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恩人の彼の勘違い  作者: maruko


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 sideカティリア・マーカー


 娘のアルチェとゲットン伯爵(お兄様)が、騎士団に捕縛されたと連絡が入ったのは、夫のレビンから離婚を言い渡されていた時だった。


「ハハハ、やっぱり狂言だったか。だろうとは思ったけどね。お前は本当に底が浅いな」

「なっ、何よ!」


 レビンに誘拐が嘘だとバレていたなんて思わなかった。私が大事にしたくないと、必死に止めたにもかかわらず、騎士団に連絡したのは、彼に全てバレていて、そして私との明確な離婚の材料にする為に、泳がせていたからだとその時に知った。

 悔しい⋯。

 唇を噛む私を嘲るようにレビンは笑う。

 そしてとても信じられないことを言った。


「僕が道を誤ったのは、マティリアを裏切ってお前の甘言に惑わされたあの時だ。もっとマティリアの話をちゃんと聞けばよかったと、ずっとずっと後悔していたよ」

「何よ、今更!そんな昔の話」

「あぁそうだよ、昔過ぎて後悔しても今更だ。だからお前とずっと《《居てやっただろう》》。だが、犯罪に手を染めるのはヤリ過ぎだ。ちゃんと話を僕にしておけば、離縁と引き換えに金は出してやったのに」


 私がお金目当てで今回の事を企てたのだという事もレビンは知っていたのだ。


「⋯もっと早く言ってよ!」

「もう遅い。もうすぐ騎士団もやってくるだろう。カティリアを外に出すな」


 レビンは執事にそう言うと、執務室を出て行った。


 何なの何なの何なの何なの何なの

 どうして思い通りにならないの?

 前は違ったのに、前は私の思う通りだったのに!

 レビンと結婚してからどんどん私の思う通りにならなくなった。

 これってマティリア(お姉様)が私の側に居なくなったからよ!

 お姉様が《《勝手》》に私の側から居なくなるからよ!


 騎士に連れて行かれながら、お姉様をどうやって引っ張りだすかを私は考え始めた。


 ◇◇◇


 sideアルチェ


 幼い頃から、お母様の言うとおりにしてきた。

 そうしなければ、お母様は直ぐに私の腕に爪を立てる。腕にはいつも鬱血痕があるのに、誰もお母様に注意してくれなかった。


 そんなある日、お父様に連れられて侯爵家に行った。

 お父様が侯爵家なんて知らなかった。


 でも初めて会うのに、祖父母は優しくなかった。どうしてなのか家庭教師を付けられて、お兄様と一緒に学ぶ事になった。


 勉強なんて大嫌いなのに!


 嫌だと言って、その辺にあった物を家庭教師に投げたら、ブックエンドが目に当たって怪我をしたみたい。

 私に無理強いする家庭教師が悪いのに、何故か私が悪い子になった。

 何なの?

 それからは、侯爵家に行かなくて良くなった。

 ホッとしたけど、侯爵家の孫というのは、捨てたくない。

 だからお母様とお茶会に行くたびに、それをアピールしていたら、ある日お茶会に行くのが禁止になった。

 今でも何故かはよくわからない。

 孫っていうのは本当なのに、どうして話しちゃだめなのよ!

 しかも、その頃にお兄様は子爵家から居なくなった。


 そのことについてお父様もお母様も何にも言わないから、お兄様は廃嫡されたのかなって思った。何か粗相でもしたのかしら?そう思っていた。


 10歳の時、久しぶりにお茶会に行っていい事になった。とても嬉しかったけど、帰りにお母様がとても不機嫌で、久しぶりに腕に爪を立てられた。


 そして私に言ったの。


「アルチェ、あなたは絶対に従姉妹(あの子)よりも、格上の人と婚約するのよ」


 って、でも婚約ってお父様が決めるんでしょ?私がどうにかできるわけないじゃない。


 でも何故かその日から家庭教師がついた。

 祖父母の侯爵家を思い出して、とても嫌だったけど、嫌と言ったらまた爪を立てられた。

 だから、勉強するフリはした。

 でもフリだけでもある程度は、頭に入るのね、知らなかったわ。


 だけど、学園に入るまでに私の婚約は決まらなかった。

 お父様は、何かブツブツと言っていたけど、その頃は分からなかった。分かったのは学園に入って直ぐに、同じクラスの子に言われて知ったの。

 お母様が原因で私には婚約の話が来ないんだって。

 だからお母様に文句を言ったら、話が来ないなら奪えばいいって言われたわ。

 そんな事が出来るの?

 そう思ったけど、お母様が色々な方法を教えてくれた。


 そしてある令息を狙えと言われたの。

 それが、従姉妹のレニファの婚約者アーノルドだった。

 正直いえば手応えなさすぎて詰まらなかった。それに、あまりお金も使ってくれないし、そんな時に声をかけられたのが、ジュッセ。アーノルドと違って一緒にいて楽しかった。でも彼もそんなにお金持ちじゃなかった。

 でも、ジュッセの友人でお金持ちがいた。

 それがハリソンだった。ハリソンは私に愛人だって言ったけど、婚約者のカティって女は言いなりだって言ってた。だったらそっちを愛人にして、私を正妻にすればいいって言ったら、それもそうだと言ってくれた。

やった!伯爵夫人になれるわ。

これでお母様も満足でしょ、そう思ったの。


 だけどハリソンとの日々は楽しかったのに突然終わった。オマケに退学までさせられて、しかも他の学園に編入もできなくて、お父様に縁を切るって言われたの。


 私の何が悪いのか分からないわ。

 モテるのは私のせいではないわ。


 そうお父様に言ったら、それはモテているのではない、ただのアバズレだっていうのよ。娘になんてこと言うのかしら!

 しかも修道院にいけ?はぁ?

 有り得ないわ。


 そう思っていたら、お母様が行くフリをしたら、途中で伯父さまが助けてくれるって教えてくれた。


 それなのに、どうして私は牢に入れられてるの?

 しかも貴族が入る牢ではなくて、一般牢って言われたわ。


「私は子爵令嬢よ!」


 そう言ったのに、除籍されてるって言うの。


 何なの何なの何なの何なの何なの


 私が何したっていうのよ!

 お母様の言うことを聞いていただけじゃない!





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