第三十六話 希望と絶望
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こちらは、外伝となっております。
気になる方は、本編の『菊理姫様!お導きを!』〜定時で帰りたい領主は、今日も魔法犯罪に追われます。〜もご覧になってください。
うちは、マーブル状の世界から別の場所に移る。
色が形を作る。
薄暗い蛍光灯。
無機質な壁。
ソファには丸めがねの男。
伊吹がオールバックに丸めがねでキャスター付きの椅子に座り、魔石を何個かじゃらじゃらしている。
地下牢のような所だ。
緋色の軍服を着た軍人が鎖で繋がれている。
櫻子の様に腕に注射痕がある。
それぞれの胸には、各神器の紋が強く刻まれてる。
「はーい。8本目!」前下がりショートボブの女が、一人の男に注射を打つ。
「あぁぁぁぁぁ!」男が叫び、青白い光になるとコロンと無機質な魔石に変わる。
それを他の隊員が苦々しく見ている。
「あぁ、これじゃ若返りの薬って所か、良くて不治の病に薬って処ね。」女が魔石を拾い上げて残念そうに話す。
「やっぱり、櫻子先輩が最高の材料だったんですかねぇ〜。惜しい事をしました。」キャスター付きの椅子でクルクルと遊びながら笑顔で伊吹が話す。
バラバラになったはずの腕が、元通りになっていた。
「アレク、なんで櫻子は、解毒出来たかわかったか?」テレビを見ている丸メガネの男が伊吹に尋ねる。
「ここの土地の神もどきが禊をした様ですね〜。神は我がルーラー教の指導者のみなのに。」そう言うと伊吹改めアレクが肩をすくめる。
「そっちの神の話は今は関係ないだろう。なんで、その禊が発動したんだ?魔石化は始まっていたんだろう?」丸めがねの男は、とてもつまらなそうにピーナッツを食べている。
「劉さんそれが、わかれば苦労してませーん。」アレクは丸メガネの男を劉と呼んだ。
並ぶとわかる。
アレクと劉は瓜二つだ。
雰囲気が全然違うから別人なのは、わかるが本当に似ている。
テレビでは、太陽の君の記者会見が流れてる。
『今日より、大和は再び魔法の国となる。』そんな言葉が聞こえる。
そこで、奇跡が起きる。
騎士達が淡く輝くと胸の紋章が消えていく。
騎士達の呼吸が楽になる。
明らかにホッとしている者もいた。
劉が、ピーナッツの袋をグシャ!と握りつぶして床に投げつける。
「あぁ〜。」女が残念そうだ。
「禊か……。厄介だな。」劉が騎士達に近づく。
そして、女が持っている魔石を見た。
「魔石になったら元には戻れない様だな。」
「そうみたい。」
「雉、大量に薬を投薬して、早く魔石にしてしまえ。」
「えぇ!良いの♩やったぁ♩もう一回、お薬打ちましょうねぇ。」雉と言われた女がにっこりと笑う。
女は楽しそうに注射器に薬を入れている。
騎士達の口から絶望が漏れる。
「帝が決断された!我らの隊長もじきにやってーーー。」
一番若い男の騎士が叫ぶが、雉が叫んでたい騎士の薬の原液を口に押し込める。
「やったぁ!お薬の材料からやってくるのぉ。早くやって来て欲しいね。徳田隊長。」雉が、注射器を取り出すと騎士の腕に注射を打つ。
ゲホゲホと少年が咳き込む。ガバッと薬の原液を吐き出した。
「悪い子だなぁ。そんな、悪い子には、お薬一杯だねぇ♩」
一本
少年が悲鳴を上げる。
二本
呼吸が乱れる。
三本
騎士の胸に紋章が浮かぶ。
四本
胸の紋章が濃く浮かび上がる。
五本
騎士が光り始める。
やめて…。お願い。
うちとそう年齢の変わらない少年の光が強くなる。
うちは目を逸らした。
「お母さんっ…!」
コロンと小さな魔石が床へ転がった。
「ねぇねぇ!劉!これ!いい薬になると思わない?」アレクが親指と人差し指で四角形を作り、太陽の君を囲う。
「帝ねぇ。良いかもしれない。ちょっと父さんと相談してみるよ。」そう言うと劉が出ていく。
「じゃ、二人目サクッと行っちゃいますねぇ〜」女が一人の騎士に立て続けに三本も四本も注射を打つ。
「嫌だ。嫌だぁぁ!」騎士の声だけが地下牢に響く。
「ダメだよぉ。まだまだ、打つからねぇ!」そう言うとドンドン腕に注射を刺していく。
騎士の胸に紋様が浮かび、光が強くなる。
「いやあぁぁぁぁぁぁ!」
カタン。と魔石が転がる。
地下牢では、騎士の悲鳴だけが轟く。
その頃。
テレビの向こうでは、魔法が解禁されたと知った民衆が歓声を上げていた。
うちは、気が付くとマーブル状の世界にやって来た。
『これより先は、希望より絶望の方が多く見る。帰るなら今だ。』白馬が提案してきた。
しかし、うちは首を横に振る。
見届けなければと思う。
そう、強く思った。
「大丈夫。うち!ちゃんと見届ける。」
『そうか…。』そう言うと白馬と時空の旅に出た。




