第三十五話 大和の夜明け
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こちらは、外伝となっております。
気になる方は、本編の『菊理姫様!お導きを!』〜定時で帰りたい領主は、今日も魔法犯罪に追われます。〜もご覧になってください。
うちは、目の前の神聖な儀式に言葉を失った。
そうして、気が付く。
やはりーーー。
内宮の帝である太陽の君が、うちをしっかりと見ている。
神楽が終わった太陽の君がうちと白馬の方を向いている。
うちは、太陽の君の目を見て息を飲む。
封印を解く儀式を覗き見して、怒られてしまったような気分になる。
『行くぞ。』白馬が短く言い。景色が遠のく。
「其方はーー。」太陽の君が何か言いかける。
振り返ろうとするとーー。
『振り向くな。』白馬に止められた。
うちは、慌てて前を向いた。
前は、絵の具を溶かしたようなマーブル状の世界だ。
「白馬様…。今、太陽の君に…。」
『気にするな…。』バッサリ会話を切られた。
ならばーーー。
「あの龍は何だったのだ?」
『あの龍神は大和の龍脈を培っていた神だ。100年前、その龍神を封印する事で魔術を使いにくくし、内宮と外宮なる物を作って魔術師を結界内で生活するようにしたのだ。』
「その結界が壊れたらどうなるのだ?」
『元に戻るだけだ。』
いや、そうやけど…。もうちょっと説明がないのだろうか?そんな事を思っていると。
『これ以上の説明などない。』白馬が答える。
『これより、先も天照大御神の子がいる。先ほどは、其方が反応しそうになったので、時の空間に入ったが、絶対に反応するな。帰れなくなるぞ。』
“帰れなくなる。”の一言にゾッとし気を引き締める事にした。
うちは、幽霊。
うちは、幽霊。
うちは。幽霊。
色が形づく。
多くの人々が集まっている。
大きなレンズが付いた大きな箱を持った人が多い。確か、アレは…。
カメラと言ったか?テレビで使うのは、本格的で大きいと以前、櫻子が教えてくれた。
そこに先程の内閣総理大臣が入ってくる。その後ろには、太陽の君と月の君。そして、内宮の関白である九条と太政大臣の近衛がいる。壁には、静かに徳田・三条・櫻子が立っている。
みな、緋色の軍服を着ている。
報道陣はそんな櫻子達をチラチラと見てヒソヒソしている。
「大変遅い時間にお集まりいただき、大変恐縮でございますが、現地では、警察・消防・自衛隊関係者の皆様が夜を徹してテロ組織の鎮圧と救援活動に当たっています。また、こちらの対策本部に関しましても、防衛大臣を筆頭に全体の情報の整理と集約にあたっております。そうした中で私から重大な発表が二点ございます。」そこで、フラッシュが焚かれる。
あちこちから、眩しい光が内閣総理大臣を襲う。
「まず第一点は、今回のテロの被害者が石に変えられ、回収されていると言う報道に関してです。この報道は、事実であります。ただいま、大和は戦後最大の脅威と戦っている所です。」総理大臣の言葉に記者たちが響めく。
その場に居た者全員が信じられなかったのであろう。
「証拠は!証拠はあるのですか!?」一人の記者が質問する。
「証拠なら、民間の方の動画撮影などもありますが、こちらを…。」そう言うと九条が、前に静々と出る。
記者達は、正体の分からぬ公家に首を傾げる。
布を広げ、吊るす。
九条が、三条と櫻子に合図をする。
三条が前に出て布に魔力を流す。
映像が流れる。
記者からどよめきが起こる。投影機器もないのに映像が現れた事に驚いている様だ。
鈴の音と共に爆音と光が満ちて人々が魔石に変えられている様子が映る。
次に櫻子の映像だ。
目の前で一人の子供が魔石に変えられている様子。
カメラが、動く。
「しかし!これらが作られた映像とは考えなかったのですか?」記者が叫ぶ。
信じられないのだろう。
「これは、私達の記憶です。作られた物ではありません。」三条が静かに言う。
「記憶!?」記者達が混乱している。
「そして、この人体の石化。いや、魔石化に対して対抗すべくこの大和が長年秘匿してきた事をお話しいたします。我が大和国は、かつて魔法大国でした。100年前の大戦で敗退した事を機に禁術として秘匿し、術師を封印しました。しかし、今回のテロにより、国民全体の危機と感じーーー。」そこで総理大臣は、一呼吸おく。
「ーーー魔法を解禁し、テロ組織を戦う事に決めました。」
記者達の動きが止まる。
頭がついていけないのだろう。
我に帰り、シャッターを押す。
様々な質問が飛ぶ。
「ご質問は、お時間を用意するので、その時にお願いいたします。まずは、こちらにいらっしゃる方をご紹介させていただきます。こちらが、封印されていた国の帝であります太陽の君・花園天命主であります。太陽の君。こちらに…。」
促されて、太陽の君が進み出る。
「ここに話すと国民に朕の言葉が伝わるのか?」総理大臣に確認する太陽の君。
「えぇ、そうです。」
「では、朕のやり方で民に語りかけようと思う。」そう言うと太陽の君は、鏡を出した。
うちは、その鏡を見たことがある。
歴代の帝の神器だ。
太陽の君が鏡に手を添え、魔力を流しはじめる。
「封印されていた、二柱の龍は今、大和へ還った。」
その声が響いた瞬間。
空気が震えた。
その場だけではない。
大和の空の下にいる全ての者の心の中へ、太陽の君の声が届く。
驚いて夜空を見上げる人。
仏壇に拝む老人。
避難所で啜り泣く子供。
警察官。
自衛官。
病院の医師。
全ての地域で、全ての大和の民の心に太陽の君の声が照らし出される。
「民よ。驚くであろう。
だが、これは夢でも幻でもない。
朕と月の君の先代は、民の平穏と平和を願って二柱の龍を封印した。
しかし、ここに来て賊によって大和の民の命が危ぶまれている。
朕と月の君は、100年の時を経て、その封印を解いた。」
太陽の君が言葉を紡ぐたび、その声は無機質な機械音ではなく、心の奥に直接響く。
遠く離れた離島にも
山奥の山小屋でも
海上の巡視船でも
大和の民であるなら誰一人例外なく、その声を聞いていた。
鏡から黄金の光が解き放たれる。
深夜なのに朝のように光が輝く。
突然の光に隠れていた人々が窓辺に集まる。
その光は、国民の不安を包み込み、凍てついた心を優しく抱き寄せる。
二柱の龍が全国を駆け巡る。
人々が、空を見上げて驚く。
「……今、見えた?」
「…え?ドローンとかじゃなくて?」
「あれ、生きているの…?」
そんな声が全国で龍神の姿が確認される。
龍が飛び去ると、大地から淡い光が立ち上がる。
全国の社が淡く光を放ち、本来の役割を取り戻す。
「今日より、大和は再び魔法の国となる。
民よ、恐れるな。
今日より、我々は、手をとり戦う。
我らはもう、隠れぬ。
大和は決して滅びぬ。」
大和の夜明けがやって来た事を全国民が感じた。




