第三十二話 かよの神器
そちらは、毎日18時投稿します。
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こちらは、外伝となっております。
気になる方は、本編の『菊理姫様!お導きを!』〜定時で帰りたい領主は、今日も魔法犯罪に追われます。〜もご覧になってください。
うちは、白馬に連れてこられ綺麗な小川へ来た。
清らかな水が静かに流れ、遠くの田園は風を受けてさらさらと揺れている。
天を仰ぐと澄み切った青の中に様々な色の魔素が煌めいている。
白馬が前屈みになる。
『降りよ。』
うちは、白馬から降りる。
久しぶりの地面だ。なんだかふわふわする。
「ここは、どこなのじゃ?」
『高天原の端の端だ。我と一緒にいるなら神気に当てられることもない。その岩にでも腰掛けて休んでおれ。』そう言うと白馬は小川の水を飲み始めた。
うちは、言われた通りに岩に腰掛けて自分の神器を出す。
うちの神器は、櫻子に加護を与えた神である菊理姫様の神器ではない。
うちは、稚日女尊様から神器を賜った。
神器を賜ったのに…。うちの神器は形を成さなかった。
その代わりに自分が、思う物を作り出す事が出来るようになった。
槍を出そうと思ったら槍になり、刀にしようと思ったら刀になった。
人々は、それを万能と言い。うちを“奇跡の姫巫女”などと申した。
ーーー違うのに。
神器の手入れでヒロに預けた時
うちが菊理姫様の眷属ではないのは、すぐに見破られた。
櫻子にバレるのが怖くてヒロにお願いして黙ってもらってる。
うちは、ぎゅっと神器を握る。
今は、ハサミにしている。
でも、これもとりあえずの形でしかない。
うちの望む形とは違う。
選ばれし時に選ばれた者の前に神託の社が現れる。
その時の祈りによって、神器の形が変わる…。
神器は、普通、槍や刀か鏡や扇などだ。
ーーーうちは、ただ。どれもしっくりこなかっただけやのに…。
櫻子は、神器を賜った時。
何故、ハサミにしたのだろう?
恥ずかしい。
うちは、自分が恥ずかしい…。
櫻子の過去を見て、事変の様子を見て…。
櫻子は、なんでも出来るから、ひょいひょいと事件を片付けていると思った。
事変に関しても、ちょっと大規模な震災と同じぐらいだろうと思っていた。
自分の想像力が足りないのが、本当に恥ずかしい。
領主の跡継ぎだという驕りで、野次馬の様に追悼式へ行こうとした自分が恥ずかしい。
正直に言わないで、騙し、誤魔化し、現代を生きていた自分が、恥ずかしい…。
「稚日女尊様は、なんでうちなんかに神器を与えたんやろう。それに何でうちが、櫻子と出会ったんや…。」ポタポタと涙が溢れる。
『さぁな?それが、定めの糸だったのだろう?』水を飲み終わった白馬が話しかける。
「定めの糸?」
『左様。定めの糸だったのだ。』
「運命という事か?」
『違う。運命の糸は自らの手で手繰り寄せられる。人が自由に出来るモノだ。』
難しい事ばかりや。うちは、頭がパンクしそうだ。
ふと、白馬が顔をあげ、遠くを見る。
『小川に足を浸して良いそうだ。許しを得たぞ。』
「え?」
『履き物を脱いで、小川に足を浸せ。』
「おっ恐れ多い…。」
『天界から其方をしばらく見ていたが、其方に恐れなどないではないか。』白馬がバカにしてくる。
何だか腹が立つ!もう、どうなってもいい!
うちは、ローファーを脱いで靴下も脱ぐ。
腰をかけている岩から反対を向いたら足が浸せそうだ。
立ち上がると制服のスカートを整えながら斜めに腰掛ける。
どうなってもいい!
ゆっくり、足先から小川に足を浸す。
ーーーーーー。
足を浸した途端。
黄金の眩い光がうちを包み込んだ。
櫻子の魔石化を止めたあの光と似てる。
思わず、目を閉じて、光に身を任せる。
自分が、感じていた劣等感や迷い、罪悪感が洗い流されていく様だ。
運命の糸は、自らの手で手繰り寄せられる。
白馬の言葉を思い出す。
うちはどんな糸を手繰り寄せたのだろう。
でもーーー。
“うちが、決めた事や。”
そっと目を開ける。
“決めなかったことも、うちが決めたことや”
大事な時に取っておいただけだ。
頭がスッキリした。
うちは、足を小川から出す。
ハンカチで足を拭う。
すると、ゴロンと卵が出てきた。
呆気に取られているとーーー。
『ほう、其方を見かねた異国の神が其方に餞別を送ったようだ。』
うちが、卵を拾う。
「食べたら良いのか?」
『……何でも食そうとするな。育てるのだ。』
そうして、また白馬の背に乗って過去の旅に出た。




