第二十六話 消えゆく輪郭
毎日18時更新
こちらは、外伝となっております。
気になる方は、本編の『菊理姫様!お導きを!』〜定時で帰りたい領主は、今日も魔法犯罪に追われます。〜もご覧になってください。
すぐに豊富が動く。
広範囲の結界を張ってヒロや茜茜達を衝撃から守る。
眩い光が街の人を包み込み形が消えてゆきコロンと魔石に変わる。
爆風によってバラバラと魔石が落ちていく。
ヒロ達はその光景を呆気に取られて見ている。
「なんやこれ…。」豊富さんがやっとの事で口を開ける。
茜茜がブルブルと震えている。
「わっワタシ、見た事あるよ…。」
「どう言うことや。」
「ワタシ研究所から逃げて大和に来たヨ。その…研究所で…。」茜茜の顔から血の気が引ける。そして、茜茜は、唇を強く噛むと座り込む。
「それ以上喋らんえぇ。狐の嬢ちゃん。」豊富が、茜茜の側による。
「ここは、大和や。神々に見守られ、豊かな魔素が流れる奇跡の大地。そんな国で神の如く力を使い無茶苦茶やったらな。天罰が降るんや。」いつになく豊富が真剣だ。
茜茜が顔を上げる。
「ほいでな。俺は、ここに神さんから預かってる神器を持ってる。この意味わかるか?」
茜茜が小首を傾げる。
「俺は、そいつらぶっ飛ばす権利がちょこっとばかりあるんや。狐の嬢ちゃん。名前は?」
「李茜茜。」
「茜茜にもこんなふざけた奴らぶっ飛ばす権利分けたるわ。ここには神さんがおる。見守ってくれとる。せやから、もう震えんでもえぇ。」そう言って豊富が手を差し出す。
そっと、その手を茜茜が取ると、ぐいっと豊富が茜茜を立ち上がらせる。
「茜茜なら大丈夫や。逃げて大和まで来たんやろ?その根性あるなら大丈夫!」そこで豊富がサムズアップをした。
「急がんといけん理由が増えましたね。」ヒロが苦々しく言う。
「警察内部も崩壊してるんですわ。」そこに車から降りてきた丸山が話す。
「櫻子さんの誘拐、人体の魔石化、亜人の誘拐、これ以上嫌なことないやろな?」豊富が指を降りながら話す。
「大夢!急ぐでしゅ!櫻子の神器が!」その時ポケットの中にいたロッキーが話す。
「豊富さん!俺、急ぎます!」ヒロが飛び立つ。
「丸山のおっさんは街の被害状況と魔石を回収している奴を抑えてくれや!」豊富が指示を出す。
いつの間にか、日が暮れ始めていた。
空気は、午後の熱気を失い、夕暮れの冷たさを帯び始めていた。
帰宅する人々で賑わう時間だろう。
今の神辺には、人の気配がしない。
景色が遠のく。
色が形を作る。
違う場所にきたようだ。
無機質のコンクリートの壁。
流れるニュース。
ソファには伊吹はいない。
椅子に座っていた櫻子の胸元が完全にはだけている。
胸の中央に菊と波の紋章が浮かび上がっている。
櫻子の息が苦しそうだ。
腕には、注射痕が増えている。
そこへ伊吹がやってくる。
丸めがねにオールバック。張り付いたような笑顔。
「すごい!新記録ですよ!まだ意識があるんですか!これは、本当に成功するかもしれませんね!」ニコニコととても楽しそうだ。
「櫻子先輩。コレ何かわかりますか?」そこに伊吹が液体の入った小瓶を振った。
「この薬、若返りの薬なんですけどぉ。20歳も若返ったみたいですよ〜♩」
そして、櫻子の耳元まで口を近づけて。
「流石、櫻子先輩の教え子ですね?」そう言うとニッコリ笑う。
櫻子の目が大きく開く。
「お前えぇぇぇぇ!」
怒りで魔力が暴走しそうになるが、外に逃げられない。
「うぅぅぅぅ!あぁぁぁぁ!」櫻子が悲鳴を上げる。
暴走した魔力が逃げ場を探して、櫻子の体内を駆け巡る。
青白い光が櫻子の体内を蛇のようにのたうち回っているのが見える。
胸の紋章の光が強くなる。
伊吹は、それを面白いおもちゃで遊ぶ子供のような表情で、その様子を見つめてる。
櫻子の体から光が溢れ出す。
人々を魔石化させた光と同じだ。
不気味な青白い光が、室内を強く照らす。
伊吹が、口元を押さえて、恍惚とした笑みを浮かべた。




