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『菊理姫様!お導きを!』〜英雄の誕生〜  作者: ぽんぬ


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第二十八話 奇々怪界

毎日18時更新

こちらは、外伝となっております。


気になる方は、本編の『菊理姫様!お導きを!』〜定時で帰りたい領主は、今日も魔法犯罪に追われます。〜もご覧になってください。

マーブル状の世界から色が浮かび上がり、形が作られる。


亜人の里を遠くからなぎさ達が見下ろしている。


里は炎に包まれ、泣き叫ぶ声が聞こえる。


なぎさが口元を押さえながら首を横に振り、今見ている物を拒むように感情を押さえている。


しかし、目に闘志を宿し、大斧を握ると駆け出そうとする。


「なぎさ!待つヨ!」茜茜がなぎさの肩を掴みとめる。


「なんでですか!早く行かんと!」


「ワタシが居た研究所のヤツならなんらかの毒や魔法を使っているはずネ。じゃないと亜人達があんなに簡単に捕まるはずないヨ。迂闊に飛び込んでは、ダメネ…。」茜茜が悔しそうに言う。


「でも、それなら…。どうしたら…。」なぎさが泣きそうだ。


「そこは、ワタシに任せるネ。お前!ワタシは、アイツら殴ってイイのよネ?」茜茜が豊富を指差す。


「お前じゃなくて、豊富翔太郎。それが、どないしたんよ。」


「ワタシに少し魔力を寄越すネ!ワタシだけじゃ流石に魔力が足りないヨ!狐狼一族の力を見せてやるヨ!」そう言うとふふんと茜茜が笑う。


「えぇの♩」豊富が手をいやらしく動かしながら茜茜に近づく。


「変な事だけはするなヨ!時間がないのネ!」茜茜が引いている。


「はーい。」と短く豊富が返事すると肩に手を置く。


なぎさは、何が起こるかわからず見守る。


「翔太郎!初めからフルパワーで行くからしっかり魔力を流すネ!」そう言うと茜茜が大きく息を吸うとーーー。


口から大量の桃色の煙を吹き出した。


「ちょ!お前!あぁ!魔力が!ちょっと待てっあぁぁ。アヒィ!」豊富が悶える。


茜茜はそれでも続ける。


桃色の煙は、里をゆっくりと満たしていく。


さらに大きく息を吸うと一層大きく桃色の煙を吹き出す。


時折、豊富の情けない声が聞こえる。


なぎさがそっと目を逸らし、耳を塞ぐ。



「ふぅ、こんな所ネ!」茜茜の声だ。


体をヒクヒクしている豊富と満足そうな茜茜がいる。


「茜茜さん、何をしたんです?」耳をへにゃっとさせたなぎさが話す。


ちらっと豊富を見たが見ないフリをした。


「狐狼一族秘伝の技!広範囲幻影魔法!酒池肉林ネ!」


「幻影魔法!?あの規模を!嘘やん!」なぎさが驚く。


「それが狐狼一族の強みネ!但し、大規模に術をかけるには協力者が必要で…。あぁなるね。」そして茜茜が豊富を見る。


豊富は、顔を押さえながら静かに震えて


「もう、お婿に行けない…。」と呟いていた。


「確かに魔力は結構もらったけど翔太郎の方がまだまだ魔力あるネ!」茜茜が声をかける。


「魔力の問題やない!俺の貞操の問題や。」そう言うとムクリと起き上がると茂みに消えて行く。


「幻影魔法なら術が完了するのに時間かかるな…。俺は、こっちにおる。術が完了したら教えてや。」ガサガサと茂みの中へ消えて行く。


豊富の背中が遠くなり。


景色が遠のき、再びマーブル状の世界へ包まれた。


景色が見えてくる。メリーさんの館だ。


食堂だろうか?

大きな長いテーブル。くすんだテーブルクロス。

中央には豪華な花瓶に花が生けられている。しかし、それは枯れている。

西洋の調度品のほかに、アジアの民芸品なども置かれている。

それがまた不気味だ。


そこに白衣を着たリッチとメリーさんが座っている。

なぜか、山男が紅茶を給仕している。


「結界が崩壊した事なんて僕ぁ、経験した事ないからなぁ。そんなのステイツ合衆国と戦争していた頃。生きていた時のしか経験ないよぉ。」困ったように、白衣のリッチ。ヴィクターが話す。


「私もその頃には亡くなっていましたから、わかりませんわ。山男はどうなの?」


「おいも、それぐらいに生まれたのでわからん。」メリーさんに紅茶を置きながら話す。


三人がため息をつく。


「櫻子君も時々言っていたけどぉ。百年って短いようで長いよねぇ。」ヴィクターが呟く。


「でも、櫻子に何かあれば、なんとかしないといけませんわ。櫻子がいなくなったら、ここは…。」そこで、メリーさんの言葉が詰まる。


不意に牛女の蝶々がパタパタと飛んで来た。


手紙を読むと、メリーさんは苦虫を噛み潰したような顔になる。


「やっぱり!ユダは伊吹でしたわ!」そう言うとドン!と机を叩く。


そしてはっとした顔をするとーーー。


「山男!あの男から花の種を貰っていましたわよね?どこに植えましたか?」


「えぇと…。お屋敷の西側の門の近くと裏庭の花壇と正門横の花壇やな。」


メリーさんが、結界が傷んだ場所を地図で照らし合わせる。

種を植えた場所と結界の綻びが全て一致している。


「あの男ぉ!可愛くありませんわ!私を良くもここまでコケに致しましたわねぇ!」メリーさんの魔力が禍々しく立ち込める。


その姿を恐れてヴィクターと山男が椅子の陰に隠れる。


「しかも!櫻子だけでなく山男まで出し抜いて!私のお友達を!二人もぉ!」物が飛び、ポルターガイストが発生する。


「ふふっ、いいですわ。その可愛くないお茶会!私も参加させていただきますわぁ!」メリーさんが両手を天に掲げる。


ドンッ!屋敷が揺れる。


天井のシャンデリアがゆらゆらと揺れて埃がパラパラと落ちる。


ヴィクターと山男がテーブルの下に避難する。


高らかに笑っているメリーさん。

その笑い声に応えるように、屋敷全体が低く唸り、震え始める。


ヴィクターと山男はテーブルの下で頭を抱えて震えている。


不意にメリーさんが含み笑いをすると扇子を広げて口元を隠す。


「早速、お客様がいらしてよ。皆様!おもてなしの時間ですわぁ!」


メリーさんの声が高らかに屋敷に響いた。

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