一瞬、櫻子の表情が和らいだ。
そこに鳥の折り紙がヒューっとやって来てヒロの手に止まる。
【ヒロ!
櫻子は、どうなってるの!?結界が破れたと思いましたら、神域が広がって力が増し増しですわ!櫻子は、無事なんでしょうね!?
あと、私お茶会を開きましたの。お茶会のお客様を是非、櫻子に紹介したくてよ。
追記、お客様は、亜人の里でおいたをしていた人のお友達ですわ。生きているうちに会いにいらして。】
ヒロは、櫻子に手紙を見せる。
「いろいろな人に迷惑をかけてしまったな…。」櫻子がそれを見てしんみりする。
そうして、丸山を見る。
「丸山さん。申し訳ないが、伊吹真の身元の確認とこの男の証言から出たアジトの場所などを警察官に任せたい。できるか?」
「署長に言えば…。まぁ、今はその署長がおらんけど…。」
「じゃ、希望者だけでいいです。集めてください。」
了承をした丸山は、放送で署員に呼びかける。
ゾロゾロと40人ほどの男女が現れる。
櫻子がその前に出る。
「皆様、お集まりいただきありがとうございます。」櫻子の凛とした声が聞こえた。
「皆さんには、賊のアジトの調査と身元確認。それに、市民の避難誘導を手伝ってもらいたいと思います。指揮官は元神辺の伝達者であった丸山晴人に任せる事にする!」その通達に一人の署員が恐る恐る手を上げる。
「自分は、仕事をする分にはいいです。しかし、賊の攻撃を防ぐにはどのようにしたらえぇでしょう?」
最もな話だ。
「もちろん!なんの対策もなく、諸君を戦場になど送らない!私の主神である菊理姫様より、災より身を守り、無事に帰って来れる定めの糸を結ぼう!」そう言うと、神器のハサミを日本刀のサイズにすると一礼する。
櫻子が魔力を高める。
お囃子が聞こえる。
櫻子がハサミを優雅に振り上げて演舞をする。部屋にいた者の体内から糸が出てゆき天へ登る。
人々が驚く中、櫻子の演武はさらに激しさを増す。
人々の糸が一本一本黄金へと染まる。
黄金の糸は一本一本、空を貫き天高く伸びる。
天へ伸びた糸は、菊理姫様がおわす、白山へ結ばれる。
警察署全体が淡い光に包まれる。
誰もが胸の奥から温もりを感じた。
畏怖で震える者もいる。
これから始まってしまった戦に武者震いする者もいる。
しかし、誰もがその奇跡に息をのみ、やがて驚きの声を上げた。
演舞が終わる。
「ささやかだが、今!菊理姫様とあなた達の縁を結ばせてもらった。これで、賊の攻撃を交わす事は、できるだろう。武運を祈る。」




