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アルチェが退学?
彼女は一体何を言ってるのだろう。
でももしそれが本当なら、こんなに嬉しいことはない。母娘2代に渡って辛酸など舐めていられるか!
私は、そう思った時、どうやら口元に笑みを浮かべていたようだ。
アルチェの声が聞こえなくなったあと、ユリアに言われてしまったの。
「お嬢様、先程笑みが黒かったです」
お母様のニヤリとした怖い笑みを、どうやら私も浮かべていたみたい。
しょうがないでしょう、母娘は似るものよ。
そう思った時、叔母のカティリアとアルチェが浮かんでしまった。
そうよ母娘は似るのよ、というよりアルチェはやはり意図的にアーノルドを狙っていたのだと分かった。
「お父様かしら?」
「いえ、旦那様にしては早すぎます。旦那様ならもっと、せめて一週間はじわりじわりと真綿で首を絞めるように「ユリア!」はい」
「それ以上は⋯止めて」
お父様は、私の想像通りやはり腹黒い方だったと、ユリアの言葉を聞いて確信したのだけど、真綿で云々の時、想像してしまって体が震えたわ。
ユリアにそう言われてしまうと、話した2日後というのも早すぎる、と私も思う。
それはユリアの言う真綿云々ということではない。流石に一人の貴族令嬢を、日をかけずに退学にまで追い込む様な事を、伯爵ができるわけがない。お父様が実は王家の某であれば可能だけれど、お父様は裏も表も実はもなく、クルーズ伯爵という身分しか持ち合わせていない。
確かに王族の方と友人ではあるけれど、たかが学友の娘の為に王族は動かない。
「では、誰が?誰がアルチェを追い込めるのかしら?」
私は昼休憩の間、東屋でユリアと考えこんでいた。
午後の授業も滞りなく進み、帰りの仕度をしていると、廊下側が少し騒がしい。
目を向けると、留学生で隣国の第二王子カイル様が、扉付近に側近の方と立っていた。
それを見て、私は隣の席の彼を見る。
私の隣の席の方は隣国からの留学生だ。
一つ上のカイル様の側近候補らしく、1年前から一緒に留学をしてきたのだ。
カイル様は彼を迎えに来たのだろう。
側近候補を迎えに来る王子って⋯。
何か変だなぁ
そう思いながら、視線を隣の席から再び扉へと向けると、そんなはずはないのにカイル様と目が合ったような気がした。
(?)
しかも笑顔を向けられたような。
いえいえ勘違い。
一国の王子が、評判の悪い“蠱毒令嬢”に笑いかけるはずがない。
もしそんな事があるとするならば、何かを画策して裏があるはずだ。
私にはそんな身に覚えは全く無いから、やはり隣の席の彼を見ていたカイル様と偶然視線が交錯したのだろうと思う事にした。
偶に視線を向けた先と違う人(特に横)が、目が合ったと言う勘違いが発生することがある。それは自分が目を向けているから、相手の視線も自分に向けられているという錯覚だ。
今回もそれよそれ!
帰り仕度の終わった私は、カイル様が立つ教室の後側の扉ではなく、前の扉から出て廊下に出た。




