第十九話 迫る嵐
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こちらは、外伝となっております。
気になる方は、本編の『菊理姫様!お導きを!』〜アラフォー領主ですが、引退したいので伝説の姫巫女を育てます〜もご覧になってください。
景色がはっきりしていく。
自宅だ。
ヒロが、魔道具を大きめのマジックバックに入れている。
ガシャガシャと乱暴にマジックバックに魔道具を詰め込む。
かき集めるだけかき集めているのがわかる。
「ヒロ!早くするネ!」茜茜が急かす。
「わかってるわ!」ヒロは、櫻子の着替え一式を最後に詰め込んだ。
「楓ちゃん達は、キャリーに入れて猫ちゃんグッツも車に積みました。」なぎさが話す。
ヒロが、マジックバックを軽自動車のラゲッジに積み込み。ふと、止まる。
徐に車体の下に潜り込むと
「あいつ腹立つな!」と言い出てくる。
「ホンマ!顔だけじゃなくて、やり方もムカつくわ!」そう言って小さな機械を取り出した。
「それは、何ね?」茜茜が覗き込む。
「GPSや。」そう言うとヒロは、家の前に路駐をしていた車に取り付ける。
「こいつ、いっつもここに停めおって腹立っていたから丁度ええわ。」そう言うと軽自動車に乗り込み移動する。
「どこに逃げるのよ?」茜茜が話す。
「兜山のダンジョンだ。」
「はぁ?この後に及んでダンジョン探検か?」茜茜が呆れる。
「大夢さん。それはないですよ。」なぎさも呆れている。
「ちゃうわ!あそこのダンジョンには、俺と櫻の緊急避難所があるんや!そこならまだ伊吹に教えていない。俺が、教えるのやめようって言ったからな。」ヒロが軽自動車を加速させる。
クラクションを鳴らされながら車の間を進む。
「ロッキー!この先の交差点突っ切って大丈夫か?」ヒロがロッキーに聞く。
「危険でしゅ!なんか嫌な感じしましゅ!認識阻害魔法をかけた方がいいでしゅ!」ロッキーは、くるくると目を回している。
「あいよ。」そう言うと軽自動車に認識阻害の魔法を発動させた。
「でも、問題があるんよな…。」ヒロがぼやく。
「何ネ?」
「牛女、櫻じゃないと話聞いてくれへんねん。」ヒロが、車にぶつかりそうになるのを巻一発で交わしながら言う。
なぎさは、運転が怖いのか顔が引き攣る。
「何でそんな所に秘密基地作るのヨ。」茜茜はヒロの運転を気にしていない。
むしろ、ヒロの言葉に呆れている。
「しゃーないやん。魔素が多くて、素材も多い。武器も揃えやすいんよ。それに…。櫻がいるのが前提だから…。」ヒロの目に櫻子を想い心配しているのが見えた。
その胸には、櫻子の神器のハサミが、大切そうにポケットに入っていた。
ヒロ達が遠のき、色が別の形を作ってゆく。
館の屋根の上にメリーさんが乗っている。
日傘をくるくると回しながら亜人の里の方を見ている。
メリーさんの館からも里が焼かれているのが見えた。
隣にいる山男は怯えている。
「櫻子はんに伝えなくてえぇんかな?」山男がメリーさんに尋ねる。
「あの男も連れてきてしまいますわ。」
「メリーはん。何で伊吹はん嫌いなの?」山男が小首をかしげる。
「女の勘ですわ。あの男。顔の作りが左右対称すぎますわ。」
「メリーはん。好きやん。」
「作り物ならともかく、生き物であそこまで左右対称なんて不気味ですわ。櫻子も綺麗な顔をしていますが…。なんと言うか生きているのに作り物すぎますわ!あの男は!」
「おいは、わからん。」
そんな会話をしている間にメリーさんの元にひらひらと蝶々の折り紙が舞ってきた。
メリーさんは、それを受け取ると中身を読む。
表情がだんだん険しくなってゆく。
持っていた日傘がポトリと落ちる。
風が舞う。
日傘が飛んでいく前に山男がキャッチした。
山男がメリーさんを見る。
メリーさんから笑みが消えている。
「これは………。」
メリーさんの呟きは、風にさらわれて、七甲山へと消えていった。




