第二話 若かりし頃の二人
こちらは、外伝となっております。
気になる方は、本編の『菊理姫様!お導きを』〜アラフォー領主ですが、引退したいので伝説の姫巫女を育てます。〜もご覧になってください。
毎日18時投稿予定
白馬が駆ける。
うちは、反射的に目を瞑った。
『ついたぞ』白馬に声をかけられ目を開ける。
そこは、公園の駐車場だった。
人影が二つある。櫻子とヒロだ。
二人とも今より、幾分か若い。
『ここは、二人が初めて会った場所だ。二人は、神辺の前は紀州の伝達者をしておった。』白馬が説明してくれた。
「ホンマにおった‥。」ヒロが櫻子を見て驚愕している。
「何それ?私は、二次元とかの存在なの?」櫻子が呆れてる。
「いや、内宮から連絡来ても俺の素性知ってドタキャンしたり、住所送られて、時間になったら迎えに来い言うて現れへんやつ多かったから。」ヒロが照れながら話す。
「そっパートナーに恵まれなかったのね。でも、今回も恵まれてはないわ。私は、奥州の大震災を引き起こした一族の者だから。公爵家を剥奪された伊達家の者だ。」櫻子が吐き捨てるように言う。
「難しい話は、知らんけど。資料を読んで思ったんわ。アンタ一人で頑張ってきた事やな。」ぽりぽりと頬を掻きながらヒロが言う。
「俺かて、忌守やで。自分で気にした事ないけど。」ヒロが真っ直ぐ櫻子を見る。
「私が生まれた地域は、あなたの職業や生まれた地域を差別する人はいない。むしろ、私の神器を手入れして欲しい。」櫻子が手を差し出す。
「まかしとき。」ヒロが手を握り返し握手をした。
『次に行くぞ。』
グッと体が前に持っていかれる。
音もなく、白馬が駆ける。
ふわりと浮遊感が感じたら、うちは静かな波打ち際に来ていた。
満月の夜だ。海面に月の光がキラキラと映し出されてる。
目の前を二人の男女が通りすぎる。
櫻子とヒロだ。
二人ともニコニコして波打ち際を歩いている。
櫻子は、靴を脱ぎ波に足を浸している。
「櫻は、伝達者引退せーへんの?」ヒロが櫻子に聞いている。
「できたらええけど。後任がおらん。」
「そんな事言うても結界なんてみんな気にせえへんよ。事実、櫻が来るまで結界なんて誰もはってなかったんやろ。」ヒロが不貞腐れる。
「ほっておいて奥州の大震災のようになるで。ヒロも神辺の大震災経験しているやん。」櫻子がヒロに海水を蹴って駆ける。
バカな事を言うなと言わんばかりに感情的に水がキラキラと跳ね上がる。
「俺は、櫻子とこのまま一緒に何処か行ってもええけどな。」ヒロも海を蹴り返す。
バシャバシャと二人が楽しく波間で遊んでいる。
『ここは、紀州の弱浜だ。』白馬が教えてくれた。
「さっきの櫻子達も今の櫻子達も凍結時代の櫻子達とやつだろうか?」私が、疑問を白馬に問う。
『そうだ。平生28年だ。事変の3年前という所だな。しばらく見たいか?』白馬が尋ねる。
うちは、首を縦に振った。
びしょびしょの男女は、車の陰で着替えをした後に車で移動した。
今と車が違う。
かなり年季の入った淡いクリーム色の軽自動車だ。
車好きのヒロらしくないチョイスだ。
車がするすると道を縫って走る。
一軒の小さな古民家に停まる。これもだいぶ今と違う。
『紀州で暮らしていた家だ。当時、二人はあまりお銭がなかったようだ。』白馬がうちの疑問に答えるように話す。
車から二人が降りる。
白馬がそのまま建物にぶちあたろうとする。
「危ない!」反射的に目を閉じて顔の前に腕を出す。
予想していた衝撃はない。
『案ずるな。我らは、霊体のようなものだ。』
ホッと胸を撫で下ろす。
「ただいまぁ〜。」櫻子が家屋に挨拶をする。
「櫻子〜。おちゃえり。」舌足らずな声が聞こえてきた。
頭のサイドにふわふわの白い毛、長く縞々模様の尾っぽ。体は灰色の毛で包まれた小猿がかけてきた。
『コモンマーモセットと言う動物に擬態しているが、あれはサトリだ。』白馬が驚愕の事実を言う。
「え!あんな可愛いのが!」うちは、驚きが隠せない。
うちが、知っているサトリは、毛むくじゃらでボソボソと喋るサトリだ。
あんなに可愛くはない。
そこににゃー!と甲高い猫の声が聞こえる。楓だ。
紅葉と竜胆もいる。二人は子猫だ。可愛い。
「みんなただいまぁ〜。」櫻子が皆を撫でる。
サトリがヒロの肩に乗る。
「ロッキーただいま。」
「おちゃえり!大夢!」ロッキーと呼ばれたサトリがとても嬉しそうにヒロに撫でられている。
「私が、先に風呂に入る!」
「じゃ、俺も一緒に入る!」
「あかんやろ!崎陽におる彼女に怒られるで。」
「あれは、友達で元カノや言うたやないか。」
「旅行して、お泊まりする。異性の友達で元カノって信じられるか!」櫻子が捨て台詞を吐いてバスルームに行く。
「あれは、ヤキモチでしゅ。いい加減櫻子に気持ちを言えでしゅ。」ロッキーが話す。
「そうは、言ってもなぁ。ホンマに友達やし何もないのに。むしろ、櫻との方が色々やっとるで。」ヒロが、話す。
楓がヒロに頭を擦りつけた。ロッキーは、竜胆の側へ行き毛繕いをしている。
シャワーから上がった二人は、袋麺の焼きそばを仲良く作って一つの皿で二人で食べている。
ロッキー達も各自餌を食べている。
時間がゆっくり流れているようだった。
『次に行こう。』白馬が促す。
うちは、もう少し穏やかな櫻子たちを見ていたかったが、白馬の言葉に従った。




