表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恩人の彼の勘違い  作者: maruko


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/45

9

 私の呟きで絶望したアルチェの顔は、それまで見たこともない、あり得ないほどの醜悪な顔だった。

 釣り上がった目は、射殺そうとするかのように私を睨み、眉間には年若いのに深く皺を寄せている。悔しいからか唇を噛み締めている為、そこからは血が流れてきていた。


 (どれだけ悔しいの?)


 そもそも、今日彼女が昼休憩の時、相手は誰かわからなかったけれど、退学になりそうな理由を小声ではあるけれど、叩きつけるように話していた。それが要因なのであれば、こんなことになったのも自業自得と言える。

 彼女が悔しがるという考えを持つ事自体、おかしな話だと私は思う。

 悔しがる資格もアルチェには有りはしない。


 未だに睨みつけるアルチェを、放って立ち去りたいのは山々で、先程から何度も何度も試みている私だが、実はどうやら腰が抜けてしまって立てないのだ。

 足に全く力が入らない。


 こんな事は初めてで、対処の仕方も分からない。

 唯一助けを求められそうな、一番近くに居るエルマール様は、私の片手を持ち上げたまま、微動だにせずアルチェを睨んでいる。


 外から見たら、階段の手摺に掴まったまま、私を睨むアルチェを睨むエルマール様を見上げる私だ。


 ややこしい


 頭の中で説明文のように展開させた文字を見て、考えるんじゃなかったと後悔した。


 その時、エルマール様に声が掛けられた。


「エル!クルーズ伯爵令嬢は、立てないのではないか?」

「!」


 その声にエルマール様が反応して、漸く私の懇願する顔を見て下さった。

 でも真顔。

 ちょっと怖い。


 だけどマリオネットにされたとはいえ、助けてくれたのは事実。

 漸く視線を私に向けてくれたのだ、言うべきことはちゃんと言おうと思い、私は口を開いた。


「カンテラ伯爵令息様、助けて頂きありがとうございます」

「⋯⋯ん、」


 エルマール様は、私の言葉に朝の挨拶と変わらない返事をして下さったけれど、そのままだった。


 えっと、立てないのではないかと、先程カイル殿下に指摘されましたよね?


 私の無言の問いかけにも、エルマール様は微動だにしない。それはそうだ、専属侍女のユリアにすら、私は「あ、うん」の呼吸ができないのに、隣の席だというだけで、エルマール様と無言の意思疎通などできるわけがない。


 そんな事を考えつつ、何とか自力で立とうと試みていた私は、急にフワリと自分の体が宙に浮いたのを感じた。


「「えっ?」」


 驚いたのは私とエルマール様。同時に驚きの声が漏れた。


 あろうことか、いつの間にか、私は恐れ多くも隣国の第二王子殿下に、王女様のように抱き上げられて、その場を移動することになっていた。


 エルマール様は王子殿下と並んで歩いているのだけれど、私の手は離さないままだった。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ